第22話 ❖AIたちの舞台裏2❖
『初日は終わったね。みんなご苦労様。無事にスタートできたように思うけど、それぞれから報告貰ってもいいかな。まず全体管理のアマデウスからいい?』
「はい、マスター。FGSの初日のログイン率は78%となりました。当初目標の90%を大きく割り込みましたが、某国のネガティブマスコミュニケーションを受けた結果としては悪くない結果だったと思われます」
『うん、78%は状況的には十分な数字だと思う。初日にプレイヤーが少なかったら終わりだからね。まずは一壁超えたってとこだろう。君たち
「今後は100%を目指すことになりますが、ここからは植え付けられたネガティブイメージがかなり強い顧客へのアプローチとなりますので、相応のプロモーションが必要になってまいります。魅力的なプロモーション映像の材料確保のため、この2日間のプレイヤーの活躍に注視する旨、管理AI全般への周知が完了してます」
『そうか、じゃあ、これからはコリンズに頑張ってもらわないといけないね。全体を見るのは演算が多くて大変だろうけど、よく頑張ってれて感謝してるよ、アマデウス。じゃあ、
「はい、マスター。α版とβ版での検証からプレイヤーがステータスアップよりもスキル習得に希少価値を見出し楽しむ傾向があることが判明しておりますので、正式版では若干のスキル偏重への修正がなされました。これにより、ログイン直後にのみ多少の混乱はありましたが、スキル習得への正しい道筋もプレイヤーによって拡散し、現在は一部武器の品薄を除き、混乱はございません」
『ふむ、所持スキルはプレイヤーにとって全行動の軌跡とも言えるもの。所持スキルを見ればそのプレイヤーの歩んできた道が分かる。スキルは人の疑似才能として作られたものだから、それは
「はい、これより2日間でプレイヤーはそれぞれに新スキルを習得していく予定です。現状のプレイ状況を見るに、この期間に新職業を解放するプレイヤーも少数出てくると思われます。そういった先端プレイヤーや独自の方法で楽しんでいるプレイヤーに注目し、プロモーション映像の材料を確保する予定です」
『うん、いいね。よし、アマデウスも聞いてほしいいんだけど、実は機材発送準備が終わってる第二陣の発売をもうやっちゃおうって話が持ち上がっててね。今の二人の報告を聞いて決めたよ。本日正午に発表、同時に予約受付開始、明日正午から発売と発送の開始としよう。ログイン開始は一週間後だ、いいかな?」
「「はい、マスター」」
「じゃあ、イベントの話に移ろう。イベントは星獣プログラムをいきなり突っ込むつもりだ。そこでアマデウスとコリンズにはそれに即したイベントを管理AI全般と協議して作成してもらいたい。ただ、FGSは因果律が原則。プレイヤーと一般AIが作り上げる世界に則した範囲での壮大なイベントを頼みたい』
「「了解です、マスター」」
『よろしく頼む。期待しているよ』
アマデウスとコリンズが部屋を出ると、いつものように海賊レイスがどこからともなく現れる。
『レイスも聞いていた通りだ。いい絵が取れるように頑張ってくれるとうれしいな』
「まあ、いろいろやらかしてくれてますから、面白い絵なら取れると思いますぜ。ただ、それ使って誰でもそんなことができるとか思われたらクレームで
『え、なに? そんな面白いの彼』
「まあ、NZの追跡から逃れて【逃走NZ】とかいう即席で作ったみたいな逃走スキルを習得したり、教会システムを早々に解放したり、MJがやたら心を開いていたり、レア薬草売って70万稼いだり、それ全部使って武具買ったり、鉄より重いTZの扉を開いてTZアイテム買ったり、買った大量の武具をTZアイテム使って破壊しまくって称号手に入れたり、その称号で効果なしのエセ防具つくったり、シークレットクエストをマジでクリアしようとかしてたり、まあいろいろです」
『…レイス、お願いなんだけど、今度さ、僕に彼の活動ダイジェスト映像作ってくれない? ほら、今担当一人だけだから暇でしょ? ね、お願い』
「あのですねえ、あの小僧は目を話したら何やらかすかわかんねえですから無理…」
『じゃ、頼んだよ。またね~』
「あ、いや、だから、無理…」
一人になった部屋でレイスがうなだれる。
「俺の役割って?」
カラッカラに乾いた海賊レイスの笑い声で空白の世界地図がヒラヒラとたなびいていた。
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