第49話 畑作業をやってみよう♪

 さてと、じゃあ、とりあえずは何をするんだ?



 あ、そうそう。これがあったな。



 目の前に赤く点滅する一帯。そう、農屋を設ける位置を決めなくてはいけない。



 農屋かあ…どこにしようかな。


『ゆ~ら~♪』


 え? 入り口近く、5m離れた場所?


 ネギ坊が話してくる。なぜか自信満々だ。なぜ草に農屋の位置のことがわかるのかはもう詮索しない。考えたら負けなのだ。



 とりあえず、ネギ坊の言う通りの場所に赤い枠を合わせてと。


「ネギ坊、これくらいか?」


『ゆら♪』


「よし、じゃあ、ここで設置!」



「おおおーっ」

『ゆら~』


 指定した位置に想像とは90度ほど違った建物が建った。

 初日に逃げ込んだ田舎の農屋を想像していたのに、目の前に現れたのはお洒落なログハウス。正直畑には似合わない…いや、自然派ということならそうでもないのか? うーん、運営の嗜好がようわからん。



『ゆらゆら~♪』

「あ、そうだよな。ここ家にしちゃってもいいよな」


 ネギ坊からここを家にしたいと要望があった。その案には俺も全面的に賛成票を投じる。うん、もうこれは家だ。自宅の裏に広大な畑があると思えば豪華な別荘とも言える。


 ログハウスの中に入ってみると中には暖炉、キッチン、作業台などが備え付けてある。


 うん、内装も充実の一言に尽きるな。


 ロフトがあったので登ってみると屋根裏にも空間があり、天窓から日光が注いでいる。昼めし食ってからここで過ごしたらあっという間に寝落ちしそうだ。


 そんな温かなくつろぎ空間だが、天窓を開けて顔を出してみると広々とした畑が全て見下ろせた。


 屋根から見える畑は膝下くらいの元気な草で覆われている。


「うーん、こりゃ、まずは草刈りからだな。あ、でも鎌がないか」





「農具販売はあちらのカウンターでございます」

「ありがとうございます」


 再び猛ダッシュでギルドへ戻った俺。水色銀仮面は居なかったので安心してギルドへ。受付の女性に農具の相談をすると購入できるカウンターを案内してくれた。


 そこで購入したのはこちら。


 畑の大鎌

 畑のレーキ 4本


 ついでに販売していた肥料も購入。

 締めて24000G。うん、安い。


 それから銀仮面注意報を発令しつつ猛ダッシュでログハウスに戻る、そしてここで【リサクル】様の出番。


 まず、飛蛇の道下靴を少し切りとって素材化する。これでブーツの敏捷補正は+14に減少したが、【飛蛇の軽羽】×4をGET。そのまま2つを畑の大鎌のリサイクルに使用し【畑の鎌鼬】に改良。これで【鍛冶Lv4】に。


 それを使って前回のように床屋さんのバリカン気分で草を刈っていく。なかなか楽しくて時間を忘れる作業だ。


 配達中扱いなので動きも軽快だ。夢中でやってたら15分程で草刈りが完了する。移動だけじゃなくて鎌を振る速さまで敏捷依存らしい。


 でもここで作業は中断に入る。配達の時間が迫ってきてしまった。


 配達先は街の西門だ。農具を片付け畑を出てると生活感溢れる西大通りを全力で突っ走る。そして西門の衛兵さんに荷物を届けたところで空腹に。門横の出店で買い食いしてギルドへ戻る。



ピンポーン

「クエスト内行動により【農地管理Lv1】のレベルが上がりました」



 次も配達依頼の中で一番時間が長い依頼を選ぶ。加えてカウンターで1つ相談。初めてでも簡単に栽培できる初心者用の作物を聞いた。優しい受付さんに勧めてもらった何種類かの種をたくさん購入して畑へ移動する。


 畑には草刈りした草が散乱している。ここで【リサクル】様の可能性にチャレンジしてみることに。


 まずは購入していたレーキ4本を横に繋げたい。そう意識するとそれぞれのアイコンが同時に点滅する。4つのアイコンを全て選択できるようだ。



『簡易鍛治セットを使用しますか?』

「はい」


『畑のレーキ4本をリサイクルします。【農具知識EX】により、農具の造形が可能です』


 えっと、複雑になってきたな。ん、あ、こうするのか。



 レーキ4本が3Dイメージ図として目の前に現れる。接合、分離、変形の細かな操作をして自分のイメージ通りの形に造形した。と言っても、ただ横に繋げて幅2mくらいのレーキにしただけなのだが。


『使用する素材があれば指定してください』


 ここで【飛蛇の軽羽】の1個とネギ坊におねだりした【爆炎草】を指定する。さて、これでどうだろう。



【爆裂撹拌レーキ】

 普通のレーキの4倍の幅を持つがその重さは元の20分の1。

 土に触れると小さな爆発と共に真空状態を引き起こし、触れた周辺のものが小さく砕かれ満遍なく撹拌される。



 【リサクル】様と【農具知識EX】様のコラボが成立。ついでに【鍛冶Lv5】も習得。


 誕生した爆裂撹袢レーキを引きながら畑中を移動していく。その自分の姿が中学時代に野球部が運動場をならしてる様子とダブって苦笑い。野球部のトンボ掛けと違うのは俺のレーキは引くとパンパンという爆発音がすること。そして畑はふかふか状態。アイザックさん風に言うと至極の団粒構造だ。ちなみに散乱していた草は爆発の熱と威力によってカラカラの粉々になって土に混じっている。なんか前よりもふかふかしているような気がする。ふっかふかだ。


 配達中の敏捷ブーストであっという間に畑の全面を移動し終える。で、移動し終えたところでちょうど時間切れ。時間が迫る配達を終えるために街の北門へ向かう。北地区はプレイヤーが多いので中心街は避けて東地区から迂回。多少時間はかかるが計算の内なので問題ない。北門の衛兵さんに荷物を渡して感謝され、ギルドへと戻り報告する。



ピンポーン

「クエスト内行動により【団粒構造Lv1】のレベルが上がりました。」

「クエスト内行動により【農地管理Lv2】のレベルが上がりました。」



 なんか、あれだな。実際に畑をしてみたらアイザックさんに畑の手伝いをさせてもらったことが全部生きてくるな。もしかしてあのクエストは「畑作業のチュートリアル」的なものだったのかもしれない。


 ギルドで報告を終え、受付の女性に畑の状態を報告して次にすることを訪ねると快く教えてくれた。どうやらうねを作る必要があるらしい。畑で土が列になって盛ってあるアレだ。それを聞いて農具を追加購入し、依頼を受けて畑に移動。



 ふっかふか畑に着いたので農具作成に入る。取り出したのは先ほど購入した畑の鍬2本。アイコンが同時に点滅する。

 


『簡易鍛治セットを使用しますか?』

『はい』

『畑の鍬2本をリサイクルします。【農具知識EX】により、農具の造形が可能です』



 目の前に広がるイメージ図を操作し、造形していく。まずは2本の鍬の頭部分の鉄板だけを取り外す。それを先端を前にしてV字に固定し、その中央に矢印のような形になるよう2本の柄を繋げ固定する。



『使用する素材があれば指定してください』



 最後に【飛蛇の軽羽】と【仙蜘蛛の糸】を指定する。



ピンポーン

「特定行動により、【鍛冶Lv5】のレベルが上がりました」



【畑の土寄せクーーワ】

 両脇に土を寄せる鍬。柄が長く、伸縮性も2倍になっている。




 うん、これはイメージ通り。【リサクル&農具知識EX】、このコラボ最強だな。



 早速完成した【土寄せクーーワ】を持って畑に出る。畑の端から畝を作っていくため、谷になる方に土寄せ鍬を設置する。そしてMP消費。


 ずーんと20m伸びた土寄せ鍬は見事に土を左右に分けてくれた。

 それを続けて5回繰り返すと端から端まで通路ができあがる。それをひたすら繰り返すこと15分。俺の畑は畝がきれいに並んだ縞模様へと進化した。



「こうやって整然と並ぶ畝を見ると達成感あるよな」


 ちなみに途中何度か上級MPポーションを作成したので【調薬Lv3】も習得している。



 だがそんな感慨にふける時間もすぐに終わる。迫る配達時間のため、そのまま配達に出発。今回の目的地はなんと、北西地区の領主館だ。マジョリカさんが馬鹿領主扱いしていたあの領主のいる場所。俺は何も悪く言っていないのに変に緊張してくる。これはマジョリカさんのせいだな。



 マジョリカさんを思い出したらお菓子が食べたくなってので、ストレージから茶菓子を一つ取り出してパクリ。うん、おいしい。


 大通りを西に進み、西地区を通ってから北上。領主館に到着する。館の門番に怪しまれながらも何とか荷物を渡し、ギルトへ戻る。



ピンポーン

「クエスト内行動により、【農地管理Lv3】のレベルが上がりました」



 なんかどんどんレベル上がるよな。確かこれ上級スキルのはずだけど、いいのかこんなんで。ま、上がる分には歓迎しかないんだが。


 さて、なんだかんだでだいぶ時間が過ぎてしまったな。どうしよ。今日中に種蒔きしたいんだけど、流石に暗くなったら出来ないよな。あれだけの広さだと種蒔きにも相当時間が掛かるだろうし……うん、住人さん雇ってみるか。1日だけ。


 カウンターで住人雇用の相談をすると専用カウンターを案内される。



「こちらがご登録頂いている方々のリストです」


 目の前の半透明の画面にズラリと並んだ従員リスト。ステータスとスキルは閲覧できたが名前と性別や年齢は分からないようになっていた。なんかこういうところリアルだな。


 スキルなし、平均的なステータスとされる人は5000Gだが、強ステータスや身体強化系スキルなどの有用スキル持ちは賃金が上り、農業系スキル持ちになると賃金が1万Gからとなる。農業系スキルや有用スキルの複数持ちとなると最大2万Gとなると説明された。



 うーん、どうなんだろう。今日やって欲しいのは種まきだけだもんな。それ系のスキル持ちであればいいか。



 種まき系のスキルにフォーカスして探すと、ど真ん中のスキル持ちが見つかった。



【高速播種】賃金12000G

 播種に限り高速かつ正確に行う。



 これは決まりだろう。



 念のためにもう少しリストを眺めてみる。すると一人の住人のスキルが目に留まる。特別感の全くないスキル名で普通にスルーするところだったが、ふと以前にテレビでやっていた農家の話を思い出したから確認してみた。



【良い声】賃金6000G

 心地よい音域の声質。



 このスキルってもしかしてもしかするんじゃないかな? ほら、植物っていい音楽とか聴かせるとよく育つって聞くし。しかも【農地管理】の効果にある畑の癒し効果にも合いそうだ。いい声の歌声とか聞きながらのんびり畑作業とかすごく癒しじゃない?


 気になったら試すしかないということで、種まきさんは1日、良い声さんは1週間で契約してみた。それぞれ12000Gと33600Gで合計45600G。良い声さんは一週間契約したから賃金は2割引きとのこと。


 雇った住人は畑で待っいるとのことで、畑に向かいたいのだけど…


 そっとギルドの入り口から顔を出してみる。


 うん、水色銀仮面はいないと。よし、じゃあ、畑に出発だ。



❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


ちっがーーう!

そんなチート農具でバリバリやるんじゃねえ!

誰がそんな機械化農業を見てやりたがるんだよ。

頼むから定番のを撮らせてくれよ…


――――――――――――――

◇達成したこと◇

・完了<農業ギルドの配達依頼>

・作成【畑の鎌鼬】【爆裂撹拌レーキ】【畑の土寄せクーーワ】

・習得【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【鍛冶Lv6】【調薬Lv3】

・畑を種まきできるようにする



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 職業:中級薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+4)

 敏捷:1(+14)※-1

 器用:1

 知力:1

 装備:ただのネックレス

 :聖魔のナイフ【ドロップ増加】

 :仙蜘蛛の道下服【耐久:+4、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】

 :飛蛇の道下靴【敏捷+14】※-1

 :破れシルクハット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv1】【鍛冶Lv3】【調薬Lv3】new!【団粒構造Lv2】new!【農地管理Lv4】new!【農具知識EX】

 所持金:約753万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]



◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

〇進行中クエスト:

<農業ギルドの配達依頼>

●進行中特殊クエスト

<シークレットクエスト:万事屋の悩み事>

<エクストラ職業クエスト~マジョリカの愛弟子>



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★☆☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

高速播種

良い声

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る