第26話 教会で相談事

ピンポーン

『<クエスト:教会ステラの依頼>を達成しました。

クエスト内の行動によりスキル【配達Lv3】のレベルが上がりました。

クエスト内の行動により【献身】のスキルを習得しました。

クエスト内の行動により【武具破壊】のスキルを習得しました。

クエスト内の行動により【武具劣化】のスキルを習得しました。

クエスト内の行動により【武具命名】のスキルを習得しました。

特定スキルの内3つ以上の習得が一度になされたため、【武具破壊】【武具劣化】【武具命名】のスキルが統合され【リサイクル武具】のスキルを習得しました』



「あの、スプラさん?」


「あ、いえ、何でもないです。はは」



 は? 何か起きたような? バグのような? なんか途中から全く分からなかったんだが。ま、まあ、とりあえず報告を終わらせようか。



 簡単な報告だけして終えようと、薬屋と万事屋への配達を簡潔に伝える。するとステラさんの方からいろいろと質問をされてしまった。いや質問もいいけどそろそろ子供達を起こさなくてもいいのか…



「あの、ステラさん、子供たち起こさなくいいんですか?」


「あら、やだわたしとしたことが。ちょっとだけお待ちいただけますか?」



 ステラさんが小走りで奥に引っ込んでいく。


 よし、この間に気になるさっきのアナウンスを確認。チョイチョイと。



【リサイクル武具】

 どの世界でも資源は有限。不要武具有効活用の極み。


 

【献身】

 相手の身になって考え、親身になり行動する力。

 対象との特別な関係を築くことが可能となる。



 おい、統合とか言われてかなり期待したのに、説明が漠然としすぎて全然わからんぞ。こういうとこあるよな、FGSってさ。極大の説明表記もまだだし。まあ、あんな海賊がGMやってるんだしそんなもんか。



 習得スキル確認が終わったところでステラさんが戻ってくる。すぐに話の続きが始まり、薬屋ではマジョリカさんの快癒草を高額で買い取ってもらったことや、万事屋さんで悩み事を聞いたので、今はその悩みを解決できないかと考え中であることなどを話した。



 話しているうちに、俺の草鞋がローサンに変わっていることに気が付いたステラさん、どこで購入したのかと真顔で迫られたので、北地区の露店街で衝動買いをしてしまい、自分で改造しものを今履いていることを話した。



 改造したってところでテンションが下がってたみたいだったが、直ぐ普段の微笑み顔に戻ったのでそれ以上何も言えなかったが。もしかして、このローさん欲しかったのか? いやいや、まさかな。ローマ帝国兵のだし。教会のシスターが履くとか…え、履くのか?



「なるほど… 昨日のあの時間からの短時間でそんなことが立て続けにあったんですね…」



 ステラさんは実に人の話を聴くのがうまかった。特に質問の仕方がうまくてついつい話したくなってしまう。誠実さが滲み出ていてなぜだか信頼できてしまう。俺のコミュ障の壁をやすやすと越えてくるあたり、やはり、シスターなんだろう。住人からの話とかもいろいろ聞いてあげてるんだろうかと勝手に感心する。その事を伝えると、「ご自分の事をわかってないのですね」と微妙な笑顔だった。


 俺の事って…貧乏で最弱でコミュ障ってだけだけど。



「ちなみに、万事屋さんの悩み事ってどういったことか差しさわりがない程度でお聞きしてもよろしいですか? わたしも協力したくて。あ、もちろん、言わないほうがいいことでしたらお答えいただかなくても結構ですよ。そこはスプラさんの信用にも関わりますので」



 人の悩みとかを別の人に話すことにちょっと迷ったが、ステラさんなら大丈夫だろう。悪いようにはしないはず。まあ、相手が昨日遭遇したネヒルザ婆さんだったら絶対に言わないだろうけど。



「もちろん、人の悩み事を無暗に言い広めるのは抵抗がありますけど、ステラさんならお話しますよ。もちろん秘密厳守でお願いしますね」



 俺は万事屋さんが閉店予定だということと、その原因が北地区に客が流れて業績不振だということを説明する。



「ええっ、本当ですか? あの万事屋さんが… まさかそんな事になってるなんて… 教会でも日用品を購入させてもらってるのですが、教会からの注文にはいつも値引きしてくださるような方なんです。これまで万事屋さんには何かにつけて随分と助けていただいてますし。万が一万事屋さんが閉店となると困る人も多いと思います… 何かわたしにもお手伝いできることがあればよいのですが」



 ステラさんは表情を曇らせる。女性が困っているのを見ると、どうしても何かしたくなるのが男の性だろう。俺なんかでもなんとかしてあげたい気持ちが湧いてくる。なので、追加情報として北地区でのことを説明する。散財の事はすごく恥ずかしかったが、北地区のプレイヤースキルの高さを伝えるためには話すしかなかった。



「え、扱えない武器をそんなにたくさん買わされたんですか? 異人さんってそんな阿漕あこぎな真似するんです?」



 まあ、阿漕と言うより、今は買い取った初期装備を売ってただけなんだろうしな。ん? 待てよ、初期装備にしてはしょぼくなかったか? もしかして試作品か? にしては高かったよな… あれ? 俺もしかしてやられました?


 …ま、まあ、ここは異人のイメージを悪くしないように説明しておくか。



「そうなんですか。それならいいのですが。ところで、スプラさん、変なことお聞きしますが、武器が扱えないって冒険者として大変じゃないです? あ、お気を悪くしないでくださいね。ただスプラさんが冒険者だとお聞きしてたので少し心配になって…」


「…あ、その、ありがとうございます」



 かわいい系のシスターから身の上を心配されてなんかすっごく癒されている自分がいる。パワハラ上司によって全身打撲した俺の精神が癒される。これがシスターの力なのか。



「…と言うわけです」

 

「え? こちらの世界に来るときに弱くなる呪いを? それは大変です! 王都の神官様ならどんな呪いでも祓えると思いますから今すぐ紹介状を書きますね。無料でやってもらえるようにお願いします。スプラさんにはお世話になってますので。あ、よかったらこれから向かいますか? わたしすぐに準備してきますので…」



 俺はキャラ作成時の事を、海賊レイスの亡霊にあって呪いをかけられたことにして説明した。別に嘘ではない。GMなんて亡霊みたいなもんだし。



 そんな俺の説明を聞いたステラさん、やる気満々で教会の奥に入っていこうとする。でもあまり大ごとにされるのは困る。



「あ、ステラさん、ちょっと待ってください。ちょっと」


「はい? どうかされましたか? あ、もし具合が悪くなったのでしたら休養室を…」


「いえ、違うんです。その、この呪いは異人特有のものなので、どんなすごい神官様でも祓うことが出来ないんです。それに、この呪いを受けながら頑張ってたら急に状況が好転したって言うか」


 

 そう、なんか称号も貰ったし。なんにもできなかった時から比べたら今はそれなりに楽しめているのだ。なので今は、俺のことより万事屋さんの事。



「好転? てことは今は大丈夫と言う事で…そうですか、すると、状況が好転したのはスプラさんが酷い逆境に負けなかったから神様が与えてくださった力なのかもしれませんね」


「はい、アハハ、ハ。なんで今は万事屋さんの事が心配で」



 ま、あの海賊の事は許してませんけどね。どうせ見てるんだろう。暇そうだし。



「そうですね…例えば露店では売っていないものにフォーカスした商品を売るとか。そういったものを売り始めたら万事屋さんにもお客さんが来るんじゃないかしら」



 露店で売ってないもの…あ、そういえばあったな、そういうのが。俺はストレージから『バッサリ君』とか『針金ズミ君』を取り出す。



「ああ、スプラさんも買われたんですね。このラインナップはいい商品ですよね〜。でも、残念ですが、この製品は既にどこのお家にもあるんですよ。発売時には一世を風靡ふうびしたんで、すでにどの家にも行き渡っててもう需要はないんじゃないかしら」


「そうですか… 因みに教会には販売できるものってありますか? 異人が使わなさそうなもので」


「ううん、ないですね。教会で販売が許されているのは聖水だけなんです。あとはお布施はいただきますが解呪などの儀式でしょうか、それ以外はないですね」


「そうですか、聖水と解呪ですか…ん?」



 聖水と解呪と言う言葉でひとつ閃いてしまった。まあ、せっかく閃いたんだしちょっと試してみるか。


「ステラさん、1つお願いいしてもいいでしょうか?」


「……?」


 不思議そうな顔をするステラさんを背に、俺は聖水を持って薬屋のマジョリカさんの元へ向かう。






「ごめんください」

「……」


 はいはい、このパターンね。


「配達、じゃなかった、スプラです!」

「なんだい、あんたかい。配達じゃないって、なんだい面白い薬草でも持って来たのかい?」


 そう言って布で手を拭きながらマジョリカさんはカウンター奥の部屋から出てきたくれた。



 さて、吉と出るか凶と出るか。






❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


 俺のユニークスキルを呪いとは言ってくれるじゃねえか小僧。よし、わかった。お前の気持ちはよーくわかった。とりあえず、ジャージ履いてる姿はバッチリ撮らせてもらおうか。


 で、SRなんだよな。こいつ天然過ぎて読めねえからな。頼むからなんも起こすなや。ほんと頼む。



――――――――――――――

◇達成したこと◇

・教会で報告&万事屋の悩み事相談

・【献身】【リサイクル武具】確認




◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 職業:なし

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:1

 器用:1

 知力:1

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv4】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】

 装備:【孤高狼のターバン風ヘアバンド】

    【ただのネックレス】

    【夢追う男の挑戦的ローマサンダル】

 所持金:約0万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】


◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

●進行中特殊クエスト

<シークレットクエスト:万事屋の悩み事>

〇進行中クエスト:

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