3日目 畑違いでもやってみるもの
第39話 3日目 ピエロな装備
3日目ログイン
ログインしてそのまま武器屋に向かう。
「お、スプラじゃないか。昨日はすまなかったな。ちょっと考え事をしちまって。あとヘアバンドも本当によかったのか?」
「あ、いいんです。あんなにたくさんの活性炭を貰っちゃったんで。ぜひステラさんといい感じになってほしいなって」
「そうか、スプラ…お前、いいやつだな。実はちょっと気になってたんだ。ステラさんに似合いそうだなって」
「ステラさんの綺麗な金髪に合うように色変えちゃってくださいね」
「お、そうか。作り手に悪いなと思ったが、スプラが言うならそうさせてもらうか」
マークスさん、空中を見ながらいろいろ考え始めてる様子だ。よし、あとはこっちでステラさんの気持ちを探りつつって感じかな。
「ところで、マークスさん、今日は俺の防具を買いたくて来たんですよ」
「お、そうか、防具を買う金はできたんだもんな。70万Gだろ」
「はい、まあ、ちょっといろいろありまして300万Gほどになっちゃったんですけど」
「300万? …スプラ、お前、まさか」
いやいや、そんな露骨に怪しそうな表情されても。んなわけないでしょうが。
「いやいや、別に悪いことして手にしたわけじゃないですよ。正当な報酬としてマジョリカさんから頂いたんです」
「ああ、マジョリカの婆さんか。そうか、まあ、あの婆さん絡みなら話は別だな。何か特別なことでもあったってことだな?」
「ええ、まあ。詳しくは言えないんですが…」
「ああ、大丈夫だ。詳しくは聞かねえよ。そんな大金だ。人には言えねえことが絡んでるのはわかってる。そうか、しかし、300万か… それじゃあ、ちょっと予定変更だな」
マークスさんは思案気な顔で独り言ちると、俺に少し待つように言って奥に引っ込んでいく。待ち時間が出来たので店内を興味本位で見て回っていると、それほど時間を掛けずしてマークスさんが荷物を持って戻ってくる。
「待たせたな。スプラの資金が増えたからな。先々に渡すつもりだったものを持ってきてやった」
そう言ってマークスさんは持ってきた荷物を一つずつ丁寧にカウンターに並べていく。
「じゃあ、まずはコイツからだな」
マークスさん、そう言って俺に七色に光るナイフを差し出した。
「うわ、きれいですねー。これ、見るからに高そうじゃないですか」
「持ってみろ」
「え? いいんですか?」
凄く高そうなナイフなのでちょっと緊張しながら、そっと右手にナイフを持つ。
「うわ、軽いですね、これ。プラスチックみたいですよ。これなら俺でも装備できますね」
「そうだろ、だがな、それは主に剥ぎ取り用だから攻撃力はほとんどねえ。モンスターを倒したら消えきる前にそいつで触れるんだ。そうすりゃ普通に倒した時より素材が倍に増える」
「ええ? ドロップ2倍ですか!」
ちょっと、なにその便利性能。
「最弱なスプラにとってはモンスターを一体倒すにも苦労するだろ。ならドロップは多いほうがいい」
「マークスさん…」
つまりブルースライムの核を攻撃した後、消える前にこれで触れる。そしたらブルーゼリーが2個手に入る。ってことは実際に倒す回数は半分でいい、つまりリスク半減ってことか。これは非常にありがたい。
「これは『聖魔のナイフ』と言って、魔鉱石っていう石からから稀少な成分だけを抽出して聖銀に練りこんで打ち込んだ俺の特注だ。普段は店に出さないからな。異人でも持っているのはお前だけだ。だからあんまり見せびらかすなよ」
「え、そうなんですか。そんな希少な武器を…ありがとうございます」
「おう、スプラだからな。ちなみにそれは120万Gな」
「は? 120万?」
マジか、このおっさん。
とんでもないもの持ち出してきたな。
「おいおい、当たり前だろ。俺を誰だと思ってるんだ。言っとくけど、俺の特注は王都のオークションに出せばこの2倍は簡単に超えるからな。スプラだから赤字覚悟のこの値段なんだぞ。どれだけ聖銀と魔鉱石使うと思ってるんだ。材料費引いたら… 恐くて計算できやしねえ」
マジか、2倍…240万G相当ってことかよ。これはラッキーってことだよな。
「ありがとうございます!」
「そうそう、ありがたがれよ。それとこれな」
そう言って今度はきれいに折り畳まれた服と短パンを渡される。
この服、首元に白いヒラヒラが付いているんだけど?
広げてみると腕、腰の一部がキュッとしまっていて、前面には大きな赤いボンボンのボタンが縦に3つ付いている。
えっと、これピエロ服みたいなんだが?
「これ、なんですか? ピエロの服? みたいですけど」
「ああ、これはな、
うん、性能はすごい。俺でも装備可能だし… でもなぜにピエロ服?
「ちなみにこれは180万Gな」
「ひゃ、く、はち?」
「ハッハ、これは王都にいる俺の兄弟子が特注で作ったもんなんだ。なんでも子どもの頃に見た大道芸が忘れられなくて大金はたいて一世一代の仕事として作り上げたもんなんだそうだ。が、如何せんこの見かけだ、いくら王都でも大道芸人にこんな金額払える訳ないだろ。だからずっと買い手が付かなくてな。兄弟子もまあ、他にもいろいろあって今、金に困ってるらしくてな。で、この街に異人が来るって聞いらしく送ってきたんだ。異人なら買う物好きもいるんじゃないかって。正規の値段は400万Gだ」
「よ、400万G…、そりゃ売れないでしょうね」
「まあ、な。だからこの際、材料費だけでも取り戻したいって180万Gでいいそうだ」
性能は文句なし。ただこの見かけなんだよな…ん? いや、違う。逆にいいかもしれん。ネギ坊の事を考えるとピエロ服は都合がいいんじゃないか? ピエロならどんな帽子かぶっててもおかしくないし、この破れシルクハットでも当面は違和感なくいけるかも。それにクソ海賊のジャージとおさらばできるとくれば…これはアリだ。
でも、こうなるともうコスプレだな…まあ、RPGの装備なんてみんなコスプレみたいなものか。そう思っておこう。
「ありがとうございます」
「お、おう。意外にあっさりと受け入れるんだな。その被ってる変な帽子もそうだが、スプラはあんまり見かけに拘らないほうか?」
「まあ、いろいろと、はい…」
頭にネギ飼ってなきゃ拘ってますよ。このローサンとか結構気に入ってるんだから。
「おい、スプラ、その足元の靴、それなんだ?」
俺の視線で気づいたのか、マークスさんの視線も俺のローサンに向く。ああ、これ見てもらおうと思ってたんだった。
「あ、これ俺が改造した、ええっとなんだっけ。【夢追う男の挑戦的ローマサンダル】です。変な説明書きがあるんですけど…」
「お、そんなイカした名前なのか。ちょっと見せてくれるか?」
「あ、はいどうぞ」
俺がローマサンダルを外して渡すと、マークスさんはそれを持ってしげしげと見つめる。どうやら鑑定でもして調べているようだ。
「うん、確かに名前は【夢追う男の挑戦的ローマサンダル】だな。ほう、素材はリザードドッグの革か。で、この艶は…あれで代用できそうだな。再現可能かつこの軽さで斬新なデザイン、しかも足の蒸れもないとくれば…」
「あ、そういや、ステラさんからもどこで買ったのかって詰め寄られました」
「な、ステラさんが?!」
俺の一言でカウンターから身を乗り出すマークスさん。鼻息が聞こえるくらい興奮してる。まあ、そうだよな。どうしよ…活性炭ではお世話になりまくっちゃったからな。あんなヘアバンド一つで借りを返せるもんでもないだろうし。…うん、また作ればいいしな。よし、ここは。
俺はストレージからクソ海賊の草鞋を取り出して履く。こんな早くに再び履くことになるとはな。
「もしよかったら、そのローサンもどうぞ。ステラさんにプレゼントしちゃってください」
「な、スプラ、お前…。そうか、じゃあ、遠慮なく貰っておこう。ちょっと待ってくれな」
マークスさんはローサンを持って奥に入っていくとすぐに何かを抱えて持ってきた。そしてそれをカウンターの上に置く。
それは微細な模様に包まれた中世貴族然とした薄茶色のブーツだった。俺が履きたくて拘ったリザードドッグのブーツの数倍はかっこいい…。
「ローサンの代わりにこれを受け取れ」
❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖
なにこの冴えない男たちの友情ごっこ…
――――――――――――――
◇達成したこと◇
・所持金すべて使って装備購入
・【夢追う男の挑戦的ローマサンダル】譲渡
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
職業:中級薬師
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:1
器用:1
知力:1
装備:【破れシルクハット】
【ただのネックレス】
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv4】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv1】【匙加減】
所持金:約0G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>
〇進行中クエスト:
<クエスト:武器屋マークスの個人的な依頼>
●進行中特殊クエスト
<シークレットクエスト:万事屋の悩み事>
<エクストラ職業クエスト~マジョリカの愛弟子>
◆契約◆
名前:ネギ坊
種族:
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:5
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:0
器用:1
知力:5
装備:【毒毒毒草】
固有スキル:【超再生】【
スキル:【劇物取扱】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます