第46話 調合師ネギ坊

「マジか、ここへきてMPが足らないとは」


 レベル上がらない影響がこんなところで。金もないし、金を稼ぐ時間もない。だのうオジがいつ帰ってくるかわからんし。やっぱり詰んだか。


『ゆらゆら!』

「え? 諦めるなって?」


 頭の上からネギ坊のかわいらしい声。なんか俺の頭を葉っぱでペチペチやってくる。



『ゆ〜ら〜♫』

「え、作ればいいって?」


 いや、ネギ坊よ、MPポーションは序盤じゃ金食い虫って相場が決まってるんだ。そんな簡単に作れたら薬屋はなくなるぞ。



『ゆらゆらゆら~ゆら!』

「作り方教えるから、つべこべ言わずに早く作れ?」


 そんな言葉使いを教えたことはないはずだけどな。って言うか、癒楽草って使うの難しいんじゃなかったっけ? マジョリカさんでも苦労してるんだし。



『ゆ~らゆら…』

「信じないならもう教えてあげない?」


 いや、だってネギ坊はどちらかと言えば素材な訳で、素材が自分の調合のされ方を知ってるとか…ん? それはそれであるのか? んー、やるだけやってみるか。素材はただなんだし。よし。



 ネギ坊改め、ネギ調合師が仰るには、癒楽草をすり鉢でゴリゴリ擦って、ネギ坊が良しと言ったタイミングで聖水を加えるだけだそうだ。


 えらい単純だけど、それって調合スキルなくても大丈夫なのでは? 



『ゆらゆらゆら〜』

「ポーション調合を甘く見るな、スキルが無けりゃただのジュースにしかならない?」


 そ、そうなのか。そんなに違うもんなんだ。中級薬師になって【調合】取っておいて良かったな。成功するといいんだが…【匙加減】とが仕事してくれることを期待しよう。



 ということで、ネギ調合師との2分調合の時間です♪


 まず癒楽草を簡易調合セットのすり鉢に入れてスリスリします。


『ゆら!』


 だいたいこれくらいになりましたら聖水を注ぎ混ぜ合わせます。ご家庭にネギ調合師がいない場合はなんとなくやってください。そのうち成功するかもしれません。



【上級MPポーション】品質3

MPを500回復する。

クールタイム120分



ピンポーン

「特定行動により、【調合Lv1】のレベルが上がりました」



 あ、普通にレベル上がった。しかも上級ポーションできたんだけど。そらクエストブーストなしでもレベル上がるか。しかし上級ポーションってこんな簡単にできていいのか?



……

……



ピンポーン

「特定行動により、【調合Lv6】のレベルが上がりました」



【上級MPポーション】品質7

MPを500回復する。

クールタイム10分



 うーん、なんか無駄に高性能なMPポーションができてしまった。


 いやさ、作る度にスキルがレベルアップするから、ついどこまで上がるのかなって手持ちの癒楽草7個を全部使っていったら、結局最後の1つまで毎回スキルレベルが上がった。


 で、その副産物として、【上級MPポーション】品質3〜7の7個が出来上がった。いや本来の目的はこっちなんだが、調合してるうちにスキルレベル上げの方が目的に変わっていた。ちなみに最後の2つは品質8と9になるかと思いきや7のままだった。どうやら現状では7が限界らしい。

 


 しかし、上級ポーションとなると勿体なくて使えないよな。今欲しいのは回復量10とかの最下級のやつでよかったのに。上級MPポーションなんて売ればかなりの額になりそうだもんな。


 うーん、とりあえずポーション作りしてる間に回復したMPが3あるから、取り敢えずはこれで草束を移動してみようか。


 目の前の草束とリヤカーまでの距離はおよそ30m弱。つまり、MPを使い果たすまで移動させればリヤカーに載せられるだろう。


 一回目、二回目と順調に10mずつ移動でき、最後の難関、リヤカーの上に距離と方向を調整する。



「よし、伸びろ。からの、そこ!」


 見事に草束がリヤカーに載っかった。MPが0になったが、ステータスには特に変わったことはないようだ。偶にMP残量が少なくなると状態異常を起こしたりするゲームもあるから少し心配もあったけどFGSは何もないようだ。



「さて、で、どうするかだよな」


 上級MPポーションを見つめる。なんだか小さな瓶に入った液体がお金の山に見えるてくる。マジョリカさんの目がお金マークになっている時はこんな感じなんだろうな。



「ま、使うしかないよな」


 クールタイムの短い品質7のMPポーションを一気に飲む。HPが10に回復する。品質7だと10分待つだけだから作業してれば時間は経つだろう。束は残り9束あるし、兎に角やっていこう。

 




【上級MPポーション】品質5

MPを500回復する。

クールタイム30分



 草束が残り4つになったところで、丁度MP切れ。そして今回使ったら次使えるのは30分後になってしまう。



「さすがに30分は待てんな」


 装備を削ってまでやった手前、だのうオジが帰って来る前に何としてもやり遂げておきたい。



「よし、MPポーション増産だ」


 教会で買い込んだので聖水の残りは4本ある。ネギ坊の回復用に1本使うから使えるのは3本だ。


「ネギ坊、癒楽草3本くれる?」

『ゆ〜ら〜♪』


 ネギ坊が差し出してくれた安全な葉っぱから3本千切らせてもらう。ここで危険物ドッキリとかしてくるネギ坊じゃなくてよかった。


 よし、じゃあサクッと調合しちゃおうか。



【上級MPポーション】品質7×3



ピンポーン

「特定行動により、【調合Lv9】のレベルが上がりました。【調合Lv10】に達しました。【調薬Lv1】を習得しました」



【調薬Lv1】

 品質8のポーションを作成できる。



 スキルまで習得してしまった。



「何をしておるんだのう?」

「うおわっ」

「作業はもう終わったのかのう。まだ草が残っておるようだのう」


 今、気配がなかったぞ。ネヒルザ的なやつか…いや、この人はああいう突発湧きするタイプのNPCじゃなかったはず。なんなんだ?



「あ、もう帰って来ちゃったんですね。あと、少しで出来ますんで少しだけ待ってくれますか?」


 後はMPポーションを飲みながらフォークを伸ばすだけの簡単な作業。チャッチャッとやっちゃいますか?



「あのう、出来ましたけど…」


「んあ、そ、そうだのう。確かに。…いやいや、今フォークが伸びておった気がしたんだが…。いや、そんな訳…。は、ほ、他の作業はどうだのう? そっちも終わらんと駄目だのう」



「他も終わってますよ」


「だろうのう。まだまだ、技術が足りないからだのう。もっと精進して…ん? お前さん、今なんと?」



「全部終わりました」


「な、全部とな? 耕作も? 草刈りも?」



「はい、そうですね」


「……」



 俺はポカン顔のまま動こうとしないだのうオジを自分が耕した畑に引っ張って行った。いや、重いって。



❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


うーん、確かに調合なんだけど…、撮れ高少なすぎんだよ!

そんな簡単に作んな!


それとYR1、なにアドバイスしてんだ。お前そんなじゃなかっただろ?

勝手に成長するんじゃねえーー!



――――――――――――――

◇達成したこと◇

・癒楽草を使って上級MPポーション作製

・習得【調合Lv10】【調薬Lv1】

・耕作、草刈り、草運びを終える



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 職業:中級薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+4)

 敏捷:1(+15)

 器用:1

 知力:1

 装備:ただのネックレス

 :聖魔のナイフ【ドロップ増加】

 :仙蜘蛛の道下服【耐久:+4、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】

 :飛蛇の道下靴【敏捷+15】

 :破れシルクハット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】new!【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv1】【鍛冶Lv3】【調薬Lv1】new!

 所持金:少額

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]



◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

〇進行中クエスト:

<???の依頼>

●進行中特殊クエスト

<シークレットクエスト:万事屋の悩み事>

<エクストラ職業クエスト~マジョリカの愛弟子>



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★☆☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】

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