第12話 組織の正体と陰謀
NDSラボのオフィスに再び緊張が走る。田島玲奈は、デスクに広げられた地図と資料をじっと見つめながら、頭の中でこれまで集めた情報を整理していた。彼女の目には決意と焦りが交錯していた。謎の組織「トリニティ」が背後に潜むと睨む中で、次の一手を誤れば、失踪者たちの行方は永遠に闇の中に消えてしまうかもしれない。
「玲奈、進展がありました。」高野美咲が緊急報告のために入ってきた。彼女は手に持っていたタブレットを差し出しながら続けた。「失踪者たちの最後の足取りを追跡した結果、全員が同じ場所に向かっていたことが判明しました。地方の山中にある施設です。表向きはリハビリセンターとして運営されていますが、その裏で何か別の活動が行われている可能性があります。」
田島は高野からタブレットを受け取り、そこに表示された施設の情報を確認した。その施設の名前が頭に入ると、胸の奥で不穏な感覚が再び動き始めた。「リハビリセンター? しかし、この場所……何かが引っかかる。」
「以前、別班時代に似たような施設を調査したことがありましたよね。」高野は田島の表情にある種の確信を感じ取り、続けた。「あの時は、表向きの顔と裏で行われていた違法行為のギャップが問題になりました。今回も似たような状況かもしれません。」
「そうね……過去に見た光景が、再び現れているのかもしれない。」田島はその言葉を受け入れ、過去の記憶を呼び起こそうとした。高倉からの警告が、頭の中で何度も響く。「トリニティ……彼らはただの福祉団体じゃない。何かもっと大きな目的が隠されている。」
「施設の詳細をさらに調べるべきです。」高野は冷静に続けた。「ただ、私たちだけで踏み込むのは危険かもしれません。彼らが何を隠しているのか、現時点では完全には把握できていませんから。」
その時、前田奈緒美が部屋に入ってきた。彼女は田島の手元の資料に目を通し、すぐに事態の緊迫感を察した。「玲奈、この施設のこと、何か心当たりがあるのですか?」
田島は静かに頷きながら、前田の問いに答えた。「ええ、過去に別班時代に似たような施設を調査したことがあるわ。その時は、違法な人体実験が行われているという情報がありました。最終的には証拠不十分で調査は中断されたけど、あの施設とこの『トリニティ』が関わっている可能性が高い。」
「なるほど……となると、これは非常に危険な状況ですね。」前田は冷静に状況を分析し、田島に提案した。「私たちの法医学チームとデジタルフォレンジックチームを組み合わせて、施設内の情報を徹底的に調べましょう。何か手がかりがあるはずです。」
田島は前田の提案に同意し、さらに深く考え込んだ。「この施設に突入する前に、できる限りの準備をしておく必要があるわ。彼らが何を隠しているのか、完全に把握しない限り、私たちは一歩も動けない。」
その言葉に全員が同意し、準備を進めることが決定した。田島は高野に施設のセキュリティシステムの解析を指示し、前田には法医学チームと協力して過去の失踪者たちに関する詳細な調査を進めるよう求めた。
数時間後、解析が進むにつれて、高野は重要な情報を発見した。「玲奈、この施設のセキュリティログに異常がありました。失踪者たちがこの施設に入った記録はあるのに、出た記録が一切残っていません。しかも、これまで何度も施設内での通信が遮断されている形跡があります。」
「何かを隠すために、外部との接触を遮断している可能性が高いわね。」田島は冷静に分析しながら、事態の深刻さを改めて感じた。「この施設がトリニティの秘密を守るための要塞になっているのかもしれない。」
前田もまた、発見された証拠に基づいて分析を進めていた。「この施設の周辺で、過去にもいくつかの不審な死因が報告されていますが、すべてが自然死や事故として処理されていました。法医学的な観点から見ても、これらの死因には不自然な点が多いです。」
田島はその報告を聞いて、決意を固めた。「この施設に突入し、彼らが隠している真実を暴く必要があるわ。失踪者たちがどこにいるのか、そして彼らが何をされているのかを明らかにしなければならない。」
その時、田島の携帯が再び鳴った。着信画面には、再び高倉の名前が表示されていた。田島はすぐに電話を取り、耳に当てた。「高倉、何か情報が入ったの?」
「玲奈、聞いてくれ。」高倉の声はいつもよりも緊迫していた。「トリニティがただの福祉団体じゃないことは、お前も気づいているだろう。だが、彼らはもっと深いところに繋がっている。裏には国際的な犯罪組織が関わっているんだ。俺たちが当時掴んだ情報はその一端に過ぎない。もし施設に突入するなら、全てを明らかにする覚悟を持っていけ。」
「国際的な犯罪組織……?」田島は驚きつつも、その言葉の重みをすぐに理解した。「つまり、これはただの失踪事件じゃない。もっと大きな陰謀が関わっているのね。」
「そうだ。」高倉の声には、強い警告の色があった。「慎重に行動しろ。お前の命だけじゃなく、チーム全員の命がかかっている。」
田島は深く息を吸い、決意を込めて答えた。「ありがとう、高倉。私たちは必ずこの事件を解決してみせる。」
電話が切れ、田島は携帯をゆっくりと置いた。その目には、全てを暴く覚悟と共に、過去の失敗を乗り越えようとする強い意志が宿っていた。「高倉が言っていたことが本当なら、私たちは今、非常に危険な状況にいる。でも、それでも私は引き下がるつもりはない。」
前田はその言葉に静かに頷き、田島を見つめた。「私たちは共に戦います、玲奈。この陰謀を暴き、失踪者たちを救い出すために。」
田島は前田の言葉に感謝の意を込めて微笑んだ。「ええ、共に戦いましょう。トリニティが何を隠しているのか、私たちが全てを明らかにする。」
NDSラボのチームは、すぐに行動を開始した。田島班と前田班は、それぞれの専門知識を活かし、施設への突入計画を練り上げていった。彼らが直面する危険がどれほどのものかは分からないが、全員が一丸となり、真実を求めて進んでいく決意を固めていた。
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