第20話 国際的な協力
NDSラボがシャドウネットワークの実態を明らかにしつつある中、その活動の規模が予想以上に広範であることが判明してきた。トリニティを凌ぐ影響力を持つこの組織は、世界中に無数の触手を伸ばしており、その痕跡は至るところで発見されていた。田島玲奈は、シャドウネットワークを壊滅させるためには、単独での捜査だけでは限界があることを認識し始めていた。
ある日の朝、田島はデスクで資料を整理していた。そこには、シャドウネットワークに関する情報がぎっしりと詰め込まれていた。前田奈緒美が隣に座り、データの分析を続けていた。彼女の顔には疲労の色が濃く、何日も休まずに作業を続けてきたことがわかる。
「玲奈さん、この資料によると、シャドウネットワークは東ヨーロッパ、アフリカ、そして南アメリカにも拠点を持っているようです。」前田が疲れた声で報告した。
田島はメモを取りながら、静かに頷いた。「つまり、彼らの活動は単一の国や地域に留まらないということね。これは、国際的な協力なしでは対処できない規模の問題だわ。」
「ええ、その通りです。彼らの拠点はそれぞれが独立して機能しているため、どこか一つを潰しても他の拠点がすぐに活動を再開する可能性があります。全ての拠点を同時に制圧するか、少なくとも連携を断つ必要があります。」
田島は深く考え込みながら、手元の資料を見つめた。「私たちだけでは手が回らない部分もある。国際的な捜査機関や政府機関と連携する必要があるわね。」
「その点に関して、すでにいくつかの国際機関と接触を試みています。」前田が画面に表示されたメッセージを田島に見せた。「特にインターポールや国連の犯罪対策部門が協力を申し出てくれています。」
田島はそのメッセージに目を通し、希望を感じた。「それは良いニュースね。彼らと連携すれば、シャドウネットワークをさらに追い詰めることができる。」
その時、石井遥斗がオフィスに入ってきた。彼は何か重要な情報を持っているかのような表情で、二人に近づいてきた。「田島班長、先ほどインターポールから連絡がありました。彼らがシャドウネットワークに関する追加の情報を提供してくれるそうです。特に、南アメリカの拠点については、すでにいくつかの捜査が進行中で、我々に協力してくれるとのことです。」
田島はその報告を聞いて、少し安堵した。「それは助かるわ。私たちが得た情報とインターポールの捜査結果を組み合わせれば、彼らの活動をさらに詳しく把握できるはず。」
「ただし、彼らも全ての情報を開示しているわけではありません。」石井は慎重な口調で続けた。「彼らの捜査も秘密裏に行われている部分が多く、私たちにすべてを共有できる状況ではないとのことです。それでも、彼らの協力は大きな力になるでしょう。」
田島はその言葉に考え込んだ。「つまり、私たちも慎重に動く必要があるということね。インターポールや他の機関と情報を共有しつつ、私たちが独自に得た情報も活用して、シャドウネットワークを追い詰める。簡単な道のりではないけれど、これが最善の策だわ。」
「その通りです。」前田が同意した。「私たちは、まず各拠点の連携を断つことに集中しましょう。それから、一つずつ拠点を制圧していく。この作戦には時間がかかるかもしれませんが、彼らの力を削ぐためには必要なプロセスです。」
田島はその言葉を聞いて、心の中で計画を練り直した。彼女は、これまでにも数々の困難を乗り越えてきたが、今回の戦いはこれまで以上に厳しいものになることを感じていた。しかし、国際的な協力が得られることで、彼女たちはより強力な力を持ってシャドウネットワークに立ち向かうことができる。
「では、さっそく行動に移りましょう。」田島は力強く言った。「インターポールとの会議をセッティングして、具体的な作戦を練る必要があるわ。他の国際機関とも連絡を取り合って、情報の共有を進めましょう。」
前田と石井はそれぞれの役割を理解し、すぐに行動を開始した。オフィス全体が、新たな戦いに向けて動き出した。田島は、自分のデスクに戻り、インターポールから送られてきた報告書に目を通し始めた。そこには、南アメリカの密林地帯に隠されたシャドウネットワークの拠点についての詳細が記されていた。
「彼らを追い詰めるには、私たちだけでは足りない。でも、国際的な力を結集すれば、彼らの活動を阻止することができるはず。」田島は自分にそう言い聞かせながら、資料をまとめていった。
その夜、田島はオフィスを出て、夜空を見上げた。都会の明かりが星々を覆い隠しているが、彼女の心の中には、一筋の光が見えていた。これまでの戦いで得た経験と、これから得る協力を信じて、田島は次なるステップを踏み出す準備を整えた。
「シャドウネットワークがどれほど大きな影を落としていても、私たちはその闇を切り裂く光になれる。全員で力を合わせれば、必ず道が開けるはず。」
田島のその言葉は、彼女自身の決意を再確認させるものであり、またNDSラボ全体の士気を高めるものでもあった。新たな戦いが待ち受ける中で、彼女たちは再び立ち上がり、国際的な協力の下でシャドウネットワークを壊滅させるべく行動を開始した。
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