第21話 幹部との対決

NDSラボは、ついにシャドウネットワークの幹部の一人、カルロス・ベラスケスを追い詰めることに成功した。彼は南アメリカの密林地帯にある隠れた拠点で、組織の重要な活動を指揮していた。この幹部を捕らえることで、シャドウネットワークの活動を一時的にでも封じ込めることができると考えた田島玲奈は、前田奈緒美と共にその任務を遂行するため、現地に潜入していた。


密林の中、日が沈む頃には、拠点全体が薄暗くなり、静けさが支配していた。しかし、その静けさの中には、常に何かが動いているような不穏な空気が漂っていた。田島と前田は、慎重に拠点内に侵入し、カルロス・ベラスケスの所在を特定するために、建物の中を進んでいった。


「玲奈さん、ここです。」前田が低い声で田島に伝えた。彼女の指さす先には、幹部のオフィスと思われる部屋があった。扉は厚い金属でできており、容易には開けられそうにないが、前田が用意していた特製の道具を使えば静かに解除できるはずだった。


「静かにやりましょう。彼が気付く前に押し入るわ。」田島はその場で冷静に指示を出し、前田が手早く扉のロックを解除し始めた。


数分後、ロックが解除され、扉が静かに開いた。二人は息を潜め、部屋の中へと足を踏み入れた。室内は広く、壁には高級な絵画や書籍が整然と並んでいた。しかし、その豪華さとは裏腹に、部屋の中央には冷たい金属のデスクがあり、そこにカルロス・ベラスケスが座っていた。


彼は、二人の侵入に気付いていたかのように、まるで待ち受けていたかのような態度で座っていた。彼の顔には驚きの色はなく、むしろ、静かな微笑みさえ浮かんでいた。


「田島玲奈、前田奈緒美……お待ちしていましたよ。」カルロスは穏やかに言った。「あなたたちがここに来ることは分かっていました。私の情報網は、あなたたちの動きを常に把握している。」


田島は一瞬、言葉を失ったが、すぐに冷静さを取り戻した。「逃げ場はないわ、カルロス。あなたの組織は追い詰められている。今ここで全てを終わらせる時が来た。」


カルロスは冷静に、そして落ち着いて彼女の言葉を聞いていた。「終わらせる? 本当にそう思っているのですか? 私たちはただの一部に過ぎない。あなたたちが私を捕らえたとしても、シャドウネットワークは存続し続ける。むしろ、これからが本当の戦いの始まりです。」


その言葉に、田島の心に不安が走った。カルロスの言う通り、彼一人を捕らえたところで、組織全体を壊滅させることはできない。しかし、ここで彼を見逃すわけにはいかなかった。


「それでも、あなたを逃すわけにはいかない。」田島は力強く言った。「あなたが持っている情報があれば、シャドウネットワークの他の拠点も突き止められる。」


カルロスは微笑みを浮かべながら立ち上がった。「私を捕らえても、私の口を割らせることはできないでしょう。あなたたちはまだ何も知らない。私たちの計画の全貌も、その背後にいる真の支配者たちのことも。」


その言葉に、田島はさらに疑念を抱いた。「真の支配者たち……? シャドウネットワークの背後には、まだ何かがあるというの?」


カルロスは、まるで田島を試すかのように微笑んだ。「知りたければ、私を捕らえるといい。だが、その代償はあなたたちが思っている以上に大きい。」


その瞬間、前田が鋭い声を上げた。「田島さん、時間がありません! 彼を拘束しましょう。」


田島は、カルロスの言葉を胸に刻みつつも、彼を拘束する決意を固めた。前田がすばやく拘束具を取り出し、カルロスに向かって歩み寄った。


しかし、カルロスは動じることなく、再び冷静な声で言った。「あなたたちは、まだ何も知らない。これから何が起こるかを楽しみにしているといい。私がいなくなっても、全ては計画通りに進む。」


その言葉に、田島は背筋に冷たいものを感じた。カルロスが何を意味しているのか、具体的な内容は分からなかったが、彼の自信に満ちた態度は何か恐ろしいことが待ち受けていることを示唆していた。


「連れて行くわ。」田島は短く言い放ち、カルロスを拘束して部屋を出ようとした。


しかし、突然部屋の外で爆発音が響いた。建物全体が揺れ、田島と前田は反射的に身を屈めた。「何が起こったの?」田島は驚きと共に叫んだ。


カルロスは冷静に笑みを浮かべたまま、「始まったのです。あなたたちが引き金を引いたのですよ。」と言い放った。


その瞬間、オフィスの外で火花が飛び散り、建物が崩壊し始めた。NDSラボのメンバーたちは緊急脱出を余儀なくされ、田島と前田はカルロスを連れ出すために急いで建物を後にした。


建物の外に出た瞬間、カルロスは最後に言葉を放った。「覚えておきなさい。これが終わりではなく、始まりなのです。」


田島はカルロスを車に押し込めながら、これから待ち受ける新たな戦いの予感に胸を締め付けられる思いがした。彼が何を計画しているのか、その真意を探るためにも、シャドウネットワークの背後に潜むさらなる脅威を追い詰める必要がある。

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