第9話 失踪事件の発覚

NDSラボのオフィスはいつも通り静まり返っていた。冷たい青白い蛍光灯の光が、無機質な壁に映り込み、部屋全体に不思議な静寂を漂わせている。田島玲奈は、自分のデスクに座り、最近の捜査ファイルに目を通していた。彼女の顔には、いつもと変わらない冷静さが宿っていたが、その瞳の奥には、次の事件への準備が既に整っているように見えた。


そんな時、オフィスの扉が静かに開き、石井遥斗が入ってきた。彼の表情には、いつになく緊張感が漂っていた。田島はその変化にすぐに気付き、彼に視線を向けた。「どうしたの、石井?」


石井は彼女のデスクまで歩み寄り、手に持っていたファイルを差し出した。「田島班長、少し厄介な案件が舞い込んできました。地方都市で、ここ数週間の間に複数の人々が突然失踪しています。警察も捜査しているようですが、進展がないようです。」


田島はファイルを受け取り、すぐにページをめくり始めた。その内容を一瞥しただけで、彼女の眉が微かに寄った。「失踪者たちには、特に共通点がないように見えるわね。でも、これだけ短期間に複数の失踪が起きるなんて、普通じゃない。」


「ええ、そうです。」石井は頷き、さらに続けた。「依頼者は、失踪者の一人である地方新聞記者の家族です。彼は失踪する前に、何か大きなスクープを追っていたという話もありますが、それが何なのかは分かっていません。家族は警察の捜査に限界を感じ、我々に直接依頼してきました。」


田島はしばらく考え込んでから、ファイルの中にあった失踪者たちのプロフィールに目を通した。それぞれの背景は異なり、職業も年齢もバラバラだった。しかし、田島はその中に何か共通する要素が隠されているのではないかと直感した。


「これは……普通の失踪事件じゃないわね。」田島は静かに言ったが、その声には強い確信が込められていた。「おそらく、この背後に何か大きな陰謀が隠されている可能性がある。私たちが直接調査を進める必要があるわ。」


石井も田島の直感に同意するように頷いた。「現地に行って、彼らの生活環境や人間関係を徹底的に洗い出すべきですね。」


その時、前田奈緒美がオフィスに入ってきた。彼女は二人のやり取りを見て、何かが起きていることを察した。「どうかしましたか?」


田島は前田にファイルを手渡し、状況を簡潔に説明した。「地方で起きている複数の失踪事件です。警察の捜査が進んでいないため、我々に依頼が来ました。失踪者たちには表面的には共通点がないように見えますが、背後に何かがあるかもしれません。」


前田はファイルを読みながら、眉をひそめた。「なるほど……失踪者が一人なら偶然と見なすこともできるでしょうが、これだけ複数となると偶然とは思えませんね。私たちが動くべき時が来たようです。」


「そうね。」田島は再び前田に目を向け、決意を込めて言った。「私たちでこの事件の真相を突き止めましょう。失踪者たちが何を追っていたのか、そしてその背後にどんな陰謀が隠されているのかを。」


前田もまた、その決意に応じるように頷いた。「では、早速準備を整えましょう。現地に行って、失踪者たちの足跡をたどる必要があります。」


石井はすぐに指示を受けて動き出し、調査の準備を始めた。田島と前田は、それぞれのデスクに戻り、必要な資料を集めるために忙しく動き始めた。オフィスの静寂は、今や次の大きな事件への期待と緊張で満たされていた。


田島は自分の心の中で、何かが大きく動き出そうとしている感覚を覚えた。これはただの失踪事件ではなく、何かもっと大きな陰謀が背後に潜んでいる。その直感が、彼女の中で強く響いていた。


「絶対にこの事件を解決してみせる。」田島は心の中で固く誓いながら、自分自身を奮い立たせた。


その決意を胸に、田島と前田、そしてNDSラボのメンバーたちは、失踪事件の真相を解明するために動き出すのだった。何が待ち受けているのかはまだ分からないが、彼女たちは必ず真実を突き止めるという強い意志を持って、この新たな挑戦に立ち向かおうとしていた。

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