第24話 終末への序章

NDSラボがシャドウネットワークの全貌を公表してから数日後、世界は急速に混乱の渦に巻き込まれていった。シャドウネットワークによる報復は、想像を絶する規模で展開され、世界中の都市がその標的となっていた。田島玲奈と彼女のチームは、各地で起こる惨事を目の当たりにし、事態の深刻さに愕然とした。


その日、NDSラボのメインオフィスは、これまでにないほどの緊迫感に包まれていた。緊急会議が招集され、田島、前田奈緒美、石井遥斗、高野美咲の代わりに新たに加わったメンバーたちが集まり、これからの対策を協議していた。


「世界各地での報復攻撃は止む気配がありません。特に都市部での爆破事件や、重要インフラへのサイバー攻撃が次々と発生しています。」前田がプロジェクターに映し出された地図を指し示しながら報告した。地図上には、赤いマークが至る所に散らばり、世界中の都市が攻撃を受けていることを示していた。


「これほどの大規模な報復を予測できていなかったとは……」田島は地図を見つめながら、苦々しい思いを抱いていた。「私たちが彼らの計画を暴露したことで、彼らは最後の手段に出た。これは彼らの死に物狂いの抵抗なのか、それとも……」


「いや、これは彼らの『終末計画』の一環かもしれません。」石井が言葉を引き継いだ。「彼らは、自らが敗北することを前提にした計画を進めていた可能性があります。つまり、彼らが倒れた時には、世界中を巻き込んで破滅させるというシナリオです。」


その言葉に、オフィス内の空気が一層重くなった。田島はその可能性を考慮しながらも、何か別の意図が隠されているのではないかという疑念を捨てきれなかった。


「それなら、彼らが望んでいるのは単なる報復ではなく、完全な混沌と崩壊……世界を壊すことそのものが目的だということ?」田島はそう呟きながら、シャドウネットワークの真の狙いに思いを巡らせていた。


「もしそうだとすれば、私たちが直面しているのは、これまでにない規模の脅威です。」前田は神妙な面持ちで言った。「彼らが引き起こす混乱は、私たちが想像していた以上のものであり、止める手立てを見つけなければならない。」


田島は深く息を吸い込み、意を決して口を開いた。「私たちはこの混乱を収めるために動かなければならない。これ以上、彼らの手にかかる犠牲者を増やすわけにはいかない。まずは、シャドウネットワークの指揮系統を断ち切り、彼らの活動を封じ込める必要があるわ。」


「しかし、彼らの組織は依然として広範囲に存在しています。全ての拠点を一度に制圧するのは難しいです。」石井が冷静に分析しながら言った。「何か決定的な弱点がない限り、彼らの反撃を完全に止めることはできないかもしれません。」


その時、オフィスのドアが開き、急ぎ足で入ってきた通信担当のメンバーが田島に書類を手渡した。「田島班長、緊急の通信です。シャドウネットワークの内部から送られてきたものです。」


田島はその書類を受け取り、すぐに目を通した。その内容に彼女は一瞬、表情を硬くした。「これは……彼らの指揮官からの挑発か?」


書類には、シャドウネットワークの指揮官と思われる人物からのメッセージが記されていた。その内容は、田島たちを直接対決に引き込もうとするものだった。「もしも我々の計画を止めたいのであれば、私と対峙しなさい」と書かれていたのだ。


「これは罠かもしれない。でも、彼らの計画を阻止するためには、この誘いに乗るしかない。」田島は書類を前田と石井に渡し、考えを巡らせた。「私たちは、彼らの指揮系統を叩くために動くべきだわ。これはリスクを伴うけれど、他に方法はない。」


前田はその言葉に重く頷いた。「そうですね……彼らの指揮官を倒すことで、少しでも混乱を抑えることができるかもしれません。」


田島は決意を固め、オフィス内の全員に向けて指示を出した。「全員、準備を整えてください。これから私たちは、シャドウネットワークの中枢に向かいます。この戦いで、全てを終わらせるために。」


その夜、NDSラボのメンバーたちは、最後の戦いに向けての準備を進めていた。田島は一人静かにオフィスを歩きながら、自らの選択を見つめ直していた。彼女の心には、これまでの戦いで失われた仲間たちの記憶が浮かび上がり、彼らの遺志を背負う覚悟を新たにしていた。


「これが私たちの最後の戦いになるかもしれない。でも、私たちには守るべきものがある。美咲が命を懸けて守ろうとした未来を、絶対に手放すわけにはいかない。」


田島は夜空を見上げ、星の見えない暗闇の中に一筋の光を探すように、その視線を固定した。シャドウネットワークとの最終決戦が迫る中、彼女は仲間たちと共に、その戦いに挑む覚悟を決めた。

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