第21話


 ああ!いろいろ思い出した!

 そうだ。青く染めた色のついた指輪、どこかで見たことがあったようなと思ったけれど……!

 殿下があの時指輪のデザインを決めるときに使ったものがそういう物だった。

 まさかそれを准騎士は探している?

 ……准騎士が動いているということは、国が探しているということだ。

 何故?

 ああそれに……。

 殿下はそろそろ婚約者を探すと誰かが言っていなかっただろうか。

 まだ、結婚してない。

 17歳になったらすぐに結婚すると高らかに宣言していたのに。

「リンクル殿下……」

 一緒にいるだけで幸せな気持ちになれるんだと言っていた相手とはどうなったのだろう。

 まさか、リンクル殿下を振ってしまったの?

 嘘でしょう?

 どうして?

 あの時、問題は彼女がプロポーズを受けてくれるかどうかだと言っていた。その他には問題がないと。

 家格の問題や、人妻だとかいうような大きな問題はなかったのだろう。

 一体、なぜダメだったの?

 もしかして……。あれから3年たち、そろそろ殿下も婚約者を探すみたいな話は……。

 この3年間、その女性のことが忘れられなくて他の人と婚約できずにいたということ?

 ぐっと拳を握り締める。

 リンクル殿下には幸せでいて欲しいのに。

 今、殿下は幸せなの?

 一緒にいるだけで幸せな気持ちになれるという、その女性はもうそばにはいないんでしょう?

 無理していない?

 心が擦り切れていない?

 心配で胸が張り裂けそうだ。

 ……そして、もし、准騎士が探していた指輪が、殿下が探しているのだとしたら……。

 それはどうして?

 殿下を振った人に贈ろうとしていた指輪のデザイン見本の指輪なんて、探してどうしようと言うの?

 分からないことだらけだ。

 デザイン見本じゃなくて、本物がどこかに流出してしまい、新たに婚約者に送るために宝石だけは取り戻したいとかなら分からなくもないんだけど。

 殿下がこの3年間でどうなったのか。

 元気にしているのか。

 幸せなのか……。

 っていうか、待って。

 もし、もしよ?ルゥイがリンクル殿下の子だったとしたら……。

 プロポーズして振られて、やけになって女遊びして腹ませて、のちの後継者争いなどでまずいことになりそうだから隠した……みたいなこと?

 ……女性が殿下の子を妊娠したと知った誰かが子供を亡き者にしようとして……。

 私がそれを知ったら逃がそうとする。殺すなんて絶対に許せないと。

 リンクル殿下は亡き者にしようとはしないはずだから、家臣が勝手に……。もしくは陛下のご命令……いや、陛下も亡き者にまではしないだろうから、殿下の子だと知られないよう口止めして誰かの養子にしてひっそり育てさせるとか……する気はする。

 まぁ、とにかく、家臣が暴走したのか、亡き者にしようとする勢力がいたら。

 子供の命を救おうと、私は動いたはず。

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