第13話

 王都は高い塀に囲まれている。

 出入りする人は検問がある。

 乗合馬車の乗客たちは馬車を降りるといくつかに分かれている検問場所に並んだ。

 ちょうど、駅の改札口というか遊園地の入場場所のように、人がチェックを受けて通過していく。

 馬車や荷車など大きな荷物のある者たちは別の場所だ。

 そりゃそうだよね。人の出入りが多いんだから、1か所だけで大行列なんてあるわけないんだよ。

「女性はこっちだ!」

 どうやら男女別れてチェックされるらしい。そんなことある?

 マーサさんと私とマーサさんの息子は分かれて列に並ぶ。

 ルゥイは男の子だけど一緒でいいよね?

 眠っているルゥイを抱っこしていると順番になった。

 名前、年齢、どこから来たのか、目的など聞かれる。紙にメモされていく。髪の色と目の色と体型。

 5歳までの子供に関してはチェック無し。

 名前はシャリナではなく、今使っているリナ。年齢も少しごまかして本当は3年たったから25歳のはずなんだけど、23とサバを読む。乗合馬車に乗ってきているのは見られているから村の名前は嘘をつかない。目的は知り合いに会いにとした。

「右手を出せ」

 言われるままに、右手を出す。武器を持つ手ではないかのチェックかな?商人ですと言った人間が剣を握っている手じゃ怪しいもんね。

「ペンだこがあるな?これはどうしてだ?」

 門番の言葉にぎくりと固まる。

 そう来たか。

 確かに、庶民の識字率は低い。ペンだこができるほど何かを書くような職業は庶民にはあまりない。

「この子はうちの店の帳簿つけをしてもらってるんだよ」

「ふむ、なるほど。その子は?」

「ルゥイです男の子です」

 手のチェック終わり、両手でルゥイを抱っこしなおす。

 心臓がバクバクする。

 もし、行方不明になった子供を探しているのなら……。検問でチェックされるということまで頭になかった。

「はい、行って良し。次の人」

 ほぉーっと、内心で大きく息を吐き出す。

 名前だけメモされ、それで終わった。

 うかつだった。……ルゥイが寝ていてくれてよかった。私の肩に顔がうずまっていたから、綺麗すぎる顔を見られることもなかった。

 それに……。庶民にはめったにない、美しい青い瞳を見られて、メモに書かれたら……。

 今は探されていなくても、もし、探そうと出入りの記録を見られたら見つかってしまっていたかもしれない。

「はい、じゃあ、知り合いのところへ行っておいで。宿の名前は憶えてるよね?」

「よろしくお願いします」

 マーサさんにルゥイを預ける。

 この3年に何があったのか。

 情報が欲しい。

 一つは、両親だ。

 無事なのだろうか?伯爵家は取り潰しになっていないだろうか?

 王都の中心部に視線を向ける。

 庶民が住む下町が円の外側。内側に進むにつれ、位の高い者の屋敷になる。城が中央にあり、その周りが貴族街だ。

 その外側が貴族との取引のある商店や城勤めの者や貴族で働く者たちの住まいがある。

 さらに外側が一般庶民の住む領域で、塀に囲まれた外側に王都に住むことができない人たちの街ができている。

 人口が増えたためで、スラム街というわけではない。


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