第24話
隊長副隊長クラスにだけ伝えられている「青い指輪」の話を副隊長は思い出していた。
「もしかしたら……」
副隊長は准騎士に尋ねた。
「他に特徴はなかったか?」
2人が顔を見合わせる。
「結構かわいかったな」
「かわいかった」
副隊長が少しあきれて息を吐いた。
准騎士の二人はびくりと肩を震わせ、何か他に特徴はなかったかと必死に思い出そうとして、ふと手に持っている赤い玉のついた玩具がが目に入った。
「これと同じものを持っています!」
副隊長がすぐに言葉を発した。
「これとこれを借りるぞ」
准騎士から、外国語を書いた紙と玩具を受け取ると、副隊長は隊長に報告するべく、足を速めた。
報告を受けた第三騎士団隊長は、副隊長を連れて殿下への面会を求めた。
捜索を請け負った第三騎士団の隊長と副隊長は「探しているもの」が「青い石のついた指輪」ではなく「青い石のついた指輪を持つ人物」だというのを知っている。
ただ、指輪をはめているのか、手放しているのかも分からないと言う。
ほんの小さな手掛かりでもいいから欲しいと必死なのだ。
どうしても見つけたい人物。
殿下がどうしても会いたい人物……。
殿下に外国語を教えていた教師……伯爵令嬢シャリナ様だ。
殿下の教師の任が解かれた後、見識を広めるために各国を旅すると家を出たそうだ。
伯爵も突然娘が旅に出てしまい、どこへ向かっているのか分からないと言う。
隊長は、殿下に伯爵令嬢に会ってどうしたいのか尋ねたことがある。
一言、小さな声で「謝りたい」と殿下はおっしゃった。
何を?ととても尋ねられる雰囲気ではなかった。
必死に探してまで、一体何を謝りたいのか……。
殿下の立場であれば、伯爵令嬢に対して何かをしたとしても許しを請う必要もないというのに。
副隊長の報告。
探している伯爵令嬢と同じ髪色に、同じくらいの年齢。
そして何より……複数の言語に堪能だと言う話。
殿下への面会が許可され、殿下の執務室のドアをノックし部屋に入る。
部屋の中は、外の光が十分に入っているため明るいはずなのに、どうにも暗い雰囲気が漂っている。
立太子してからずっとだ。
真面目に仕事に打ち込む姿に、初めは「王太子になったプレッシャーがあり暗いのだろう」と思っていた。
だが、1か月たち、半年たち、1年……そして3年たっても殿下は影を落としたまま。
仕事でいくつも成果をあげ、優秀だと評されるようになってもなお、その影はなくならずにいた。
この報告で殿下はまたがっかりなさるかもしれない。けれど、一筋の光となるといいと願いを込めながら体長は殿下に報告を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます