第20話

「あー、やっぱり、シャリナはそうだよね。ちょっとはめてみてよ」

 言われるままに、指輪を右手の薬指にはめる。指にはめたイメージが見たいのかな?となんの疑問も持たずに。

「で、ここに宝石が載る」

 殿下がポケットから青く染めた石を取り出して、宝石がはまる場所にのせた。

「本物を使うわけにはいかないけど、イメージは伝わると思う」

 青い石が載ったシンプルな銀色の指輪。

「あら?シンプルすぎて、指輪と言うよりも……武器みたいに見える……?」

「武器って。あはは。まぁ、でもシャリナ、他のも試してみてよ」

 言われるままに石を付け替え他の指輪を試す。

 青い石は思ったよりも目立つため、少し大げさかなと思ってしまう土台のほうが似合う。薔薇があしらわれている物は華やかだ。他の宝石を周りに配置したものは豪華すぎる。

 と、結局全部の指輪を試した。

 リンクル王子が嬉々として私の指に指輪をはめたり外したりしている。

 ……プロポーズする女性にあげる指輪のデザインを決めるのがそんなに楽しいのかな。

 でも、他の女性の指にはめた指輪をもらってうれしいかな?

 いやこれはあくまでも指にはめた感じを確認するためだし、そもそも本物ではなくデザイン見本だから大丈夫なのかな?

「うん、これか、これか、これ……かな?」

 殿下が10のうち3つを選んだ。

 確かに、殿下が選んだものはどれも華美過ぎず、宝石とリングとのバランスもとれていて素敵なものだった。

「なぁ、シャリナはどれが好きだ?」

「そうですねぇ……。殿下の思い人が華やかな方でいたら、こちらも似合うと思います。控えめな方ならこちらでしょうか?……私が個人的に好きなのはちなみに、これです」

 殿下が選んだ3つの家の一つを指さす。

 薔薇ほどの主張はない、かわいらしい花……フリージアがあしらわれた指輪だ。

「ヴァヴィア」

 殿下が隣国の言葉を発する。

「一番初めにシャリナに教えてもらった花の名前だ……」

 首をかしげる。

「そうだったかしら?よく覚えているわね?」

 殿下が、フリージアの花があしらわれた指輪を再び私の指に通し、石を載せた。

「ヴァヴィア ルールイ フォル フリージアが咲いています……ビラル……」

「そうね……ビラル~綺麗~だわ」

 殿下が私の指にはめた指輪に、唇を落とした。

「ちょ、殿下っ!」

 指輪がとても気に入ったのか、それとも、殿下が思い人を思い出したのか分からないけれど。

「ビラル……シャリナ」

 あ。

 思い出した。

「あの時も、確かそう言って私をからかったわよね!」

 私が殿下のことをかわいいと言った腹いせにからかわれたんだわ!

 7年もたつと言うのに、覚えていて、またからかうなんて!


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