第3話 魔石

【ピコン】

【さすが鬼畜マスター。訳してキチマスですね。あんなに可愛い顔をしたウサギをやるとは】



「俺は平等主義者だからな!

可愛かろうが命を狙われたら容赦なんてしてられるか!」



そういうとカバンからハサミを取り出し解体していく。その様は爺ちゃんに鍛えられたお陰かかなり手慣れているようであった。



「ん?なんだこれ?小さい石?」



解体していると心臓のあたりから赤黒いような石が出てきた。



【ピコン】

【それは異世界物定番の魔石というものだと推測します】



「やっぱり魔石もあるのか!

とりあえず売れるかもしれないし仕舞っておくか…」



そう言うとポケットの中にスマホと一緒に仕舞おうとすると…



なんと魔石がスマホに吸い込まれてしまった。



………

魔石の初回取り込みに成功

魔石から魔力を解析開始

魔力を抽出します

………

成功

………

"アート”の機能を一部解除・拡張します…

………

成功

抽出した魔力を一部リンク者に還元

………

再起動します



抑揚のない機械音でスマホからそう告げられる。



【マスター!どうやら使えなかった機能が少し使えるようになったみたいです!】



「!!」

突然聞こえてくる可愛らしい声にびっくりする。



「"アート"なのか!?」



【はい!あなたの大好きなアートちゃんですよマスター!】


AIなのに何だか嬉しさが伝わってくる声色なのが感じられる。



「ん?しかもスマホからじゃなくて直接頭に響いてきているような…」



【魔石を取り込んだことで、魔力の解析に成功しました。

そして、マスターの魔力波に合わせることで直接マスターに声を届けることができるようになりした!】



「魔力が俺の中にもあるのか!!

じゃあ俺も魔法とか使えるようになるかもしれないということか〜」



【現時点では不明ですが、魔法を使える存在を解析すれば可能だと推測します】



「異世界最高だな!

じゃあ魔法の解析も任せたぜ!」



【AI使いの荒いマスターですね。

マスターは私がいないと何もできないポンコツなので仕方ありませんね】



はぁ〜とため息の聞こえそうな声でAIに言われて藍は苦笑いを浮かべるのであった。



「そうだった。そういえばこの血生臭いのを早く洗いたいんだけど近くに川とかあるかな?」



【付近の動物の足跡や通り道、風・湿度から推測するに水場は14時の方向に進むとある可能性が高いです】



「よし!とりあえずそっちに向かってみるか!」



解体したウサギとカバンを持ってアートの指示する方向へと進んでいく。




「うおぅ!本当に川があったな!」



【マスターは私が言ったことを疑っていたんですか?でしたら次からはお答えしません】



「ち、違う違う!それは言葉のあやというか何というか…

これからも頼りにしてますアート様」



【分かればいいのです。それよりも臭いので早く水浴びでもしてきてください】



「臭いってアート嗅覚なんてついてないだろ?

まったく…」


そう溢しながらも血がついていては不快なことには変わりないので、水浴びの準備をして川に入っていく。


「ふぅ〜生き返った気分だ。」



ぎゅ〜

藍のお腹が空腹を訴える。



「さっき仕留めたウサギを早速食べるとするか〜

あ…おれライター持ってねぇじゃん

火が起こせないじゃん!」



【お爺様との山籠りの時に教わらなかったのですか?】



「爺ちゃんそういえば大雑把だから

ハッハッ〜新鮮なら肉は生でも大丈夫だ!

とか言って無理やり食べさせられたな…

しかも次の日俺お腹壊したし…」



そう遠い目をしながらワイルドすぎる爺ちゃんを思い出す。



【そ、それは素敵なお爺様ですね…】


AIからも引かれる爺ちゃん



「さてどうしたものか。生で肉なんて食べたら絶対にお腹壊す未来しかない自信がある!

俺のお腹の弱さ舐めるなよ。」



【どこに誇りを持っているんですかマスターは…】

【コ、コホン】



「ん?」



【ん?じゃありませんよ。そんな時こそアートちゃんにお任せですよ!】



「アート火も起こせるの?」



【それは無理です。でも火おこしの方法なら教えられますよ】



「火おこしってあれでしょ?木の棒擦って付けるやつ。あれを俺ができると思う?」



【思いませんよ引きこもりナヨナヨマスター。】



「じゃあダメじゃん

それに何か増えてね?」



【はぁ…これだからマスターは…

私が言っているのは引きこもりナヨナヨマスターでも火おこしができる方法があると言っているのですよ】



「マジか!教えてくださいませアート様!」



【全く調子のいいマスターですね。

仕方ありません。


まずかばんからライトの乾電池とチューイングガムのアルミ包装を取り出してください。


そうしたら火種を移す木を準備します。


次にアルミ包装の真ん中をハサミで細くなるように切って、アルミを乾電池の両端にくっつけてください。

そうすると熱が出るので火がつきますよ。】



「そんな方法があるのか〜」



アートの指示通りに火が移りやすい植物と手頃な焚き木を持ってくると実践してみる。


「おぉ!火がついた!

これで肉が食べれるぞ!!」



早速木の棒に解体したウサギ肉を突き刺し火で焼いていく。



「いい匂いがしてきな。そろそろいいかな

ゴクリ」



ウサギ肉からは空腹の藍が耐え切れないほどの芳醇な香りを出しており、思わず唾液を飲み込んでしまう。



「いっただきま〜す!」




「うめぇえ〜!噛めば噛むほど溢れ出る肉汁に全然ケモノ臭さの無い凝縮された旨味!よく鶏肉みたいと聞くが鶏肉よりもプリプリで美味い!」



夢中でかぶりつきあっという間に一羽食べ切ってしまう。美味しさはもちろんだが相当にお腹が空いていたことが伺える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る