第22話 光属性魔法(笑)

ガックリとうなだれている俺にレイさんはフォローをしてくれる。


「一応、適性がないからと言って使えないわけじゃないのよ。私には火の適性はないけど…見ててくださいな」


レイさんは人差し指を立てると、指先にライターほどの火を灯して見せてくれる。

じゃあ俺の夢はまだ途絶えてはいないのか!


【適性外の属性を使う場合、熟練者でも10倍以上の魔力を必要とするらしいと本に書いてありましたよマスター】


うぐっ…

お、俺にはまだ身体強化がある!あれなら圧縮するだけだから属性は関係ないはずだ!


でもやっぱりファイヤーボール出してみたいな…





「それじゃあ気を取り直してそれぞれが持つ無属性の魔力を属性魔力へと変換する訓練に入りましょうね。アイダさんは光属性に適性があるようなので、私と同じで丁度よかったわ」


【マスターは光属性(笑)ですけどね。ぷぷぷ】


アートに茶々を入れられながらもレイさんの話に集中する。



「変換は直接属性変換された魔力を感じることが1番の近道だから、本来は師匠が弟子に属性魔力を流し込むのが一般的な訓練方法なの。

だけどアイダさんにはアートちゃんが居るから私が光魔法を使って、それをアートちゃんが覚えた後に、アイダさんの体で直接変換してもらうのが良さそうね。私も初めてだから確証はないけど多分いけるはずよ」




「なるほど…アート頼んだぞ。

あ、そうだ、もしダメじゃなかったらでいいんですけど…レイさんの覚えている魔法をアートに覚えさせて頂いてもいいでしょうか?」


俺はレイさんの努力を横取りしているような気まずさを感じながらも、これからのことを考えてレイさんにお願いをする。


「もちろん大丈夫よ。普通に使うと危ない魔法も私なら威力を調節できるからここでも教えられるわ。ちなみに威力は基本的には消費する威力に比例するけど、必要以上に弱くする場合にも魔力消費が増えるの」


「つまり適切な量が1番燃費がいいと言うことですね」




レイさんは早速魔法を見せてくれるそうだ。



【魔力を解析する為にレイの体に触れてくださいマスター】


俺はレイさんに断って手を伸ばす。その時に頭の中でレイさんのおプリン様の感触がフラッシュバックして一瞬だけ手が止まりかけるが、レイさんに気づかれないように動揺を隠しながら肩に触れる。


【ヘンタイマスター…】


一瞬の逡巡をアートには気づかれていたようだが。



「それじゃあいくわよ〜まずは光属性からね!

ライト!お次は〜ライトシールド!…」


レイさんがライトと唱えると明るい光が灯される。その次は光でできた盾が出る。



その後もいくつかレイさんが光属性魔法を披露してくれる。光属性には攻撃系の魔法は少ないようで、レイさんが見せてくれた魔法の中には一つだけでシャインレイという光を凝縮したレーザーのような魔法だった。反対に補助系の魔法に優れるようで、すでに知っているヒーリングにその上のミドルヒーリング、ハイヒーリングや、ミラージュといった迷彩のような魔法を披露してくれた。


そして風と水魔法についても便利な攻撃魔法と防御魔法、補助魔法をアートに覚えて貰った。



「ふぅ…ざっとこんなところかしらね。アイダさん、アートちゃんどうだったかしら」


「めちゃくちゃ凄かったです!」


俺は目の前で見る魔法の数々に興奮し、改めて魔法を使いたいと言う気持ちが強くなった。適性属性がしょぼいからなんだっていうんだ!


【解析は問題なくできましたが、マスターの魔力量の関係で現状使える魔法は限られてきそうです。属性変換については全て可能です】


「さすがアートちゃん!それじゃあ早速光属性に変換してアイダさんに教えてあげてくださいな」



【仕方ありません。ポンコツマスターに私tueeeのアートさんが教えてあげます】


いつも以上に俺の精神を攻撃してくるアートに一言言ってやりたいが、これからアートに協力してもらうので下手なことは口にできずぐっと堪える。


「お願いします…アートさん…」



いつか絶対にギャフンと言わせてやると心に決め、今は光属性の魔力を感じて覚えることに集中する。



俺は坐禅を組んでアートが動かしている魔力を意識する。体の中で特に手に魔力が集まっているのを感じる。より意識を落としていくと、手に集まっている魔力と普段身体に流れている魔力の波長のようなものが少し違うのが分かってきた。


これが光属性の魔力か…



普段流れている魔力を今感じている魔力の波長へと合わせていくと、少しずつではあるが魔力が手に集まっているものと同じものになってくる。


「できました!レイさん!」


「さすがね!ここまでくれば後少しよ!そうしたらいよいよライトの魔法を使ってみましょうか。

変換した魔力を手に集中したら魔法が発動した状態を想像して魔力を構築していくわ。

そして最後のステップの命令は構築した魔法にどんな動きをさせたいかを発動時に決めるの。例えばライトであれば灯った光を点滅させたりすることも命令すればできるし、ファイヤーボールが手から相手に飛んでいくのもこの命令のプロセスのおかげというわけよ。複雑な命令をすればするほど魔力消費も大きくなるし時間もかかるわ」



「魔法のイメージを想像して構築に命令ですか…」


そうか、アートが以前に変換と構築はできないと言っていたのは、変換は当時火属性の魔力しか解析していなかったからで、構築はAIであるアートには知識から模倣や推測はできるが、想像は出来ないから一度発動のプロセスを解析して模倣しないとダメなのか。


ということはアートの魔法は解析した相手の技量によって左右される可能性が高い。それでジュークくんとの時もリンのファイヤーボールと同じ青色の炎だったのか!たしか炎は赤よりも青い方が温度が高かったはずだ。


レイさんの話を聞いて納得した。




すっきりした俺は先ほどと同じく魔力を光属性へと少しずつ変化させていく。そして変化した魔力を右手に集めて電球から光が灯るのを強くイメージする。複雑な命令は特になしで魔力が尽きるまで発動することを意識する。


すると右手から20cmほど離れたところでイメージ通りの光が灯る。


「!!できた!俺にも魔法が使えた!!」


初めての魔法にテンションが上がる。ただの光がつく魔法だったけど子供に戻ったようにはしゃいでしまった。


【これでマスターも光属性魔法(笑)使いですね】


落ち着いてきた頃にレイさんから暖かい瞳で見守られていることに気がつく。

穴があったら入りたい…



後は練習してスムーズに発動できるようにしたり魔力のロスを無くす練習をするようにとアドバイスをもらいレイさんとの今日の訓練を終えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る