第23話 鬼教官ブライド

俺は日本にいた時よりも充実した日々を送り、あれからあっという間に1週間、にフォクス村に来てから10日が経った。


この1週間の間にマーラさんのところでマーラさん秘伝の回復ポーションと魔力ポーションの作り方を伝授して貰った。

薬草の採取から配合比に魔力釜の使い方のコツ、そしてマーラさんが1番のポイントと言って教えてくれたのが、使用する水に光魔法のピュアという浄化魔法を通常よりも多くの魔力を使用してかけることで、水自体に魔力を含ませることが出ると言うのだ。

この魔力量がポーションと等級にも大きく関わるそうだ。今の俺ではまだ低級のポーションしか作れないが、自分で回復手段を準備できるのは大きい。



もちろんポーション作りだけでなく、ランニングに槍の訓練と魔法の訓練、そして夜の魔力チート法も毎日続けている。そうした今の俺のステータスがこれだ。




name:アイダ(戸田藍)

職業:"アート"のマスター

HP:38/38

魔力:168

筋力:14

器用:22

スキル:"アート"


お気づきだろうか。

名前の表記がアイダになっていることに。いつからか忘れたが本名の方が()表記にされてしまった。俺が許容して呼ばれなれたせいなのだろうか。


かなり頑張ったと思う。魔力は毎日続けているチート法のお陰で順当に育っている。

ランニングと筋トレのおかげが筋力なんて最初の倍以上になったし、HPは訓練所でブライドさんにボコボコにされていたら気づいたら増えていた。


ステイタス項目の器用の数値だが、槍の訓練や森の歩き方、魔力操作など体の動きに注意して特訓すると数値が上がりやすかったように感じる。

おそらくイメージした動きをどれくらい自分の体でイメージ通りに発揮できるかに影響してくるのではないだろうかと思う。



それにしても、ブライドさんはアリマの言う通りやばかった…つい辛い訓練所での出来事を思い出してしまう。あれはフォクス村に来てから5日目の出来事だ…



「うむ、アイダ、久しぶりであるな。アリマから聞いたが身体強化も使えるらしいな」


「い、いえあれはアートのおかげで自分だけだとまだほんの少しだけしか…」


「うむ、ほんの少しだとしても驚くべきスピードだぞ。どれ槍の師匠として我が成果を見てやろう」



そう言うとブライドさんはストレッチをし始める。え?あなたと戦うんですか?俺はてっきり素振り様子を見てくれるのだと思ったら模擬戦をさせられるようだ。



「うむ。それでは始めるぞ!」


問答無用で始められてしまった。


「うむ?来ないのならこっちからいくぞ〜」


「え!あのちょっ!?はや!?」


ブライドさんは右足を後ろに引いたかと思うといきなり姿勢を低くしたまま前傾姿勢で加速してこっちに向かってくる。


あっという間に間合いに入られると、ブライドさんの片手で振られた槍が俺の左上から迫ってくる…



バシッ


間一髪自分の槍でガードが間に合う。力で押し返そうとするもびくともしないが、すぐにブライドさんから下がってくれた。


「うむ。よく防いだのであるな」


とても片手で振ったとは思えないくらいの衝撃が手を襲い未だにピリピリと痺れている。


このまま受けに回っても筋力も技術も劣っている俺は何も出来ずに終わってしまうのが目に見えている。ここは攻めなくては…!



「アート、身体強化を頼む」


【了解ですマスター。身体強化!】


魔力感知も成長しており、体の中が高密度の魔力が高速で流れることで暖かい感じがすると共に体が軽く感じる。


俺はブライドさんに向かって槍を構える。ブライドさんも俺の雰囲気が変わったことに気づいたのか槍をしっかりと構えている。



ダンッ


俺は強く地面を蹴り土埃を上げながら、槍を引き寄せ全力でスピードを上げる。そして間合いに入った瞬間に引き寄せた槍に全力のスピードを乗せて突きを放つ。

ヒュッ バシッ


「ぬぅぉっ!?」

体重もスピードも乗っておりかなり自信のある突きを放てたにもか変わらず、ブライドさんは咄嗟に反応し、なんと突きを素手で掴んだ。それでも威力を殺しきれなかったのか3mほど後ろに下がらせることができた。


槍を素手で掴むとか人間技じゃない…


「うむ!いい突きであったのである!これは楽しくなってきたぞ!

よし!我も…身体強化!」


その瞬間明らかにブライドさんから放たれるプレッシャーが強くなる。


は!?今まで身体強化使ってなかったの!?素の状態で俺の渾身の突きを素手で受け止めてたのかよ!


ブライドさんは体の調子を確かめるように数回槍を振るう…

…ブォン…ブォン


今振った時の音置き去りにしてません!?

どう考えてもやばいんですが…



【そういえばマスター。アリマがブライドが身体強化使ったらこの世とおさらばだって言ってましたね】


アートから絶望的な話を思い出させられる。


「あ、あの、それはちょっとやりすぎってか危ないんじゃ…」



「うむ!それではいくのである!」


全然話聞いてないコイツと思ったら砂煙を残して目の前からブライドさんの姿が消える。どこに…と思った瞬間に体に強い衝撃を受けて後ろへと吹き飛ばされる。


「グエェ」


地面にバウンドしながら意識が遠のいていく…

薄れゆく意識の中で【ミドルヒーリング】という珍しく少し焦ったアートの声が聞こえた気がした。

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