第24話 初の狩へ

ブライドさんとの訓練とい苦い思いでを思い出した俺はなんだか体が痛いきがしてくる。その後も訓練と称してはボコボコにされた。

後でアートに聞いたが、初めて吹き飛ばされた時HPがかなりギリギリまで減っていたらしい。アートに詳しく聞こうとしたら、【本当に知りたいですか?】と言われて怖くなって聞くのをやめた。



途中でブライドさんの身体強化をアートに頼んで解析してもらったところ、本気を出すと5倍ほどまで強化できそうとのことだったが、体の負担と魔力消費もかなり大きくなってしまうらしい。ちなみに俺と戦った時は1.5倍ほどだったとのことで素の身体能力が違いを思い知らされた。





そして今日からついにルークさんとの狩が始まる。これでおれもヒモニートをついに卒業だ!

美味しいお肉をとってリンとレイさんにも食べてもらいたい。

以前に狩りに行くと言う話をブライドさんにすると「我のお下がりだが使うといい」といって鉄の槍をくれた。少し重いがトレーニングをしているおかげで問題なく使えるようになっている。


おれはやる気を出しながらいつもの日課を終えご飯を食べた後、教えてもらっていたルークさんの家へと向かう。



「ここだよな…」

コンコン


ガチャ


中から口髭をチョビンとカールするように生やし、カウボーイハットを被ったダンディな狐人族が扉を開けて顔を出す。

カウボーイハットこの世界にもあるんだ…


彼は手に持ったパイプタバコをひと吸いするとふぅ〜っと俺に煙をかけてくる。


「ゴホッゴホッ、は、初めまして、アイダと申します。狩人の手伝いとして今日からお願いします」



「俺はルーク。よくきたなアイダ。すぐに準備するからちょっと中で待ってろ」


ぶっきらぼうにそう言い残すとスタスタと家の中に入っていく。




おれは小さな声でお邪魔しますと呟いた後に扉をゆっくりと閉め中に入る。家の中は動物の毛皮や魔物の魔石、そしてルークさんの武器であろうボウガンと鞭が壁に立て掛けてあった。


ルークさんは大きめのバックパックを背負い、ボウガンと鞭を装備すると準備が終わったのか、俺に待たせたなと言って着いて来いと指示をする。


「それじゃあ森に行くぞ」


フォクス村に入った時に通った門を開けてもらい2人で村の外に出る。初めて入った時は何も感じなかったが、改めて今門を潜ると何か魔力のような違和感を感じる気がする。だが、深く考える間もなくルークさんに置いて行かれない様にその背中を追う。後でレイさんにでも聞いてみよう。




現在俺たちは森をおそらく、俺がこの世界に転移した場所である川の上流側に向かって進んでいるようだ。


こんな森で逸れて遭難なんて嫌すぎるので必死に着いていくが、やはり森を歩き慣れているルークさんのスピードは早い。

それに、なんだか歩く際の音があまりしないのである。これが本職のハンターの技術か…


少し進むとルークさんが立ち止まり地面を見ている。


「アイダこれを見てみろ」


ルークさんが指を刺すところを見ると蹄のような足跡が残されている。


「これはビッグボアの足跡だ。まだ新しい。そう遠くない所に居るはずだ」


ルークさんは持ってきていたボウガンに矢をつがえる。



【マスター。まだ私の感知できる範囲には大きな移動物は居ません。レイに教えて頂いた魔力感知にも反応はありません】


俺の優秀な相棒は当初からできた電磁波を放って行う物体感知の他に魔力を薄く放つ魔力感知も行うことができる様になっているのである。魔力消費も少ないので優秀な技術だ。

ちなみに俺はまだできない。アートは半径200m程を探知できるらしい。アートのやつ優秀すぎる。

そんなアートもまだ感知できていない距離にいる様だ。



俺たちはビッグボアの足跡を追跡していくと残されている足跡の間隔が明らかに狭くなってきている。


【マスター!200m先13時の方向に大きな反応があります】


木々が邪魔でまだ視認できないが、アートが言うのだから間違いないだろう。


「ルークさん。200mほど先に魔物がいる様です」


「なに?魔力感知ができるのか。しかも200m先まで分かるとはレイさんが是非にと言うだけあるな」


レイさんが俺のことを褒めてくれていたようで、それを本人以外から聞くといつも以上に嬉しくなってくる。





俺たちは今まで以上に慎重に、音を立てない様息を殺して近づいていく。アートの指示する位置まで残り50mほどの地点まで近づくと、木々の間から大きなイノシシの姿が確認できる。足跡の正体はルークさんのら見立て通りビッグボアで、今はどうやら水溜まりの水を飲んでいるみたいだ。



ルークさんは俺に待機の指示を出すと、ボウガンをビッグボアに向けて狙いを定める。


バチッ


「ブムォ!!」


ルークさんがボウガンの矢を放つと同時に静電気少し大きくした弾ける音がなる。

矢はビッグボアの横腹に刺さりビッグボアが悲鳴を上げる。あの巨体ではボウガンの矢1本では致命傷には及ばない筈だが、そのまま痙攣し倒れてしまった。

倒れたビッグボアを確認するとルークさんは素早く近づき、いつの間にかバックパックから取り出していたナイフでとどめを刺す。


【ルークのボウガンから雷の魔力を感じました】


唖然としている俺を他所に木に吊るして血抜きをし始める。


「今のボウガンは普通のボウガンとは違うんですか?」


「このボウガンは特注でな、俺は魔法はあんまり得意じゃ無いがこれなら俺の魔力を込めて打てる。今のは雷の属性魔力を込めたから痺れて動けなくなったってわけだ。狩は傷つけず倒す方が価値も高いからな」


「なるほど…そんなボウガンもあるんですね…」


狩りをする上でルークさんの様に麻痺させる攻撃はかなり有用だな。


血抜きを終えるとボアの解体に入る。ルークさんがあっという間に半身を解体し終える。そして俺にやるか?と聞いてくれたので俺はルークさんに教えて貰いながらなんとか残りを解体する。


見比べて見ると俺の解体した方の素材はガタガタだが、ルークさんのはそのまま売りに出されているかの様だ。


ビッグボアの内蔵はすぐにダメになってしまうと言う話なのでお昼に俺たちで焼いて食べることに。


早速火を起こすとバックパックから取り出した串に刺して焼いていく。しっかりと火が通っているのを確認してからルークさんが持ってきていた塩を振って食べてみる。


「このレバー全然臭くない!うまい!」

しかも野生的な中にしっかりと旨みもあり初めてレバーを美味しいと感じた。


「これがハンターの特権だ」

ニヤリと笑い、ルークさんもそう言いながら串焼きを頬張って食べる。




お昼を食べて満足した俺たちは、ルークさんが持ってきていた袋を借りてボアを詰めて2人で手分けして担ぐ。

かなり重たい…なんであんなに軽そうに持てるんだ…

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