第27話 1人での狩り 【私もいますよマスター】

いつもの門に着くと門番が2人いる。門番は衛兵で順番に担当を回しているらしい。


今日の門番は初めてここに来た際にいた弓を持った小柄なハリマさんと短剣を使うアリマさんの様だ。訓練所やルークさんとの連日の狩のおかげで衛兵の方々ともある程度顔見知りになっている。



「久しぶりっすアイダ!」


「お久しぶりですアイダさん」


アリマとハリマさんに挨拶される。最近知ったのだが、実はこの2人は兄弟でアリマの方がお兄さんらしい。性格は元気なアリマに対してハリマさんは落ち着いていて似ていないが、言われてみれば2人とも小柄で毛並みも似ている気がする。

やはり、この世界でもやんちゃな兄を持つと弟はしっかりするようだ。兄弟だと知っていても落ち着いているハリマさんの方が年上に見える。


「お久しぶりですアリマ、ハリマさん」


「これからまた狩っすか?」

「今日はルークさんはご一緒じゃ無いんですね」


「今日も狩に行くんだけど、ルークさんから1人で森に行く許可が出たから、今日からは1人だよ」



「さすがアイダっすね!気をつけていくっすよ〜」

「お気をつけて下さい」


門を開けて見送ってくれる2人に手を振りながら門を潜る。





そういえば以前に感じた門を通る際の違和感についてレイさんに聞いてみたことがある。

すると、

「あ〜あれはねぇ〜私がこの村をミラージュで覆ってるからなのよ〜だから私はあまりこの村から離れるわけには行かないのよね〜」

と言っていた。

どうやら魔物の動きが活性化してこの森にも魔物が増え被害が出るようになってしまった為、以前からレイさんがミラージュで魔物に感知されにくくしているとの事だ。

軽く言っていたがとんでもない離れ業である。村を覆うほどの光魔法を発動するだけでなく、それを維持する魔力操作と魔力量は銀獣化しているレイさんだからこそなのだろう。

村長であるだけでなくまさに村を守る女神様だ。




森にでてアートに探知をしてもらいながら進んでいく。


「今日は魔石を確保する事が目標だから、以前リンを助けた時のゴブリンがいた方に向かうのはどうかな?ゴブリンを減らせれば村の危険も少しは減るだろうし」


狩をしてお金を稼ぐのは勿論大事だが、お世話になっているフォクス村のために俺にできることをやっていきたい。


【ゴブリンは群れで行動することが多いので魔石狙いには適しています。マスターの魔力量も増えているのでいざとなったら私も魔法で援護するので問題ないかと】


「頼りにしてるよアート」


俺は地道な訓練によって身体強化を1.5倍まで自分で使える様になっている。アートに身体強化を発動してもらわずに、探知と魔法に集中して貰うことでかなりの戦力アップに繋がっている。


ちなみに魔法の同時発動はレイさん曰く高等技術になるらしいが現在のアートはレイさんのおかげで3つの同時発動まで可能になっている。

レイさんは村のミラージュが無ければ最大10個ほど同時発動できるらしい。

2つで高等技術なのでは??


おれは光属性魔法も一応使うことができるようになったが、適性が低いせいか未だに時間がかかりすぎて戦闘で使えるレベルには到底及ばない。



俺はルークさんの足運びをできるだけ真似しながら音を立てない様に意識して森を進んでいく。日々が訓練なのである。



【マスター、この先にゴブリン3体の反応があります】


俺はゴブリンを目視できる位置まで身を隠しながら近づく。


「3体か…先制でできるだけ数を減らそう。アートの魔法で両端の2体行けるか?」


【こちらに気づいていませんので問題ありません。ウィンドカッターで仕留めます】



「それじゃあいくぞ…!」


俺は身体強化を自分で発動する。それと同時にアートが風属性魔法のウィンドカッターという不可視の刃を両サイのゴブリンに放つ。

先制攻撃での不可視の風の刃は魔力感知をできないゴブリンには躱しようがない。


「グキ??」


2体のゴブリンはアートの放ったウィンドカッターに全く反応できず、一言も声を上げることなく胴体と首をおさらばさせる。

残されたゴブリンは訳もわからず混乱している。

暗殺者になれそうだねアート…


俺は残ったゴブリンに向かって勢いよく向かっていく。

ゴブリンには流石に気付かれるが、1.5倍とはいえこの世界に来た時よりも筋力も上がっている俺の身体能力が強化されており、すぐに槍の間合いまで近づけた。


ブォン


「グギ…」


俺は鉄の槍を斜めから薙ぎ払いゴブリンを吹き飛ばす。胸を切り裂かれながら吹き飛んだゴブリンは木にぶつかって止まるが、ぴくりとも動かない。

ゴブリンの狡猾さを知っている俺は念の為警戒するが、しっかりと倒すことができていたようだ。



「ふぅ…ゴブリンであれば油断しなければ1人でも問題なさそうだな」


【1人ではなく私がいますよマスター】


「勿論忘れてる訳ないだろ?

それにウィンドカッターの切れ味はやっぱりえぐいな」


【風属性魔法は基本的に不可視なものが多いのも使いやすいですね。マスターのヘンタイ魔力増加法のおかげで魔力が増えてますので使える魔法も増えましたね】



俺は初めにアートが首をチョンパしたゴブリンの魔石を取り出していく。まるで鋭い刃物でスパッと切られたかの様だ。魔力消費も12ほどで今の俺であれば連続で20回以上発動することができる。

おれはアートを怒らせない様にしようと改めて心に誓う。

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