第28話 運のいいゴブリンめ…

魔石を3体とも取り出すとアートに魔法で水を出してもらい手と魔石をよく洗う。

匂いに敏感な魔物に気付かれる可能性があるからとルークさんが教えてくれた方法だ。最も普通は魔力節約のために持ってきた水か、川などで洗い流すらしいが。


魔石はルークさんから1人で森を歩く許可をもらった際に、選別がわりに頂いたお揃いのバックパックにしまう。あの寡黙なルークさんが俺の為に用意してくれていたことにとても嬉しくなった。



「アート周囲に魔物の反応はある?」


【感知範囲ギリギリですが、4体のゴブリンの群れがあります】


「さっきより1体多いけど俺たちならいけそうだな」


アートの案内に従ってゴブリンの群れの方へと向かう。


【マスター。先ほどの群れから少し離れた位置にも3体のゴブリンがいるのを感知しました】


「ゴブリンは合流しようとしてるのか?」


【いいえ特にその様な動きは見せていません】


「念の為警戒しながら早めに4体の群れを片付けよう。今度は3体行けるか?」


【問題ありませんマスター】


ゴブリンの様子を伺うと木々が少ない開けたエリアに4体のゴブリンが休んでいる。



「いくぞアート。右側の3体を頼む」


今度はゴブリン達が少し開けた場所にいる為、バレずに近づける距離が少し遠い。


アートがウィンドカッターを放つと同時におれは身体強化してゴブリンへとスピードを上げる。


「「ギャい?」」


先ほどと同じくアートの放ったウィンドカッターは3体のゴブリンの首を狙う。


狙われた3体のゴブリンの内、中央にいるゴブリンが突然寝転がり休もうとする。

首を狙ったウィンドカッターは2体のゴブリンの首をしっかりと刎ねたが、運良く寝転んだゴブリンには当たらずにその先の木へと当たり鋭い切れ込みを入れ細い木が倒れる。


【マスターすみません!1体に避けられました】


運のいいゴブリンめ…


「問題ない!」

魔法と同時に飛び出したおれは既にゴブリンを狙える位置にいる。


「シッ!」


「グギャ」


俺は飛び出した勢いのまま当初から狙っていたゴブリンを突き、体に風穴を開ける。槍を引き戻すと、そのままできるだけスピードを落とさない様に意識しつつ運良く魔法を逃れたゴブリンを上から突き刺す。



「ギャ…」


槍はゴブリンの右肩に命中して大きな傷を負わせたがまだゴブリンは生きている。


もう一度槍を…と考えている間にゴブリンの首が飛び、そのまま地面に鋭い跡がつく。

どうやらアートが援護してくれた様だ。



「ふぅ…少し焦ったけど大丈夫そうだね」



【!!マスター先ほど少し離れていたところにいたゴブリン3体がこちらに向かってきます!】


「戦闘音で気づかれたか!どの方向から来る??」


【10時の方向です。距離170m】


俺は開けている地形を利用する為にできるだけゴブリンが向かってくる方向からできるだけ離れた位置で槍を構えて待つ。



「グギャギィ!」

「「グギャ!」」


3体のゴブリンが茂みの中から出てくる。俺が1人なのを見ると奴らは獲物を見つけたとばかりに笑いながら、囲むように少し広がりながらジリジリと近づいてくる。

2体のゴブリンの手には木の棍棒を持っているが、真ん中にいる1体のゴブリンが小さなナイフを持っている。おそらく誰かを襲った際に手に入れたのだろう。


「アート、あのナイフを持っているやつは確実に倒しておきたい。少し魔力消費が多いけどシャインレイで確実にいこう」


【承知しましたマスター。タイミングは任せます】


既に身体強化を発動している俺は油断なく槍を構えて間合いを図る。


ゴブリン共が俺から10mほどまで近づいたところで俺は合図してアートが魔法を使う。


「今だ!」

俺は固く目を瞑る。


【シャインレイ】


「「ギャッ」」


瞼を閉じていても感じるほど眩しい光が一瞬輝くと、ナイフを持っていたゴブリンはパタリと後ろに倒れる。その頭には5センチほどの大きさの穴が空いており焼けこげている。かなりの高音であったことが伺える。


残された2匹のゴブリンは突然の眩しい光を直視してしまい棍棒を手放して目を押さえながら暴れている。


アートに合図した際に目を閉じていた俺はゴブリンの姿を問題なく見ることができる。

俺は未だ目を押さえながら暴れているゴブリンへと槍を突き刺して冷静に仕留めた。



「ありがとうアート」


【マスターにしては良くやりました】


「いつもアートのおかげで奇襲できることの方が多かったから余計に探索の大切さを感じたよ」



【今回はちゃんと目を瞑っていたんですね】


「もうあれはこりごりだよ…」


【さっきのゴブリンを見ながらマスターかと見間違えるほどでした】



おれは目を押さえて暴れていたゴブリンに同情する。

というのも、レイさんから魔法を教わり、魔力も増えてきた頃に森で魔法の試し撃ちをしておいたのだ。

アートが今の様にシャインレイを岩に向かって放つのをまじまじと見てしまったのだ。


「めがぁ…めがぁ…!!」

目を両手で押さえてジタバタする。

その様は先ほどのゴブリンとそっくりであった。


アートがヒーリングをかけてくれなかったら本当に失明するかと心配になるレベルだ。

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