第26話 アートの新しい機能

「ただいま戻りました」


「あらあらまぁまぁ、お帰りなさいアイダさん。お怪我はない?」


家へと戻るとレイさんが出迎えてぐるっと俺の周りを見て周り怪我をしていないか確認してくれる。だいぶ過保護な気がするが気持ちはすごく嬉しい。


「どこも怪我してないですよレイさん。あ、これ今日採れた獲物の肉です。いつもありがとうございます。あ、あとこれもどうぞ」


俺はビッグボアの肉と今日ルークさんが分けてくれたお金をレイさんに全て渡す。


「このお金は受け取れないわ。これはアイダさんが稼いだものですもの、自分で使ってくださいな。それに旅をするのなら貯めておかないとよ。お肉は今日のお夕飯に有り難く頂くわ」


「部屋まで貸していただいてご飯もご馳走になっているのに悪いですよ」


「それはリンを助けてくれたお礼だし、私達がしたいからそうしてるだけよ。なんならずっとここにいてもいいのよ」


レイさんもルークさんと同じで頑なに受け取ってくれない。


「それよりも初めての狩はどうだったかしら?」


「ルークさんがあっという間にビックボアを仕留めて流石でしたね。少し寡黙な方みたいですけど、とても勉強させてもらいました。明日からもしばらく一緒に森に行ってくれることになりました」


「あらあらまぁまぁ、ルークさんは獣王国家の狩人集会所ハンターギルドでもBランクまで上り詰めていた凄腕ハンターですからね〜結婚を機に引退してこの村に住んでくれているのよ」


「ハンターギルドですか?」


「そういえばハンターギルドも知らないわよね。大きな町に行くと殆ど必ずと言っていいほど狩人集会所ハンターギルドという組織があるの。そこでは魔物の討伐依頼から素材採集に護衛依頼なんかも請け負っていて、そこに所属するハンターがその依頼を受けてくれるのよ。ハンターにもランクがあって一般には確か下はFランクから上はAまでランク付されて受けられる依頼も変わってくるの」


「それじゃあBランクのルークさんはベテランということですね」



「獣王国家レグナントに着いたらアイダさんも登録するといいわよ」


「分かりました。ありがとうございます」



この世界に来て1番恵まれているのは俺は素敵な人達に出会えたことだと自信を持って言える。




その日の夕飯では俺が取ってきたボアの肉を使ってレイさんがシチューを作ってくれた。どうやら俺が初日に好物と言っていたのを覚えてくれて、ご褒美に作ってくれたようだ。


あなたは女神の生まれ変わりですかレイさん。

自分で肉を取ってきた補正もありその日のシチューは人生で1番美味しかった。






それから5日間ルークさんと一緒に森で狩をすると、ルークさんからもう1人でも大丈夫だろうとお墨付きを頂いた。

そして、この5日で2種類の新しい魔物に遭遇したが無事に狩ることができた。1体目はフォレストディアという鹿の魔物で木の葉の様な模様をしているのが特徴だ。あまり好戦的でないのか反撃せず、逃げられそうになったところをルークさんがきっちりと仕留めてくれた。


もう1体はアシッドスネークという40cmほどの蛇の魔物だ。毒を持っている上に木の上から奇襲をかけてくる初見殺しな魔物だった。幸いおれには頼れる相棒がいるので不意打ちされるどころが逆に不意打ちして仕留めてやった。




そしてそれらの魔物の魔石をスマホに取り込むと



………

魔石の取り込みを確認

魔力を抽出します

一部リンク者に還元します

………

5種類の魔石の取り込みに成功

子機機能の凍結を解除します…

失敗

子機機能を一部凍結したまま解除します…

成功

………

完了

………



というメッセージが現れた。久しぶりにアートの機能が増えたようだ。


「アートまずはステイタスを出してくれ、あと可能だったらいくつ数値が上がったかも出せる?」


【承知しました】



name:アイダ(戸田藍)

職業:"アート"のマスター

HP:45/45 (7up)

魔力:276/276 (108up)

筋力:18 (4up)

器用:26 (4up)

スキル:"アート" 子機0/5



魔力訓練法のおかげで魔力の伸びが素晴らしい。以前に測定した時は10分に1だけ魔力が回復しおよそ2時間少しで満タンまで回復ていたが、現在は10分で13の魔力を回復できる。

だが、どうやら体内で魔力が回復するのは一定のタイミングに限られるようで、10分に一度最大魔力の5%が回復するようだ。心臓で作られた魔力が体に流れるタイミングが10分おきなのだろうか?

その為、現在は約3時間半で満タンまで回復する。これは魔力が増えてから変わることがなかった。

もしも10分に一度という縛りが無く回復速度が上がるのであれば、俺の魔力訓練法にとってとてつもない効果が得られたがそこまでは上手くいかないようだ。




そしてステイタスでなにより気になるのはやはり、先ほどメッセージにあった子機機能だ。

現在は子機0/5となっている。


「アート子機ってのが追加されたけど何かわかる?」


【子機はどうやらマスターの持つスマホを親機として子機スマホを出すことができるようです。子機をアクティベートするには1つにつき魔石を20個吸収しなければならないみたいですね】


「子機って何ができるの?」


【現時点で使える機能はチャット機能と位置を把握するGPSのような機能のみの様です】


「さすがに俺みたいに魔石で強くなったりアートを使える訳じゃないのか…

でも、遠く離れていても会話できるのはかなりいい機能だよな?」


【情報伝達は戦略の基本ですからねマスター】


現代で普及している電話も元は戦争の為の軍事技術だというのは有名な話だしな。



「とりあえずは魔石を確保してからだな。ちょうど昨日ルークさんからも1人で森に入る許可を貰えたし、早速狩にいきますか」


俺は毎日の日課になっているランニングを終えてご飯を食べた後、鉄の槍とバックパックを背負い村の門までいく。

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