第17話 筋肉痛も悪くない
【マスター、ランニングの時間ですよ】
「ふぁ〜もうそんな時間か…よし!」
窓から外を覗くと少し明るくなってきてはいるが、まだ薄暗さも残っているそんな時間帯だ。昨日の夜のアートの宣言通りに、朝からランニングに向かう為にいつもよりかなり早く起きた。
顔を洗う為に部屋から出て裏庭の井戸の方へと向かう。
井戸から水を汲み上げて顔っていると、
「あらあら、アイダさん今日は早いんですね」
後ろから声をかけられ、タオルで水気を拭き取りつつ振り返りながら答える。
「今日から毎朝ランニングをして体力作り…を…!?」
「ってなんて格好してるんですか!?」
そこには寝巻き姿いわゆるネグリジェ姿のレイさんがいた。透けているようタイプではなかったが、透き通る肌と豊満な存在がここぞとばかりに主張している。
「あら?何か変かしら?」
そう言いながら自分の服や周りを見て不思議そうに首をかしげる。
「へ、変どころか似合いすぎているんですけど…とにかくこれを着て下さい!」
俺はなるべく見ない様にと己の中の悪魔と死闘を繰り広げながら、さっきまで着ていた上着を羽織らせる。
俺の悪魔が暴走しない為にもあの格好で出歩かない様にとレイさんに釘を刺した後、いよいよランニングへと向かう。
朝から気力をかなり消費する戦いを繰り広げたが、本当の訓練はここからが始まりである。
【まずは村の塀の内側をランニングしていきましょう】
「分かった」
最初は軽快に走れていたが20分もすればかなり息も乱れ脈拍が速くなる。ランニング開始から30分ほどで村を一周し終え2周目にはいる。
スピードが落ちるとアートから【マスターの根性なし】などとヤジが飛んできて終いにはお尻にファイヤーボールを打ち込むと脅してくる。
「ハァ…ハァ…」
なんとか1時間のランニングを終えた。
座わって少し休憩を挟む。
【次は筋力アップです。腕立て、腹筋、スクワット、背筋をそれぞれ10回ずつを可能な限りゆっくりと行って下さい。それを今日は10セットです】
「ゆっくりやるの?しかも10セットも!?」
【1回1回どこの筋肉を使っているのかを意識しながら、ゆっくりと行うことで通常よりも効果が高まります】
「そうなんだ、とりあえずやってみるか」
アートにダメ出しをくらいながら、全身をプルプルさせつつ気合いでなんとかノルマを達成する。
「はぁ…もうむり…体が動かない」
【これくらいでだらしないですねマスター】
大の字になって裏庭で寝転がっているとリンが呼びにきた。どうやら朝ごはんの準備ができた様だ。
汚れをよく払ってから重い体を引きずり居間へと向かう。
「おはよ〜アイダ!おばあちゃんに聞いたけど、がんばってるみたいだね!」
リンの笑顔を見ていると元気を分けてもらえるというか自然と体が軽くなる気がする。
「まだ初日だから身体中が悲鳴を上げてるよ…昨日の訓練で筋肉痛があるみたいだし」
それを聞いたリンが俺のことを指でツンツンと突いてくる。
「ひょえ、ちょ、やめて!」
「あはは〜私も昔よくやられたからさ!」
「何やってるの〜2人とも?」
やってきたレイさんにリンが面白そうに俺を突いていた話をする。
「なるほど〜じゃあ、えいっ!」
「うぉおい」
レイさんまでもが俺をいじめてくる様だ。しばらく2人のおもちゃにされてしまう。
「うふふ、可哀想だから私が治療してあげるわ」
「ヒーリング」
そういうとレイさんはぎゅっと俺に抱きついてきて俺は優しい光に包まれる。
とても気持ちがいい…身体中が包まれる様だ。
け、けして、けっ〜して抱きしめられているのがではなく優しい光がだぞ?
【マスターキモイです】
今の俺にアートの辛辣な言葉など無意味なのだよ。何にも勝るものがない至福の時間なのだから。
至福の時間はあっという間に終わりレイさんが離れてしまう。
「どうかしら?」
「最高でした」
【痛みはどうかと聞いてるんですよこの色欲魔人マスター】
「あ、痛くない…痛くないです!」
「うふふ、よかったわぁ〜
訓練で怪我したり体が痛くなったらまたいつでも言って下さいな」
「お願いします!」
人生で1番心の底からお願いしますと言えた気がする。
【先程ヒーリングを解析して筋肉痛や軽い怪我ならマスターの今の魔力で私でも使えそうなので安心してくださいマスター】
してやったりというニヤケ顔が幻視しそうな声色で絶望を伝えられる。
(ちっ、アートのやつ余計なことを…!!)
「昨日言っていた狩人のルークさんに話をしたら、今週は忙しいみたいだから来週から来てくれと言っていたわ」
「分かりました。今週は槍と魔法の訓練ととマーラさんの所で薬について教てもらおうと思います。また魔力操作がスムーズになったらお手隙の際に教てください」
「任せてくださいな」
その後、レイさんが作ってくれた朝食をみんなで食べ、それぞれ別れて自分の用事にとりかかる。おれは早速マーラさんのところへと向かった。
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