第14話 凶悪な存在
「うむ、アイダの昨日の話では日本とやらでは平和な国と聞いていたが、まだ未熟とは言えジュークの剣を迷わず避けるのも見事であったぞ」
「あはは、あれも実はアートの入れ知恵なんですよ。だから俺自身は何もしてないですよ」
「うむ…」
(素人が向かってくる敵に臆さずに突っ込みながら避けるのは相当な恐怖心を克服せねばならん。アイダの才能か、それともアート殿との信頼がなせる技か…)
ブライドはそう言いながら笑うアイダを見て内心で思うのであった。
「そうだブライドさん、もし迷惑でなければ俺もここで訓練してもいいですか?マーラさんのところで薬についても教えてもらう予定なので合間合間になると思いますが」
「うむ!勿論構わんぞ、槍であれば主要武器だから我も教えられるし、我がいない時は他の衛兵に訓練してもらうのもよかろう。この後予定がないのであればこのまま教えるがどうする?」
おれはチラリとリンを見るとOKを頂いたので、ブライドさんにぜひお願いしますと返した。
リンはリンで他の訓練生に混じって訓練してくるとのことだ。
「うむ、ではアイダ槍の強みは分かるか?」
「槍の強みですか…リーチが長いことですかね?」
「うむ、勿論第一がそれだ。相手の攻撃の当たらない位置から一方的なに攻撃できるのは非常に有利だ。
だがそれだけではなく例えば、魔物と戦う上で威力を一点に集中できる突きは硬い外皮や厚い脂肪を持つ相手にも有利に戦えるのだ。その他にも槍は突くだけでなく長さを生かした打撃や薙ぎ払うこともできる汎用性の高い武器ということだ。」
「なるほど…」
「うむ。それじゃあ早速基本の突きと薙ぎ払いを練習するぞ。よく見ておけ」
ヒュッ、ブゥォン
ブライドさんはそう言うと自信の持っていた訓練用の木槍を構えると、突きを放ちそのまま流れるように薙ぎ払いを見せてくれた。突きは風を突き破る音がして、薙ぎ払いでは風切り音がする。
「どうだ?今のが基本にして1番大切な槍の動きだ。とりあえずアイダもやってみろ」
ひゅー、ひゅー
「あれ…?」
おれはブライドさんの姿を思い出しながら突きと薙ぎ払いを真似してみるも、頼りない音が少し鳴るだけで思うように上手くいかない。
「うむ、もっと脇を絞めて体の捻れとバネを槍に伝えるのだ。イメージは体から穂先まで一本の槍だ」
ヒュー、ヒュー
さっきよりマシになった気がするがブライドさんとは天と地の差があることがすぐに分かる。
それから何回も繰り返し練習していると腕が上がらなくなり、呼吸も非常に荒くなる。
「ガハハ、こればっかりは基本だから体に覚え込ませていかないとだな。後は筋力と体力が圧倒的に足らんな」
【やっぱりマスターは引きこもりですから体力不足ですね】
「引きこもりは余計だけど、その通りだな…」
その後休憩してから再度訓練するもブライドさんから初日から飛ばし過ぎて体を壊さないようにと注意を受けお昼過ぎにはリンと家に戻る事にした。
「アイダ初訓練はどうだった?」
「もう腕が上がらないよ。それに、まさか模擬戦をする事になるとは思わなかったけど、自分の未熟さを改めて感じたよ」
「あたしは、アイダがあっという間に勝っちゃって最後はヒヤっとしたけどかっこよかったよ!」
「あはは、ファイヤーボールを防げたのはリンとアートのおかげだよ、ありがとうな」
【もっと感謝して下さいマスター】
「私も頑張ってファイヤーボール使えるようになったのにアートちゃん凄いよ!」
「俺も自分で魔法を使ってみたいな〜」
「それならおばあちゃんにお願いするといいよ!村で1番魔法が上手なのはおばあちゃんだから。たまに私も教えてもらってるし!」
「レイさんに?それなら家に着いたらお願いしてみようかな」
そうこうしているうちにりんの家に着く。
「ただいま〜!」
「ただいま戻りました」
「あらあら、お帰りなさい2人とも。村はどうだったかしら?あとで詳しく聞かせてちょうだいな」
「新鮮なものばかりでとても楽しかったです!」
「それならよかったわぁ〜
さぁ、お昼ご飯ももう出来てるからみんなで食べましょう。2人とも手を洗ってらっしゃい」
2人で手を洗い戻るとサンドイッチがお皿に並んでいた。
「サンドイッチも美味しそうですね!」
「村で採れた野菜を使ってるからどれも新鮮なのよ」
3人でテーブルを囲みサンドイッチを食べながら、村を回った際の出来事を話していく。そして、リンの提案通りレイさんに魔法を教えてもらえないかと頼んでみる。
「勿論いいわよぉ〜
でも私の指導は厳しいわよ?」
「ぜ、ぜひお願いします」
ふんす!と聞こえそうな勢いでレイさんが両手を両脇の前で引き寄せやる気を示す。
レイさん…そのポーズは凶悪な存在が強調されて目に毒です…
【ファイヤーボールをマスターに打ち込みますよ】
ごめんなさい。
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