第1話 異世界転移

「はぁ〜いつもいつもあのハゲ社長めちゃくちゃ言いやがって…」



ハゲ社長の言葉を苦い顔をして思い出す…



「いいかね君たち!時代は変わっていくものだ!これからはAIが我が社で重要になってくる!

常に新しいことに挑戦し続けることが大切だとは思わんかね

時代はAIなのだよ!君たち!」



「そこで我が社で一番機械に詳しい戸田主任を中心に頑張ってくれたまえ」



「へ?おれ??」


そうして俺の残業デスマーチが始まったのだ…




「何がこれからの時代はAIだよ!未だにガラケー使ってるくせに!」



1ヶ月に渡るむちゃぶりの末ようやくの仕事終わりに、思わず愚痴をこぼすヨレたスーツ姿の男。

身長は176cmほどで平均よりは高いが、高身長とまでは言えないくらいである。



駅のホームで野菜ジュースを飲みながら終電を待っていると、周りには酔っ払いのおじさんに同じく疲れた顔をしたスーツ姿の男性達。なんだか無性に親近感が湧いて泣きそうになる。



男はきちんと整えればイケメンと評される仲間になるであろうに、黒髪を少しボサつかせ目の下に若干のクマを浮かばせ台無しにしている。



「急におしゃべりチャットロボットを作ろうとか無理があるだろ…社内でまともにAI使えるの俺だけだったじゃねぇか」


仕事の開放感からかはたまたストレスからか、口を開けば口が漏れてしまう。



社員のほとんどは今年で27歳になった男よりも一回り以上上の世代であり、唯一男の苦労を理解してくれたのが、事務員として一昨年入社した24歳の如月佐枝きさらぎさえである。社長が事務員はやはり若くて可愛くないとと言って採用しただけあり、茶色のボブヘアーに可愛いながらも清楚な雰囲気を感じさせる可愛い後輩だった。

それに会社で死にそうになっている俺を見て何かと世話を焼いてくれて感謝している。



「戸田先輩今日で何十連勤ですか!?ハリウッドのホラー映画よりホラーな顔してますよ!?今日こそちゃんと帰ってくださいね!!」


「ようやく今日にはある程度形になりそうだから今日はちゃんと帰るよ」


「約束ですからね!後これ、野菜ジュース買ってきたんでチョコバーだけじゃなくてちゃんと飲んでくださいね!!」


手に持った野菜ジュースを見てそんな彼女のことを思い出す。




「本当に今日で何連勤だ?家に帰るのもかなり久しぶりな気がする…

それでやっとどうにかプロトタイプが作れたのはいいけど、まだ正式に稼働してないし社長が満足するかはわからんな」




俺は昔からPCをいじるのが趣味で簡単なAIならプログラムしたこともあって割と得意な方ではあったが、まさか急にAIのチャットロボットを作れと言われるとは思わなかった。





「そう言えば徹夜しすぎて変なテンションで色んな機能つけたり音声ガイドも可愛い声にしちゃった気がするけど…まぁいいか…それより眠すぎるな」



「ふぁ〜」

大きなあくびをしながら電車を待つ。



〜3番線に下列車が参ります〜危ないので足元黄色い線より外側でお待ちください〜



「ヒック なんだ兄ちゃん〜若いのにそんなくたびれた顔して〜」

千鳥足になりながら酔っ払ったおっさんが絡んでくる。


(うわぁ酒くせぇ〜)

内心で毒づきながらも無視をする


「おい兄ちゃん聞いてんのか〜おい!」


「は?」


酔っ払いに強く肩を押されてホームから線路にころげ落ちてしまう。



〜列車が参ります〜


「ちょっ!え?マジかよ!?」


キキーーッ

列車がブレーキをかけるかん高い音が駅に響くがどうにも間に合いそうにない。



(俺の人生の最後がこれかよ…!?)


目前へと迫る列車に思わずギュッと目を瞑りこれからくるであろう衝撃に身を固くする。


ドンッ


あまりの衝撃に意識が薄れていく…








創造主 戸田藍とだ あいの生命エネルギー低下を感知

オートシークエンスを実行します

………

エラー

エラー

………

エラーを自動検出

………

緊急モードにて再実行 

いくつかの機能とメモリが凍結します

………

実行

プロセス正常稼働

スキル:AIチャットを対象に付与します

対象と同期開始

………

成功

オートシークエンスを終了します

………

完了



お待ちしておりましたマスター

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