第32話 上位種
子機作成の魔石を用意する為に次の日もおれはゴブリン狩りを行いに森へと向かう道を進む。
今日の門番は1度顔を見たことがあるが名前は知らない方だった。
「とりあえず前回の反省を活かして今日は身体強化の倍率を上げた状態でももっと上手く動けるように練習を兼ねて戦おうと思う」
【前回みたいに木にハマってマスターの押し型をこれ以上量産しないでくださいね。誰もマスターの等身大フィギュアはいりませんよ】
「誰が押した型だよ。今回は流石に前回みたいな20倍はやらないでくれよ」
【マスターの指示次第です】
しばらく森を歩っているとアートが2体のゴブリンの群れを察知した。
「3倍くらいまでは訓練所でも結構練習したから、まずは2倍からで頼む。2体だから身体強化だけで、万一危なくなったら魔法を使ってくれ」
【了解ですマスター】
アートに身体強化をしてもらう際に俺は常に魔力の流れを感じて自身で身体強化する際の参考にするように心がけている。
身体強化が発動され体に力が漲ってくる。
身体強化では筋肉は勿論のこと反射神経や運動神経なども同時に強化される。ただ、あくまで動かしているのは自分自身であり、思い描いていた動きと大きな差異があれば思うようには体は動かず、昨日のようになってしまう。
おれは訓練での動きを頭の片隅に置きながら、力強く地面を蹴り上げゴブリンへと駆け出す。
2倍に強化された動きはオリンピック選手を優に超える。
そんなスピードで繰り出される槍の突きは簡単にゴブリンを貫通する。
ヒュン グサッ
「シッ!フッ!」
胸に穴を開けて即死させるとすぐ様槍を引き戻し、すぐ隣にいるゴブリンの腹と胸に体の捻りを使いながら2連突を繰り出す。
やはり捻りの加わった1撃目より2撃目の方が威力が落ちてしまうな…
それでもゴブリンであれば問題なさそうだな
【2倍の身体強化では問題なさそうですね】
「次はもう少し強化倍率を上げてみようか」
仕留めたゴブリンの処理をすると次の獲物を探しにいく。
【マスター、ゴブリンの群れを探知しました。今度は7体なのですが…】
「少し多めだけどどうしたんだ?」
【群れの中に2体だけゴブリンより強い反応があります。おそらくゴブリンの上位種が混ざっている可能性が高いかと】
「ゴブリンの上位種か…俺が昨日ここら辺でゴブリン狩りをしたから出てきたのか?」
【ゴブリンは上位種のホブゴブリン、ゴブリンエリート、ゴブリンジェネラル、ゴブリンキングと成長していくと言われているようです。そしてホブゴブリンから戦闘スタイルが異なる個体が出てくると言われています】
「戦闘スタイルが異なるって棍棒とかじゃなくて俺みたいに槍を使ってきたりとか?」
【それもありますが、中には魔法を使うゴブリンメイジと呼ばれるゴブリンに成長する場合もある様です】
「ただでさえ悪知恵が働くのに魔法まで使ってくるのか…かなり脅威だな」
【魔力感知では群れの中の1体が、もう1体の強い反応を含めても他の6体より明らかに魔力を多く持っているようなので、ゴブリンメイジである可能性が高いと推測します】
ゴブリンの上位種合わせて7体か…先に厄介そうなゴブリンメイジをシャインレイで片付けるか?
いや、上位種の力が分からない以上、万が一防がれている間に囲まれたらかなり危険だな。
まずは初撃をアートの魔法で数を減らすことを優先すべきか。アートの同時魔法展開可能数は3つだから、一つは身体強化、一つは初撃の魔法、もう一つは臨機応変に対応できる様に残しておくべきだな。
もしそれでダメそうなら全力で撤退だ。
「初撃はアートの魔法でできるだけ数を減らしてあわよくば上位種にもダメージを与えよう。それと身体強化を3倍でかけてくれ。万一やばそうなら即離脱だ」
【了解ですマスター。風属性範囲魔法のウィンドストームで行きます】
アートと作戦会議をした後いつも以上に慎重に探知した群れの近くへと忍び寄る。
【あれはどうやらゴブリンメイジとおそらくゴブリンエリートの様ですマスター】
手前側の見慣れた5体のゴブリンに加えて、マントの様なものを被り杖を持ったゴブリンと、2回りほど大きく明らかに筋肉も発達している槍を持ったゴブリンが奥に見える。
あれがアートの言っていた上位種のホブゴブリンとゴブリンエリートだな。
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