第31話 おじさんのうるうるは誰得ですか

感動の夕飯を終えて4人でまったりとしばらく過ごす。



【マスター。子機の件を皆さんに相談するのではなかったのですか?】


アートに言われておれは子機の事を相談しようとしていた事を思い出す。ヤミーターキーのせいで完全に頭から抜けていた。


「そうだった。実は魔石をスマホに取り込める事は以前話したかと思うんですが、取り込んでいたら新たな機能が使える様になりまして…

その機能が子機ってものなんですけど、これです」


おれは作成した子機をみんなに見せる。


「あら?これはアイダさんが持っているスマホとか言う板と同じ物ではないの?」


「俺が持っているのはこれで、これよりも少し小さいのが子機になります。アートによると使用者を登録できて、使用者の居場所を把握することができる機能と、チャット機能という遠く離れていても文字ですぐにやり取りできる様な機能がついてるみたいなんです」


「うむ!なんと!遠く離れた相手と即座にやり取りできるなんて、狩人ギルドのもつ通信水晶くらいだぞ!それに居場所もわかるとは…」


 「この世界にも通信水晶?といえ連絡手段があるんですね」


「ええ、一応あるにはあるけど消費魔力が膨大だから滅多なことでは使われないわね。その子機は魔力消費とかはどうなのかしら?」


「俺には起動できないので分からないですけど…

アート分かるか?」


【はい、子機も魔石を取り込むことができ、ゴブリンの魔石で1ヶ月ほどは持つと推測されます】


「俺のスマホが魔石一つで7日だからそれより長持ちなのか」


【マスターのスマホは私がいる事と、魔石の一部をマスターに還元している為子機より短くなっている様ですね】


「うむ。それだけの機能で1ヶ月に低級の魔石一つだけでいいとは殆ど負担はないも同然だな」



「それでアイダさんが相談したい事ってその子機の力のことなのかしら?」


「それもあるんですけど、できればこの子機を3人の誰かに使用して欲しいなって思いまして…」



「「「!!!」」」


「アイダさん、先ほど聞いた話だとその子機はいわゆるアーティファクトといって国によって保管されるようなレベルのものよ」


「それでも俺は皆さんにお世話になっていますし、前の世界には今のところ帰れないけど、この村は第二の故郷みたいなものだと感じているんです。こんな種族も違って怪しいのに皆さん暖かく迎えてくれて本当に感謝してます。今のところ魔石さえあればあと4つは作れるようなので異世界人であることも知っている3人には持っていて欲しいんです。何かあれば微力ながらすぐに駆けつけますので!」


「アイダさん…」

「「アイダ…」」


3人は目をうるうるさせてこちらを見てくる。

美女2人はいいが、ブライドさんのうるうるだけは遠慮願いたい。



「と言うことなのでぜひお願いします。まだ1つしか作れてないんですけど、どなたからにしますか?」


俺がそう聞くと、レイさんとブライドさんは2人でアイコンタクトをとると頷きあう。


「まずはリンからでお願いします」


「え!?あたし!?」

まさか自分が最初だとは思っていなかったリンは驚いてしまう。


「うむ、アイダと出会えたのもリンのおかげであるし、りんに持たせておけば万が一また居場所が分からない時に役に立つのである」


「もう!勝手に森に行ったのはこの前謝ったじゃん!」


「あらあら、うふふ」


リンがとばっちりだとばかりに騒ぐが2人は笑って受け流している。俺もそんな3人を見ていると自然と笑顔になる。




「それじゃあ早速登録してみますか。と言っても俺もよく分からないから、アート頼むよ」


【まったくまた私任せですかマスター】


「アートちゃんよろしくね!」


【分かりました。ではリン、魔力をその子機に流しながら右横についている出っ張っている所を長く押してください】


「分かった!やってみるね」



リンがアートの指示通りに魔力を流しながら電源ボタンを長押しする。すると電源が入り画面が明るくなる。そこには2つアプリが入っている。


「うわ!光った!」


【登録ができましたので、この子機はリンだけが使用できます。画面に2つの四角いものが写っていると思いますが、左側がチャットのできるアプリというもので、右側が現在地が分かるアプリになります。

現在地の表示は隠すこともできますが、デフォルトでは親機と子機、又は子機同士が互いに登録済みの場合だけ表示されます。】


日本から来た俺はアートの言っていることが分かるが、3人は少し難しい顔をしている。


「とりあえず使ってみようか!その左側の四角い所を触ってみてくれる?」

 

リンが恐る恐る画面をタッチする。


「そうしたら俺の名前が出てくるからそこをまた触ってみて」


リンの持つ子機にはアイダと表示されていた。やっぱりアイダ表示なのね…


「そこで文字を触っていって最後に送信って所を押すと俺の方に届くと思うよ」


アートの子機だけあって文字も本人使用に翻訳してくれているようだ。慣れない入力に四苦八苦しながらも打ち終わり送信できたようだ。


【ピコン】


久しぶりにこの通知音を聞いた気がする。

スマホを確認すると


{アイダいつもありがとう}

とメッセージに表示されていた。


俺はリンに返信を返す。


【ピコン】

今度はリンの持つ子機から通知音が鳴る。


{こちらこそありがとう。リン達に出会えて幸せだよ}


無事返信が届いたようでリンが満面の笑みで見てくる。

この世界に来て初めて出会えたのがこの3人で、そしてマーラさんやルークさん、ガンテツさんなどこのフォクス村に来れたのは本当に幸運だったと改めて感じた。

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