第33話 ゴブリンでもエリートはエリート
「作戦通り行くぞアート」
【了解ですマスター。身体強化】
アートが3倍の身体強化を発動してくれる。訓練のおかげで3倍までは体にも甚大なほどの負担なく、魔力消費も身体強化だけであれば連続で20分以上は発動することができる様になっている。
【ウィンドストーム】
ゴブリン達の手前3mほどに突如15mほどの竜巻が現れる。竜巻はゴブリンの方へと進んでいきその暴力的な風の中にゴブリン達を引き込もうとしていく。強烈な風速に耐えきれず1番手前にいたゴブリンが持ち上げられ渦の中に取り込まれる。
ウィンドストームはその次またその次とゴブリン達を飲み込んでいく。
「グギャァァア」
飲み込まれたゴブリンは竜巻の中で無数の小さなウィンドカッターに体を切られ傷ついていく。必死に抜け出そうともがいている様だが、暴風の中からは抜け出せない。
やがて、ゴブリンの群れを飲み込んだウィンドストームはその発動を終え竜巻が掻き消える。
「やったか…?」
【それはフラグですマスター。魔力感知に上位種2体の反応健在です】
土埃が収まると身体中を刻まれ切り傷だらけで動かなくなった5体のゴブリンと、先ほどまではなかった土で出来たドームが出来ているのが見えてくる。
するとドームはパラパラと崩れ落ち無傷な2体の上位種が現れる。
【ゴブリンメイジに土属性魔法で防がれた様ですね】
「さすが上位種ってところか…」
ゴブリンメイジが自分だけじゃなくてゴブリンエリートも魔法で守るとは知能も上がっているようだな。
「グギャキャキャ」
「グギギギィ」
2体のゴブリンは仲間のゴブリンが5体やられたにもかかわらず全く気にしていないどころか、こちらを狩ることしか考えていない様な雰囲気だ。あの小バカにしたような態度と残虐性は相変わらずか。
「俺は槍で近接するからアートは援護をしてくれ】
【了解です。ゴブリンメイジからの攻撃は私に任せてくださいマスター】
「頼りにしてるよ相棒」
俺は槍を構え上位種ゴブリン達に向かって駆け出す。ゴブリンエリートはゴブリンメイジを庇うかの様に背にしながら同じくこちらに向かってくる。そのスピードは強化されている俺よりも早い。
「フッ!」「ギャッ」
キーン
俺は斜め上から槍を薙ぎ払うが相手の槍で受け止められ金属同士がぶつかるかん高い音が鳴り響く。
どうやら力も相手の方が強いようでジリジリと押し込まれていく。
このまま力比べでは押し切られてしまうと分かった俺は、一度距離を取る為に離れる。
しかし、ゴブリンエリートは戦い慣れているのかすぐに距離を詰めて突きを放ってくる。
「くっ…」
突きは点での攻撃である為、槍でガードするのが難しく避けるか逸らすのが基本だが、相手の方が早いとなるとそれも格段に難しくなる。
ブライドさんとの訓練のおかげでなんとか直撃はしないように捌けているが、突きの度に体に切り傷が増えていく。このままじゃジリ貧だ…
ゴブリンエリートの攻撃を捌きつつ俺はなんとか隙をついて先ほどと同じく、斜め上からの振り下ろしを行う。
キーン
2度目であることもあり当然の様に槍で受け止められてしまう。
だが、今度は下がらずにそのまま力を込めて押し込む…が、やはりゴブリンエリートの方が力が強く逆に少しずつ押し込まれてしまう。
「グキャキャ」
ゴブリンエリートは自分が有利だと悟って笑い声をあげる。
俺の地獄の訓練を舐めるなよ…!!
俺は拮抗した鍔迫り合いから一瞬だけわざと力を緩める。互いの力で釣り合っていた力の均衡が予期せず一瞬だけ傾く事でゴブリンエリートの体勢が崩れる。
「グキャ?」
相手の崩れた体勢によって生じる力の流れを遮る事なく利用し、そのまま相手の槍を弾き飛ばす。
ほんの一瞬の出来事だが、油断した隙をついて一気に形勢逆転した。
ゴブリンエリートは槍を手放してしまい胴体がガラ空きだ。
「隙だらけだぞ…!」
「グギャァ…」
ゴブリンエリートも咄嗟に身を捻り交わそうとするが完全にはかわせず脇腹を俺の槍が貫いた。
ゴブリンエリートはたまらず腕を振り回し反撃をしてくる。
俺は当たらぬように槍を引き戻し数歩後ろに下がる。
俺は無手のゴブリンエリートへと追撃を仕掛けようと槍を引き絞り、突きを放つ為に大きく踏み込みトドメを刺そうとする。
するとピンチのはずのゴブリンエリートが
「グギギィ」
と声をあげてニヤリとした顔で声を上げる。
嫌な予感がして咄嗟に周りを見ると離れた位置にいるゴブリンメイジの周りに無数の石の礫が浮かんでいるのが見える。
どうやら離れた位置から俺の隙をを狙っていた様だ。
ゴブリンメイジは杖をこちらに向けて石礫を全て飛ばしてくる…
パンパンパンパン
石礫がぶつかる音が響く…
それと同時にゴブリンエリートは笑い声を上げる
「グキャキャキャ」
「わるいな、おれは1人じゃないんだわ」
俺の斜め前には水でできた盾が浮かんでいる。全ての石礫を水の盾は飲み込みガードしていた。
俺は勝利を確信して隙だらけのゴブリンエリートへと渾身の突きを放つ。
「カヒュッ」
首元へとぽっかりと穴を開けたゴブリンエリートは崩れ落ちる。
1体片付けたがまだ戦いは終わっていない。
俺はそのままゴブリンメイジの方へと駆け出しどんどん距離を詰める。その間にもゴブリンメイジは先ほどの石礫を飛ばしてくる。
【ウォーターシールド】
たが、全てアートの発動した水の盾によって防がれ俺には石のかけら程も届いていない。さすが頼れる相棒だ。
強化されたおれはあっという間に槍の間合いまで詰め寄ると横から槍を薙ぎ払いゴブリンメイジを切り裂く。
魔法タイプなだけあって接近戦は弱いみたいだな。
「ふぅ…さすがにかなり疲れたな…残り魔力はどれくらい?」
【残り3割と言ったところですマスター】
「魔石を取り出したら少し休もう」
俺はアートにヒーリングで回復をしてもらった後、倒したゴブリン達から魔石を取り出していく。
ゴブリンの上位種達の魔石はゴブリンよりも少し大きく赤みが強い色合いをしていた。上位種なだけあって魔石の質もゴブリンより高いようだ。
ゴブリンメイジが使っていた杖と、ゴブリンエリートから取り上げた槍も回収して魔物の居ないエリアまで移動し休憩する。
「ゴブリンメイジがこの杖を使ってたけど杖を使うとやっぱり魔法が強くなったりするのかな?レイさんとかは杖とか使ってないみたいだけど」
【杖には魔力操作を補助する機能があるそうですよ。だからレイのように魔力操作が得意な者には基本的に必要ありません。ただ、杖の中には一定の魔法を刻んで誰でも使えるようにしたものや、アーティファクトと呼ばれる杖にでは魔法の威力を増幅するような杖もあると本に記載がありました】
「魔法を増幅するアーティファクトか!!それがあれば俺もメ○ゾーマではないメ○が実現できる…!!」
【マスターには火属性の適性は無いですよ。
最も、適正なあるマスターの光属性魔法(笑)では増幅したところで光属性魔法(微笑)程度ですよ】
アーティファクトを持ってしても無理なのか…!?
そんな無駄な会話をしながら移動中に確保したリンゴを齧る。少し酸っぱいが動いた後の体にちょうどいい。
ちなみにこのリンゴは俺がえっちらおっちら木によじ登って後少しで届きそうな時に、アートが水属性魔法のウォーターウィプ…簡単に言うと水の鞭で採ってくれた。
絶対に俺が木に登るよりもっと早く採れたよね…?アートさん?
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