第6話 未知の反応
【マスター朝ですよ。起きてください】
「ふぁ〜地面の上だと固くてあんまり寝た気がしないな…
それでも会社の床で気絶して救急車呼ばれかけてた時よりマシだと思えるのが社畜過ぎるな…」
藍のデスマーチにより鍛えられた精神は伊達ではないようだ。
「アート夜の見張りありがとうな」
【私は寝る必要が無いので問題ないです。
それに魔石から魔力を抽出解析できたおかげでスマホの充電も魔力によってできる様になりましたので】
「そういえば元から数日は待つスマホだったから忘れてだけど、魔力で充電できる様になっていたのか…魔石一つでどれくらい持ちそうなの?」
【今の所、先ほどのゴブリンの魔石であれば1週間くらいは持つかと】
「なるほど、了解した。アートの充電が切れたら詰む未来が見えるから気をつけないとだな」
【マスターは私がいないとダメなんですからお願いしますよ】
「それじゃあ今度こそ人里目指して今度はもっと川の下流の方に進んでみるか
それに昨日折れたツノの槍も治しとかなきゃな」
そう言うと体の土埃などを手で落とし、ちょうど良い枝を見つけ昨日と同様にツノを先端にくくりつけ槍の様に固定する。
「よし!いくか」
【はいマスター】
しばらく川の下流に向かって進んでいくと突然アートから伝えられる。
【マスターこの先に生物の反応が4つあります】
「昨日のゴブリンの群れか?」
【どうやら3つの反応は昨日と同じ様ですが、もう一つはもう少し大きい反応です。大きさ的にはマスターより少し小さいくらいです。
それにどうやらゴブリンに囲まれている様です】
「ゴブリンに囲まれる?魔物同士が戦っているのか?
あ、もしかしたら人間か!?」
「行くぞ!アート!
人間に会えるかもしれない!」
【警戒は怠らない様にして下さいマスター】
昨日が空振りに終わり、異世界に来て初めての魔物以外との遭遇の可能性に期待を募らせ、反応のあった方へと急いで向かっていく。
【もうすぐ視認範囲に入ると思われます】
アートの言葉を受け、駆け足から忍足へとスピードダウンさせ息を殺し、木々の隙間から様子を伺ってみる。
「あれは…ゴブリン3体と狐耳と尻尾をつけた女の子…?」
藍はちょうどゴブリン3体と狐耳の女の子の真横から隠れ見ている形だ。狐耳の女の子はナイフを右手に持ちゴブリンに向かい合っているが、数が不利でありふいを疲れない様に警戒している様だ。
よく見ると狐の様な耳はピンっと立っているものの、音のする方へとピクピク反応し、尻尾は揺ら揺らと不自然に揺れ作り物ではない事が見て分かる。
「ケモミミか!!」
「!!」
「「「ギャい?」」」
「あ…」
【はぁ……バカマスター…】
異世界の題名氏でもあるケモミミの女の子につい興奮して、叫んでしまった。
せっかく隠れているのに叫ぶ事でゴブリン共に存在がバレて、警戒されてしまう。
更には狐耳の女の子からも不審げな瞳を向けられ居た堪れない気持ちになる。
そして、アートからは深いため息と呆れた声が聞こえてくる。
「え、え〜と、まずはみなさん落ち着いてこ、こは穏便に皆んなで話し合いを…」
社畜時代に培った営業スマイルと能力を活かしコミュニケーションを図ろうとするも…
「「グギャギャ」」
狐耳の女の子よりも体格の大きい藍の方が脅威だと判断したのか 、3体いたゴブリンのうち2体が藍の方を向き棍棒を向けて威嚇してくる。
「で、ですよね〜」
ゴブリンに向け自作の槍を構え対峙すると、狐耳の女の子もようやく敵ではないと言う事が伝わり警戒心をゴブリンの方へと集中させている様だ。
「&¥;.?&@;-,)&&&;..—/)!!」
狐耳の女の子がこちらに向かって何か叫んでいるが何を言っているのか理解できない。
「すまん!もう一度言ってくれ!」
しかしこちらの言葉も伝わっていないのか、返事はなく、代わりに尻尾をピンと立て集中している様子だ。
おもむろにナイフを持っていない左手をゴブリンに向けると、バスケットボールほどの青い炎の球が右手の前から出現し、ゴブリンに向かって飛んでいく。
ボンッ
「グァギャァア」
ボンッと言う小さい爆発音と共にゴブリンを吹き飛ばした後、青い炎がゴブリンにまとわりつき、火の勢いを増してその全身を包み込んでいく。
ゴブリンは必死に手で振り払おうとするも火の勢いは増すばかりで、次第に燃えて動かなくなった。
「今のは魔法!?
やっぱりあるのか!!」
【マスター!よそ見しないでください!火で動揺している今がチャンスですよ!】
「今すぐ根掘り葉掘り聞きたいところだが、アートの言う通りだな」
「ふっセイ!」
突然の火で仲間がやられて混乱している隙に、駆け寄りながりゴブリンに向けて槍を突き放つ。
普段なら避けられていた槍も昨日の教訓から隙をつけばゴブリン相手でも通じる事がわかっている。
「グギャい…」
槍はゴブリンの首元に当たり即死した様だ。
残されたゴブリンは2体いた仲間がやられて1体になってしまい、後退りしている。
その隙を狐耳の女の子は見逃さず、素早い動きでジグザグに動いて的を絞らせない様にゴブリンを翻弄しながら、右手に構えたナイフを急所の心臓へと走せる。
「ギャァ」
ゴブリンは数歩後ろに下がりながらうつ伏せに倒れ動かなくなる。
「@);:(&(::)¥):¥&@??」
狐耳の女の子はピンと立てていた尻尾を下ろしてこちらに向かって歩きながら話しかけてくるが、やはり何を言っているのかよく分からない。敵だとは思われていない様子なのが幸いだ。
【マスター!!】
「あぁ!」
俺は槍を構え直すと女の子の方に向かって駆け出し、槍を引き寄せ突きの体制をとる。
「&¥)/:!!」
何を言っているのか分からないが、こちらのまさかの行動にびっくりしてナイフを構えようとする。
しかし、スピードに乗っている俺の方がナイフを構える女の子よりも速い。そしてそのスピードを乗せたまま思いっきり槍を突き放つ。
狐耳の女の子は間に合わないと悟ったのか目を瞑り体を硬くする。
「グギャァア」
そう、今にも女の子を背後から襲おうとしている緑色の存在に向かって…
槍はゴブリンの胴体を穿ち一眼で致命傷と分かる傷を与え、今度こそ確実に絶命した。
「ふぅ〜なんとか間に合ったみたいで良かった…
急にびっくりさせてごめんね。でも本当にギリギリだったからさ」
【マスター。おそらく話しかけても言葉が通じないかと】
「あ…そうだった。こっちも何言ってるのかよく分からないんだった」
【それにしてもマスター。マスターにしてはよく直ぐに反応できましたね】
「昨日散々コイツらの狡猾さを身をもって体験したばかりだからな。流石に同じ轍を踏むわけにはいかないよ」
【私のマスターなのですから当然です。ナヨナヨ引きこもりマスター。
「おぉ、若干グレードアップ?したな」
狐耳の女の子は来るはずだった衝撃がいつまで経っても来ないどころか、ゴブリンの声の後に何やらこちらに向かって話しかけている様な声や会話の様な声をを聞いて恐る恐る目を開け後ろを振り返る。
すると先ほど自分が胸を刺してトドメを刺したはずのゴブリンの姿がなく、代わりに槍に突き刺されたゴブリンを見て背後から襲われそうになっていたところを目の前の男に助けられたのだと把握した。
「&;:?,&):(¥&&(;:/!(:¥¥:.?&&)::://.」
女の子はお礼でも言っているのかお辞儀をしながら再度こちらに話しかけてくれるが、首を傾げている藍をみて言葉が通じていないことを悟った。
「:(¥(.リン(¥¥,,&”」
その後女の子は自分のことを指差しながら同じ言葉を藍に向かって繰り返す。
【彼女名前はリンという様ですね】
「俺の名前は あ い だ」
俺も自分のことを指差し繰り返し、今度は女の子のことを指差しリンと呼ぶ。すると相手も理解してくれたのか
「;¥!,)アイダ!」とこちらを指差して呼んでくる。
【完全にマスターの名前アイダだと思われていますね!ぷぷぷ】
「はぁ…まぁいいか…」
嬉しそうにアイダ!と呼びながら笑顔を向けられると多少名前が違っていても気にならなくなってくる。
「&()/!?!.&((),&/)?&&.)):アイダ!」
【私についてこいと言っているみたいですよマスター】
素早く3体のゴブリンから魔石を取り出したリンはその二つを俺に手渡してから、今度は身振り手振りで俺の名前を呼びながらついてくる様に手招きしている。
特に行くあてもない俺はリンについて行くことにした。
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