第36話 お巡りさんここにもチートがいます

レイさんとブライドさんはそれぞれ村のみんなと衛兵に伝えに行き色々と話し合うとの事だ。


俺は裏庭で体を拭いて部屋で一度休息をとらせてもらう。


森での狩の成果である魔石をスマホに取り込む。今日の狩だけでゴブリンの魔石27個、ホブゴブリンの魔石4個、ゴブリンエリートの魔石1つを手に入れられた。

そして今の俺のステータスがこれだ。



name:アイダ(戸田藍)

職業:"アート"のマスター

HP:59 /59 (10up)

魔力:235/314 (33up)

筋力:32 (9up)

器用:40 (9up)

スキル:"アート" 子機1/4 (作成可能1)


魔石からはそれぞれ9上昇し、久々にゴブリンエリートとの戦闘でダメージを受けた為HPも今回は上昇しているようだ。

魔力はいつも通りだな。


アートの新しい機能が開放されるかと期待したが特に何も新しいメッセージは来なかった。少しでも今は戦力を上げられるなら上げておきたい。



魔石を取り込んだおかげで子機も追加で作成ができる様になっている。アートに子機を作成してもらうと1つ目と全く同じ小さめのスマホが出てきた。

とりあえず後で3人に相談しよう。


おれはレイさんとブライドさんが帰ってくるまで身体強化の訓練をすることにした。

ゴブリンエリートとの戦闘では3倍の強化をしたにも関わらず、相手の方が身体能力が高かった。

もっと上の倍率にも体を馴染ませておかないとな。



「アート5倍の身体強化を頼む」


【了解ですマスター】


急に軽くなった体を、槍を振ってその動きとイメージのずれを修正していく。


ヒュン、ブゥォン、ブゥォン


5倍まで強化すると以前見させて頂いたブライドさんの槍の動きにスピードだけはかなり近い気がする。


そう考えると素の状態で今の俺の5倍だとすると筋力のステータス160相当くらいだと予想できる。それに身体強化が加わればとんでも無いことになるな…

お巡りさん。ここにもチート野郎がいました。


5倍の身体強化を解くと手足がガクガクと震えてしまう。3倍であればかなりの疲労感を感じるものの動けなくなるほどでは無くなったが、やはり倍率を上げるほど体への負担も跳ね上がってしまうようだ。



アートがヒーリングをかけてくれ少し楽になるがヒーリング1回では完全に回復はしない。それでも動ける様にはなったので魔力が回復するまで槍の訓練をして少しでも時間を無駄にしない。魔力が回復すれば身体強化の倍率をさらに上げで動きを体に覚え込ませていく。



「ハァ…ハァ…」

もう動けない…身体中の筋肉が軋み悲鳴を上げている。

身体強化10倍の倍率を最後に試してみたが、魔力がギリギリになりアートが解除した途端その場で崩れ落ち大の字になったまま動けなくなってしまった。



【5倍の身体強化で1分に魔力消費30、10倍で1分に150程でしたマスター。現時点では魔力が満タンでも5倍で10分、10倍で2分しか持ちません】


その後動けなくなることを考えるとヒーリングの分の魔力を残しておきたい。そうすれば使える時間はもっと少なくなってしまうな…


動けず、ヒーリングをかけてもらう魔力も残っていない為魔力が回復するまで空を見上げながら考える。

空はもう夕焼けを通り越して暗くなり始めていた。




「ただいま〜!あれ?誰もいないの??」

リンが帰ってきた様だ。


いつもならリンが訓練所から帰ってくる頃には俺とレイさんの2人はもうすでに家にいることがほとんどだ。


「いないの〜?」

声が裏庭の方に近づいてくる。


「リン〜おかえり〜」


俺は動けない為寝そべったまま声をかける。


「あ、アイダ裏庭にいるんだ!」


ガチャ


俺の声に反応してリンが裏庭へと続く家の扉を開けてこちらに向かってくる。


「ただいま〜…?アイダ寝っ転がって何してんの?」


【マスターは地面を這いつくばるのが趣味なんです】


「そんな訳あるか!」


俺はリンに身体強化をした反動で動けず、ヒーリングの為の魔力回復待ちをしてることを伝える。


「なんだ〜それなら早く言ってくれればいいのに!」


「えい!ヒーリング!」


「あれ?まだ動けない?ヒーリング!ヒーリング!ヒーリング!ヒーリング!」


「あ、ありがとうリン。助かったよ」


リンのヒーリングの連打によってなんとか立ち上がれる様になった。まだ体中は軋むしふらつくが、男のちっぽけなプライドでもう大丈夫だとリンに伝える。リンも訓練の後で疲れてるはずだしな。


「よかった〜おばあちゃんには遠く及ばないけど、私も光属性魔法使えるからいつでも言ってね!」


「リンの属性は火と光だっけ?」


「うん!そうだよ〜火の方が適性は高いんだけどね」


火属性は属性魔法の中でも攻撃力随一だ。正直羨ましい…



リンと話をしているとレイさんが帰ってきたようだ。俺たちはレイさんを迎えに家の中へと入る。


ちなみに、俺の小さな意地張りに気づいていたアートが後でこっそりヒーリングを追加でかけてくれた。余計なこと喋らなければ本当に有能過ぎるんだよな…


【何か?】


い、いえ何も…

心を読まないで下さい。




皆んなでご飯の支度をしているとブライドさんも衛兵との話し合いが済んだようでこちらに顔を出してくれた。

時間があまり無かったので簡単なサラダとスープにパンを準備して皆んなで食べる。


「リンは知らないかも知れないけど、森の中にゴブリンの村ができてしまったのよ。それでさっきまで私とブライドさんは村の大人達と話し合ってきたのよ」


「ゴブリンの村…大丈夫なの?」


「ええ。心配はいらないわ。獣王国家レグナントのハンターギルドにも助力の依頼を出しに足の速いアリマさんとハリマさんに行ってもらったしね」


「うむ。既に衛兵の見回りの強化と討伐の為に隊を編成してきたところだ。リン達は心配せんでいいが、子供達は特に森には行ってはならんぞ」


「うん。それは分かっているよ」


どうやらリン達子供にはゴブリンの村のことは伝えるがゴブリンキングがいる事は伝えないようだ。



食事が終わりリンが部屋を出た後に3人で改めて話す。



「さっきレイさんがハンターギルドに依頼を出しに行ったと言ってましたけど、どれくらいで来てくれそうなんですか?」


「ここから森を抜けてレグナントまで行くのに2人でも急いでも4日はかかるわね。そこから依頼を出して受けてくれる人を探す時間とこちらまでくる時間を考えると早くても10日はかかるわね」


「うむ。ゴブリン村の討伐に行くのはギルドからの援軍が到着してからで、ハンター・衛兵と合同で攻める予定だ」


「分かりました。10日ですね…。その間俺は少しでも減らせる様にゴブリンを狩っていきますね」


「アイダさん無理はしないでちょうだいね」


「うむ。気をつけるのだぞ」



「あ、そうだ。子機が追加で1つ作成できたので渡しておきますね。何かあれば連絡します」


3人で話し合った結果、何かあった際にすぐに連絡できる様にレイさんが持つこととなった。

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