エピローグ

42話 打ち上げ

 これは夏休みに入るまでの物語


 澄み渡る快晴の朝、一人の男が静かに病院の前に佇んでいた。数秒前まで


「フハハハハハハ!!絶好調!絶好調!絶好調!何故かって?今日が退院日だからさ!フハハハハハハハ!!!」


 ジフ・ベルクが来て、なんやかんやあって入院から2週間!俺は退院する事が出来た!


 高笑いしてると、黒色のいかにも金持ちが乗ってる高級車が止まった。けど、俺はあらかじめ連絡が来ているので驚く事はない。何の連絡かと言うと


「隼人くん!隼人くん、もう皆んな着いてるよ」


「そうか、なら行こう。レッツパーリーへ!!」


 打ち上げのお誘いだ!



 ◆



 今回、いつメンの5人に加え西園寺、謎の外国人美人、親衛隊隊長達や黒服達が招待されているそうだ。


 で、だ。この打ち上げの主催者は西園寺本人だ。つまり


「え………マジここでやるの!?」


 超豪華ホテルでやる事になった!俺はスマホ片手にそのホテルに何があるか調べる。プールや温泉は当たり前としてカラオケ、ビリヤード、ダーツ、バー、し、し、しかも!


「カジノまであるのか!?」


 す、すげぇ。西園寺が金持ちとは知ってたけど、ここまでとは………


「隼人くん、今日は貸し切りだよ。だからって、もう行ってる………」


 俺はわけもふらずに走り出す。ああ、これはあの感覚だ。少年時代、初めてイオンに行った時………おい、田舎者とか言うんじゃねぇ。森で暮らしてただけだ。


 よっし、スマホの地図を見るとここがカジノだな!


「いざオープン・ザ・ドア!」


 そこには裸になって倒れてる大和と服が引き裂かれている颯太がいた。颯太は俺をみて一言


「……ケテ……タスケテ……」


 俺はそっと扉を閉じた。よし、カジノは無しだな。なに凹む事はない。娯楽施設はまだまだ沢山ある切り替えて行こう。


「しても、どこにするか」


 先ほど見た選択肢以外にも知らない娯楽がまだまだあるのだ。アーケードゲームルームって何だ?知らないのは後回しでいっか。あ、


「バーにしよう」


 実は俺には少し憧れがあるのだ。通い慣れたバーに行き、店でマスターに一言


『マスターいつもの』


 元ネタは全く知らんが、とりあえずかっこいいのでやってみたい。


 そういった思いで俺はバーに入る。どうやら一人先客がいるようだ。……美月やん。


 まぁいい。俺は気にせず美月の席から一つ空けて座った。マスターはそれに気付き、ダンディな声で注文を聞く。


「ご注文は?」


 俺はクールに装い一言


「マスターいつもの」


 たー、たー、たったーたん。た、た、た、たー、たー、たーたん。た、た、た、たー、たー、たー、たん、たー、たー、たー、たったー


 大満足!俺のいくつかある、やりたい事リストの一つが埋まった。


「太陽の果実から絞り出したフレッシュネクターですね」


 マスターそのまま、よく分からんもの入れシェイカーをシャカシャカ振り出しだ。フッ、何作ってんだコイツ?


 マスターは振ったシェイカーをそのまま机に置いて、コップに氷を入れ冷蔵庫からオレンジジュースを注いだ。


 それがそのまま俺のカウンターに置かれる…

 ……今まで何を振ってたの?


「………今まで何を振ってたの?」


 どうやら俺と同じ疑問を持つ奴が隣にいたようだ。美月やん。俺は再びクールに装い、言う。


「フッ、分からなかったのかいお嬢さん」


 俺も分からんけど。


 美月が「うぇ」って顔してるがそのまま続ける。


「マスター彼女にも同じのを」


「わかりました」


「いや、いらないわよ!」


「安心しろ俺の奢りだ」


「ここの代金は全部お嬢様持ちよ!」


 マジかよ西園寺ありがとう。けど遠慮する気はないよ。


「フッ、面白え女」


 俺がそう言うのと同時に美月のカウンターにオレンジジュースが置かれる。俺はタイミングを見計らって美月が俺を見ると同時に。


「✨✨君の瞳に乾杯✨✨」


 決まった!もう、完璧すぎる!!もうバーでやりたい事ねぇわ。次行こ。俺はそのままオレンジジュースを飲み干し颯爽と去っていった。



 ◆



「なんだったの………」


 私、美月は先程去った男を思い出し溜め息をつく。


 お嬢様が惚れた男で、実際にお嬢様を救い出した人物。彼が居なければお嬢様はジフ・ベルクに取られ、西園寺家はお嬢様の兄君に取られていただろう。


「本当に不思議……理解不能?破天荒?」


 とりあえず、よく分からない人。


「おや、美月ちゃんもあの男にご執心ですかな」


 酒場のマスター、いえ、お嬢様を護衛する黒服、護衛官の一人ヴィクター。代々西園寺家のに仕える最強の護衛官。

 この度、お嬢様が当主になった事により私達の元に配属された。


「バカ言わないで。誰があんな奴の事を」


 そして殆どの護衛官の指導を任されていた人だった。私も例にも漏れずヴィクターの元教え子だ。


「ハッハハ、若い事は素敵ですね。老骨の戯言ですが、素直にならいと一生後悔しますぞ」


「だから誰が!」「………美月?」


 私の背筋が一瞬で凍り付く。私は振り返る事が出来ない。それはヴィクターも同じであった。………アンタはビビらないでよ。


「少しお話しよっか」


 そう言って、ヤンデレオーラを纏ったお嬢様が隣に座った。


 ………私死ぬかも





 あとがき


 なんかヤンデレお嬢様の息抜きで作ったノリ小説が以外に伸びてる………。

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