38話 結着
俺は基本的に争いは苦手だ。争いが有れば巻き込まれないように行動するし、巻き込まれたら仕方なく迎撃か解決するだけで、自分から争いを起こそうとは思わない。
「………フハ………フハハハハハ!!!!」
今のこの状況だって、出来ればさっさと逃げ出したい。殆ど絶望的状況、右腕骨折、右脚貫通銃創なボロボロな身体で勝てるのか?
――なぁ、俺
俺は自分にそう問いかけた。二重人格でも自問自答でもない。これは、ずっと俺にあったもの、ただ今の俺が不要と感じ、封印したもの。
――生物に備わっている闘争本能
俺の最後の切り札
◆
旧校舎の屋上に隼人の高笑いが響く
「フハハハハハハハ!!!!」
「穂乃果を取られておかしくなったのか?」
※いつも通りです。
「見ていられない。彼が哀れです」
「あんなものに哀れみを示すなんて」「ジフ様素敵!」「フッ、流石は私のジフだわ」「ジフ様カッコいい!!」
ジフは当然の賞賛を耳にし、命令を下す
「さっさと終わらせってやってください」
これでようやく全てが終わる。
「じゃあ、私がいくねー!」
ミアはそう言って、速水隼人にスタンロッドを振り落としした。
――ガン!!!
鈍い音が鳴り響く。
さて、想像以上に手間がかかったが、終わりましたね。帰るとしますか。
そう僕が背を向けた瞬間
「ぎゃあああああああああ!!!!!!」
ジフは聞くはずの無い悲鳴を耳にする。慌てて振り返り状況を渡すとミアの腕が………噛み砕かれていました。
ありえない、パワードスーツには勿論最新の技術が施されていて普通のナイフや銃弾でも傷一つつかない代物だ!?
「本気で噛んでも引きちぎれない硬さ………いいね手加減しなくて済むわ」
隼人が喋った事により、ミアは一旦引き下がる。けれど、とても戦える状況では無かった。右腕が前腕の真ん中からあらぬ方向に曲がっている。そしてミア本人が恐怖に飲まれてしまっていた。
いけませんね
「やはりラスボスはこうでは無くては面白くない」
「ジフ…様」
「ミアはもう下がって穂乃果を預ってください。メイリン、サラ、エヴァ、安心してください。僕がいるんですよ」
その掛け声によって、恐怖に飲まれていた彼女達の緊張がほぐれた。
声をかけた。たったそれだけで人の心を操る圧倒的カリスマ、それが奴の力であり強さ、誰も彼もが彼に頭を下げ、敵対するものはいない。
天上天下唯我独尊を我が道で行く男、ジフ・ベルク
これで士気は取り戻しました。いくら彼が超人染みた人間であってもその怪我では結果は変わりません。さっきのは油断が生んだまぐれ。
今度こそ終わらせます。
「メイリン、危険な役ですが彼を止めてください。頼みますよ」
「は、はい!♡」
「僕達は遠距離から攻撃を仕掛けます。皆んな勝とう!」
「「はい」」
その掛け声と同時にメイリンが突撃し、それに合わせて麻酔銃が撃ち込まれる。完璧な連携である。
隼人は四足歩行でメイリンに向かって駆け出した。
メイリンは中国の武術家だ。だから武術をやっていないただの素人の動きは、たとえ変な動きだとしても見切れる。
――捉えた!
メイリンが隼人の左腕を取り関節技を決め込んだ。それと同時に何本もの麻酔銃が撃ち込まれる。
やった!けれど油断はしない完全に気絶するまで力は抜かないわ。
そんな慎重メイリンだったが、………隼人右腕ストレートを顎に打ち込まれ倒れた。
「「え?」」
一瞬の事だった。間接を決められた左腕の全部の関節を外し、可動域を確保したのち折れている右腕での打撃。
その後麻酔弾を打ち込まれたにも関わらず立ち上がり、関節外した左腕は力を込めることによって元に戻した。
「に、人間じゃない」
「僕が前に」
いくらカリスマがあろうと。それを発揮される前に攻撃が始まれば意味が無い。
「え?」
エヴァは一瞬で隼人が自分の所まで来たの事に反応が遅れ咄嗟に顔を守る。正しい行動である。顔以外は全てパワードスーツに身を守られているからだ。だが、
「カッ、ハァ!?」
それはあくまで銃弾や切り傷に強い素材で、身軽さを売りにしているパワードスーツ。衝撃吸収する程の厚さや素材はそこまでである。
だから、リミッターを解除し隼人の骨が折れるほどパンチを吸収しきれなかった。
エヴァは大ダメージを負い、顔への防御が疎かになった所で、隼人に顎を打ち込まれ気絶した。
「あ、あ、あ」
「サラ大丈夫だ!僕がいる!」
いくらカリスマがあろうと、一瞬にして戦力が半分になった恐怖を覆すのは難しく。
――パン
「え?」
麻酔銃を奪った隼人に先手を譲る羽目になった。
サラはそのまま倒れ込んだ。
◆
あー、あ、身体中が痛え。急に敵に迫った時に脚の筋肉何本か切れてるだろコレ。両腕骨折したし最悪。右脚はもう、血ドバドバよ。
――殺せ
あーあ、今まで抑えてたぶん。歯止めが難しい。いつも思うけど俺の中のお前何?闘争本能って呼んでるけど、マジで二重人格とかじゃ無いよな。
――殺せ殺せ殺せ
この状態で気絶しないし力が湧き出るのもお前のおかげだけどもっとこう?怖い所無くせん?
――殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!
「ジフ・ベルク」
「僕を敵に回すのかい?よく考えるんだ。君の友人家族が無事で居られると思うのか?」
家頼りかよコイツ?小物じゃねぇーか。しかし、友人はともかく家族にまで迷惑がかかるのは嫌だな。ならどうするか。
今は法も機能してない。多分コイツの手によるもの。いくらコイツでもこの事が公になったらただでは済まないのだろう。
つまりここで何があっても公にならない言う訳か。
――殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
俺は目を閉じ思案する
ハイ、という訳でやってまいりましたいつもの恒例、理性vs闘争本能のお時間です。今の所、闘争本能は全敗ですが今回の試合どう思われますか隼人解説。
えーと、そうですね隼人実況。今回は少し闘争本能に分がありますね。今回、隼人はめちゃくちゃ傷を負ったり理不尽な目に何度かあってますからね。チリツモで闘争本能が勝つかもしれません。
そうですか。では実際に見てみましょう。レディーファイト!!
――カーン
理性vs闘争本能
闘争本能_:( _* ́ཫ`):_ 理性💪( ‘ᾥ’ 💪)
Win 理性💪( ˙ω˙ )💪
「というわけで殺さずボーン!!」
俺はそのまま、ジフ・ベルクの顔面に蹴り入れて気絶させた。
いや、理性勝ったのに蹴ったの!?でもそれが俺だ。自分でツッコムスタイル。
ん?家族は大丈夫かって?………知ってるか?明日の事は明日心配すればいいんだぜ。という訳で今日の俺は知らん。シリアスも終わり疲れた。ほんと疲れた。
「ジフ様!よくも貴様!」
――パン
西園寺を預けられた奴がもう一人いたので撃った。
よし、これで本当に終わり。
あとがき
三人称視点と一人称視点を両方入れるのに挑戦しました渡辺です。
闘争本能の具体的な説明ですが、全体的なバフがかかります。怒りを溜めないと発動しないリミッター解除状態が常に発動し、手足がもげても戦い続けるバーサーカー状態になります。それに加えて五感や野生の勘も鋭くなりスポーツ選手で言うゾーン見たいな状態も付きます。
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