21話 きっかけ

「待て戸籍上そうかもしれんが俺は夫婦だとみとmッ「運命の出会いは2ヶ月ほど前」


 〜〜回想〜〜


 私、西園寺穂乃果は愛に飢えていた。理由は生まれながらなのか、環境によってなのかよく分からない。ただ人一倍誰かに対する執着が強かった。


「あ、穂乃果様!もしよろしければ、一緒に帰りませんか?」


「ごめんね。迎えの車が来てるの」


「あ、そうですか………無理を言ってすいません」


「大丈夫だよ。私も誘われて嬉しかった」


「穂乃果様♡」


 だから私は人から常に一定の距離を取っていた。もし、執着してしまったらどんな結末になるか分かっていたから。


 小学生の時、私は一人の友達を執着してしまった。そのせいで友達は私の見えない所で、周りからハブかれいじめられていた。当時の私はその事に全く気付かなかった………その結果、友達は学校からも私の前からも消えた。


 納得出来ない私は家の力を使って探し出して無理矢理問い詰めた。返ってきた答えは正確には覚えてないけど、この言葉だけは鮮明に思い出せる「気持ち悪い」「貴方のせいで、いじめられた!」「もう私の前に現れないで!」ってね。


 そこで小さい時の私は理解してしまったの。私の愛は人を傷つけると。そこでやっと気付いた、両親が私を愛さなかったのも使用人達が、私から一歩遠ざかって接していた理由も、自分が人を愛してはいけない人間だったから。

 

 ――ポン――


 頭の上で軽く何かに叩かれた。私は驚いて叩かれた方向を向いた。


「何帰ろうとしてんねん、日直日誌返してから帰れ」


 たしか速水隼人くん、私と同じクラスメイト。その特徴的見た目から、よく記憶に残ってる。


「えっ、ごめん今日私日直だった?」


「そうだ。仕事全部やったから日誌返すくらいやってくれ」


「ほんとごめんね。けど、言ってくれれば良かったのに」


「すまん、顔と名前まだ一致しないんだよ。日直の名前しか分かなかったけど、ほらさっき名前呼ばれたやん、それで分かった」


「あ、そうだったの」


「そゆこと、じゃあな」


「あっ、待って」


「ん、何?お家が俺を待っているんだが」


「何かお礼をしたいんだけど」


「じゃ、次の日直の仕事頼んだじゃあな」


「あっ」


 そう言って彼は廊下の窓から飛び降りて帰って行った………えっ、なんで?しかも、私からのお礼であんな小さい事を頼むなんて、変な人。

 


 ・それが彼を気になったきっかけだった。



 数日後ーーー


 また彼を見かける事になった。今度は校舎裏の人目がつかない自販機の近くだった。


「おい、長髪!テメェさっきからなにガンつけてるんだ?」


「時に戦闘に置いて何が勝利のカギになると思うか?それは情報だ。よって俺はお前を見るのをやめない」


「さっきから意味不明な事ばかり言いやがって!ぶっ殺すぞ!!」


「きゃーこわーい」


「へへへ、だったら出すもんだしな!」


「アノボウヨミヲホンキデウケトリヤガッタ」


 カツアゲをされてたのだ!私はすぐさま先生を呼びに行った。



 後日 昼休み



「兄貴!知ってましたかカモノハシって卵を産む哺乳類なんっすよ!」


「おう、そうか帰れ」


「え〜、せっかく弁当を少し分けてあげようと思ったのに」


「どうしたんだい颯太?早く席に座りなよ。一緒に食べよう!」


 私はとても驚いた。あのカツアゲをしたヤンキーと仲良くなっていたからだった。なぜ?どうして?酷い事されたのに仲良くなれてるの?


 ――彼は私の執着も受け入れてくれる?――


 私は即座に頭を振って考えをかき消した。なぜそんな発想が出てきたのか分からない。私は人を愛してはいけないのに………それに、私は、あの人の事も仲良くなった理由も何も知らない


 ――知らないなら知ればいいじゃん――


 どうしてそうゆう考えに至るの!?私はまた頭を振ってかき消そうとする………けど、彼を知った方が考えるのをやめるかもしれない。

 そうよ!何も知らないのに変に内面を理想的に考えるからいけないの。きっと、調べていくうちに幻滅するはず!

 第一見た目があんななのに、何を期待してるの私は。



 ・そうゆう考えが私を運命に導いたの



 ●調べて初日 小・中学校の学校資料から


「小・中学生の頃から常に男友達が多かったのね。えーと、『委員会や掃除をサボる事なく真面目に取り組んでいた』へー、意外だー」


 ✖︎3日後 友達や家族からの資料


「『変人やヤバい奴、常識が無い』って友達から結構辛辣な評価ね。けど『困ってる時は頼りになる』か………。家族からだと『家族のムードメーカー的存在』『虫を食べたり拾い食いするから心配』………流石に昔の話よね」


 ▲1週間後 とあるおじさんからの資料


「『彼は人を思いやれる心がある優しい青年じゃよ』………『優しい』ね。今までの資料にそんなの無かったのに変なの。結衣、詳しく調べてくれない?」


「はい、お嬢様」


 ◆2週間後 おじさんの資料


「半年前に不審者によって男子高校生の一人が暴行された事件があったんだ。その被害者と加害者がこのおじさんと速水隼人くん………これだけ?」


「はいお嬢様、事件は特に大きくなる事もなく沈静化したとのこと。それと加害者の村田達己の当時の家庭事情の資料もあります」


「見せて、………暴力は良くないけど可哀想な事情ね。妻や娘に先立たれるなんて」


 もしかして彼はそれを知って問題を大きくしなかったのかな?確かにそれは優しい行動ね


 ――もしかして私の事情も知ったら彼は私に優しくするの?愛してくれるの?――


 ………本当になにを考えてるの?私の事情なんてこのおじさんに比べれば大した事ないし、しかも、一時的な優しさではなく私の場合一生の優しさが必要なの。彼がどれだけ優しい人でも限界があるわ。


 ――確かめてみないと分からないじゃん――


「………結衣、少し準備して欲しいことがあるの」


 ★1ヶ月後 確かめる為に


「すいませんお兄さん………助けて下さい」


「………あ、俺?」


 私は変装して彼に近づいた。

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