第10話 デート
「俺、無くした鞄を探さないと行けないんだが」
「どうせ学校にあるんでしょ、明日にしなさい」
なんつう我儘女なのだ。けど、よく考えろ。コイツはほぼ初対面の男子にちょっとした事で因縁つけ、あまつさえ
「はぁ、分かった。で、どこ行くんだ?」
「ちょっとアンタねぇ、こんな美少女とデートできる機会なんて、そうそう無いことよ」
西園寺に頼めばいくらでも行けるが?絶対誘わんけど。
「知るか俺は美人だろうがブスだろうが3日会わなければ忘れる」
「………それは逆に人としてどうなのよ」
「で、結局どこに行くんだ?」
「それはアンタが決めなさい」
「よし解散」
そう言った瞬間、彼女に背中を叩かれた。けど、何故だろうそこまで痛く無い。
「次ふざけたら顔を叩くから」
「………お前案外優しいんだな」
「は?ドM」
◇ 放課後でーと
ムシャムシャムシャ
「ねぇ、ちょっと」
ムシャムシヤムシャ
「ねぇ聞いてるの?」
ムシャムシャムシャ
「ねぇ!速水!」
「うるせぇんだよ。飯は静かに食わせやがれ。一応お前は俺の事知らないから教えてやる。俺は飯は黙って静かに食う派だ。後で飯の感想言ってやるから待っとけ」
「………」
俺と彼女はバイキングに来ていた。デートスポットを俺に選ばせたのだ当然こうなる。しかも、カップル割り引きで通常の3割引!もはや行かないという選択肢は無いだろう。………どうしよう次来る時、西園寺誘うか迷う。
「ありがとうございましたー」
店員さんの呼びかけと同時に俺と彼女は外に出た。
「いやー、久しぶりに満腹だぜ。サンキューな………。サンキュー!」
「美月よ!無理に押し切ろうとしないで!」
「しかし、美味かったよな初めに食ったサーモン!脂が乗ってて箸がめっちゃ進んだ。次に食べた酢豚もだが美味いとしか言えん!もう全部美味かったわ、もう一回行こう!」
「………あんた、それを食事中に話せないの?」
「映画とかでもそうだが上映中、喋る人はいないだろ、映画終わってから感想言い合うだろ。食事もそれと同じってこと」
「違うから!全然違うから!デートでの食事はお互いの事を知るため何かしら喋るもんなの!」
「………別に好きな相手じゃねーし良くね?」
「私がつまんないって話してるの!」
彼女はそう言ってカリカリ怒ってしまってる。だがこれは不味い、許す条件は彼女を楽しませる事。このままではやり直しになってしまうかもしれん。
「OK分かった。じゃあ、そこで少し待っといてくれ」
俺はそう言って近くのいい感じの店を見つけてドリンク二つ注文した。食事にうるさい俺だが飲み物だけは普通と同じ飲みながら喋れる。
理由はよく分かっていない。多分、運動し疲れた時に飲み物の味を集中して感じようとしなかったのが原因かもしれんが詳しくは知らん。
自分の事なのに分かって無いって?大体の奴らそうだろ。逆に自分より他人の方が自分を分かってる場合も普通にあるしな。
「と言うわけで、買ってき………」
おっと、美月さん。美人と言うだけあって、ちょっと俺がいなかっただけでナンパされてらぁ。
「ちょっと困るんですけど!」
「いいじゃん、いいじゃん俺ら絶対連れより楽しませるって」
「そうそう、俺らをそこら辺の男と一緒にしないでくれるー」
マジでいるんやな、こんなテンプレする奴が。つうか周りの人助けろよ。俺が助けに行かんとダメやん、だる。
「やめてください!」
「うわー、怒ってる顔も可愛いー」
「大丈夫だって別に取って食おうってわけじゃ無いんだしさ」
「デュフフフフ、そうでござるよ美月氏。拙者と共に行くでござるよ」
「そうそう………へ?」「えっ、誰?」「えっ、キモ」
「デュフフフフ、ん?あ、どうもコイツの連れです。趣味は食べる事、最近のマイブームはバイキングです」
「いや知らんけど」「つか、嬢ちゃんの連れヤバくね」「……いえ、知らない人です」
「何を言っているんだい美月?美月が俺を今日のデートに誘ったんじゃ無いか美月?どうした美月そんな顔赤くなってっておい!靴で脛を蹴るな美月!」
「美月美月美月うるさい!もう連れが来たんで行きます!さようなら!」
そう言って俺からドリンク取ってスタスタと歩いてしまった。ナンパ師二人は今だに状況が飲み込めておらず唖然としている。
「まっ、気にする必要ねぇか」
俺はそのまま美月を追いかけた
「マジ最悪」
「助けてやったと言うのに失礼な」
「もっとカッコよく出来なかったわけ!」
「まず見た目がカッコよく無いから普通に行っても笑われるだけやで、それならヤバい奴が連れにいるって事にした方がスムーズに行くと思ったんや」
「………意外と考えてるのね。けど、恥かいたわ」
「あんな奴らに、どう思われようがどうでも良いわ。それにあんな公然と悪質なナンパして見て見ぬふりする日本人共だぜ、俺達の会話なんざ殆ど聞いてねぇよ。聞いてても明日には忘れてるわ」
「………確かにあなたの言う事にも一理あるわね」
美月一気に飲み物を飲み干した
「ぷはぁ、あーあデートはこれからなのに怒ってても楽しく無いわね。そもそも貴方に期待するのも間違ってるし」
「おい」
「フフ、次はどこ行くの?」
あ、初めて笑った。
◇ カラオケェェェェ!!!
「………変な事しないでよ」
「カラオケに対するイメージが最悪すぎる」
俺と美月は今度はカラオケに来ていた。理由は単純、学割×カップル割があったからだ。しかも、指定の曲で90点台を取ればフードが無料になる。最早行くしか選択肢は無い!
「俺は音痴だ。90点台は美月!お前に期待している!!」
「まだ、食べるつもり?はぁ、仕方がないわね」
そう言って美月は歌い出した。何気に初めて女子の歌をカラオケで聞いたので新鮮でそれなりに楽しめた。で、結果はと言うと
「79.856………」
「うっし、自分でなんとかするか」
「78.998………」
二人とも撃沈である。
「何故だ!何故90点が取れない!美月お前頑張れよ!大体美人な癖に微妙な音痴ってどう言う事だよ!」
「確かに私は美人だけど!音楽系そんなに触れて来なかったのよ!大体あなたは私より音痴じゃない!」
「うるせぇ!俺の音痴は許される!だってそうゆうキャラだもん。けどお前はダメだ!せめて60点くらいの音痴か90点以上をバンバン取らなきゃダメなキャラなんだよ!」
「無茶言わないでよ!けど次見てなさい、さっきは初めてだったからよ。今度はコツ掴めたわ」
「75.223………」
「下がってんじゃあねぇか!もういい貸せ!」
「82.643!」
「だらしゃああああ!!!」
「なんで!!普通は私より低い点取るとこでしょ!!」
「やっぱ………才能って奴かな」
「ムカつく!!貸しなさいさっきは意識しすぎたのがダメだったの!次は私が勝つわ」
そんなこんなで俺の最高点は85.133で美月の最高点は82.428であった。
時間を見てみると、もうそろそろ日が沈みそうだったので俺たち二人はカラオケから出て帰路についている途中である。
「負けた………しかも、こんなアホな奴に」
「アホとは失礼な。これでも席次235番をキープしてるんだぞ」
「………二年生は何人いるから?」
「240人」
「殆ど最下位位じゃない!」
「失敬な、不登校ども抜かしたら正真正銘最下位位だ!」
「余計誇れないわよ!」
そう彼女がそう一通りツッコミを入れ、ため息をついてから、少し無言の時間が続いた。だが、そこまで気まずい空気では無かった。
ワンチャン俺が鈍感って可能性があるが、もうそれは許してくれ。
そうしてしばらくたった後、美月は俺に振り向き言った。
「ねぇ、最後にちょっとよってかない?」
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