第5話 超人、速水隼人

「判決ギルティ、罪状、事もあろうことかミジンコ以下の分際で穂乃果様のL◯NEを持っていた事。その上、穂乃果様のて、手作り弁当を!!食した事実!!もはや、死刑では生温い!そうです生温いです!大事なので2回も言います!!」


「「「「「「「「異議なし」」」」」」」」」


「異議あるわボケェ!!第一俺は西園寺と別れたいのは事実っていうか、まだ付き合ってねーけど!ややこしいが西園寺の好意を諦めさせる事には協力すボゲェファ!?」


ドカァン!!総隊長に腹を蹴られた音


 鉄板越しにダメージが入っただと!?なんだこの総隊長、アルレイン(アリス)よりタッパ小さい癖になんてパワーだ。


「あなたの言葉が信用ならないのはさっきの問答でよく分かりました。けど安心してください穂乃果様も少々火遊びがしたかった時期、貴方の手など借りなくても私達だけで穂乃果様の目を覚まさせてあげますよ」


「そりゃあ、ありがてぇこった。けどそれなら俺は、ただ運命に弄ばれた可哀想な人間って事で死刑免ねぇか?」


「何を言ってるんですか?貴方の存在自体が穂乃果様を惑わせたので罪ですよ。しかも、穂乃果様のて、て、て、てて手作り弁当を!スゥーハァ、スゥーハァ、」


 え?なんか、よく分からないハンカチ取り出して吸い出したぞ………この学校、頭のおかしい奴が大勢いると思ったが犯罪まで犯すとは……あ、大和も軽犯罪犯してるし普通か。


「ふへへ、穂乃果様の匂い……失礼少々取り乱しました。あと貴方は死刑じゃないですよ。生き地獄味わってもらいます。ではさようなら」


「は?何するきだうわ!?」


 総隊長がそう言った瞬間、顔を何かに覆い被されたのか知らんが視界が塞がれた。よく分からんが無理矢理歩かせてどこに連れて行く気だ?


「いって、……ここはどこだ?体育館倉庫か?」


 突き飛ばされた俺はロープと顔に覆い被さってた誰かの靴袋をすぐさま取って辺りを確認した。多分、体育館倉庫だが見覚えが無いのでおそらく旧校舎のものだろう。

 金が無くて今だに取り壊せてない旧校舎、少し遠くにあるせいで先生方も殆ど足を運ばない……ここが俺の処刑場なのは、ほぼ間違い無いだろう。

 だが、何が来るか全く分からん。生き地獄を味わうと言われたから拷問を覚悟したが、あいつらは俺をここに閉じ込めただけ。


「いったい何を仕掛けてくるんだ?」


「そうね、なんだと思う?」


 俺は声が聞こえた瞬間その方向に全力の後ろ回し蹴りをかましたが………


「あら?いい蹴りね。両手じゃないと止められなかったわ」


 は?嘘だろ。後ろ回し蹴りを掴まれた!?俺はこの一瞬の攻防で反射神経、パワー、タッパ全ておいて負けてると分かった。すぐさま距離を取ろうと地面を蹴るが……


「あら、逃がさないわよ」


 なんつう握力だ!大和超えてんだろ掴まれた足が抜けん!は、身体が浮いて……投げッ!?


「そーれっ!」


「グッハッ!?」


 受け身は取れたが、なんつう馬鹿力!俺は体重75kgあるぞ!俺はすぐさま体勢を立て直し距離をとった。


「あら、まだ意識あるのね。けど、その方が調教しがいがあるわ」


「……なーるほど、これが生き地獄か。オカマ野郎、俺が負けたらどうなる?」


「たっぷり、可愛がってあげるわ」


 くそたっれ。けど、どうする?俺があいつに唯一勝てそうなのは俊敏さくらいだが、この狭い体育館倉庫ではそれを生かす事は出来ない。体力切れるまで逃げ回るか?いや、先にこっちの体力が底を尽きそうだ。なら、武力方面でどうにかする選択肢を捨てる!さっきは失敗したが俺の得意分野は交渉だ!!


「そこに愛はあるんか!」


「ふん!!」


 返答にはアイアン(ポール)が返って来ました。上手くねぇんだよ


「ぎゃあああ、お前投擲は流石に無しやろ!考えろ」


「フフ、実は私の趣味はね。寝取られなのよ」


 完全害悪、交渉の余地もないゴミじゃねーか!!……いや、まだ希望が見える!


「俺と西園寺は付き合ってない!西園寺が勝手に言いふらしてらだけだ!」


「私はBSSも行けるわ」


 くたばれ


 ん?さっきオカマが飛ばした鉄骨……壁に穴空いてるやん。は!いい事思いついた


「おいオカマ野郎!勝負しようぜ」


「フフ、乗ってあげてもいいけど時間が無いのよね。また、今度にしてくれる?」


「安心しろ!お前の得意分野だ!」


 俺はそう言ってポールを武器にオカマに向かって振り下ろした。オカマも咄嗟にポールを手に取り真正面から受け止めた。知っていたがびくともしねぇ。だが、ここで気圧されるな、本気で勝ちに行くつもりでかかれ!それが騙すコツだ!


「チャンバラ勝負といこうや!」


 ◇体育館倉庫外ぉぉぉ!!!


「やりましたわ総隊長!今頃あのゴミは泣いている頃ですわ」


「………」


「総隊長どうないましたか?」


「……おかしいのです。いつまで経っても絶叫が聞こえないです」


「まさかあの龍骨院金堂りゅうこついんこんどうが負けるはずありませんわ。彼はこの学校一の武闘派ですもの」


「……だといいのですが」


 それでもあの男は一応、穂乃果様が惚れた男。スタンガンを喰らって動けた事も然り、まだまだ底が知れない怖さを持っている。


「念の為、体育館倉庫周辺に人を置きます。急いでください。とっても急いでください。大切なので2回言いました」


 そして、体育館倉庫周辺に穂乃果お嬢様親衛隊

 1番隊から5番隊の全部隊が集結した。


「ほ、本当にここまでする必要あるの?わ、私もう帰りたい」


「総隊長からの命令だ。ただ従ってれば良い」


「けど私納得いかなーい、これからお洋服買う予定がパーになったもん」


「あなた方、もう少し緊張感をお持ちになられては?」


「アタイは逆に脱出して欲しいがな!血がたぎるぜ!」


 各面々の隊長が揃ったその時、体育館倉庫の扉が突如として破られた。


 ◇


「フハハハハ!!!!長ものを狭い所で振り回せば必然とこうなる!!貴様の馬鹿力だとなおさらな!!」


 チャンバラ勝負の狙いは単純、この古い体育館倉庫の扉をぶっ壊す事が目的だ。その為、俺は極力避けたり、受け流す事に専念した。元々力で負けてただけあって違和感を出すことなく作戦は成功!フハハハハ!!ぬるい!ぬるいわ!


「あら、まんまと嵌められたわ。けど、脱出した所でどうするのかしら?」


「へ?うわキモ。何人いんねん」


 おっと、本音が溢れてしまった。だって体育館倉庫周辺に50人くらいが俺を逃がさないように取り囲んでるもの。マジでこいつら暇なんか?


「まさか本当に脱出するなんて驚きました。2度目は言いません、想定内でしたので。さて、大人しく裁きを受け入れるなら痛い目にはあいませんがどうしますか?」


「はっ、ゴリラはともかく女共に力負けする訳ねぇだろ強行突破ダァ!!」


「なんと言う愚策……少々あなたを買い被ってたようです」


 俺はそのまま女共に突っ走って行って……ポールを高跳びの要領で使って高く、ひたすら高く跳んだ


「な!人がそこまで跳べるはず……バスケットリング!?とても驚きです。本当にお以下同文」


 そう、ポールだけでは高さが足りずバスケットリングに捕まり2階に登ることによってこの絶対的包囲網を脱出したのだ


「俺の言葉はペラッペラっだぜ、お前らがするべき行動は突進する俺に対して身構えるのでなく積極的に捕まえに来ることだったな!フハハハハ!ばーかーばーかーあーほあーほ」


 バシッ!誰かの手がバスケットリングを掴んだ


「はは!やるな!アタイと勝負しようぜ」


 おっと、女子がバスケットリングなんて触れる訳ねぇだろと、たかをくくっていたけどマジかよ怖。


「やるわけねーだろ。じゃあな」


「あ!待て!アタイと勝負しろー!!」


「1、2番隊は今すぐ表の2階の階段を!3番隊はここで待機!4、5番隊は裏の階段を制圧して」


 うわ、やべ出口全部塞がれた挙句後ろから戦闘狂が追ってきてやがる。普通の人に取っては絶対絶命だろうな……だが!俺は常識という羽衣を脱ぎ捨てたことによって


「!!!!!!!!飛べる!!!!!!!!」


 そう言って俺は体育館の窓ガラスを割って2階から飛び降り家まで走って帰った。



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