17話 修羅場

 現在、俺は白い部屋から出て、黒服共を躱しながら西園寺家のでかいでかい屋敷中を逃げ回っていた。て言うかあの部屋、あの屋敷の中やったんやなぁ。


「なぁ、美月。ずっと疑問に思ってる事があるんだが」


「そう、あ、次右よ。とりあえず降ろしなさい」


「いやダメだろ。お前どうやってこの後言い訳するんだ?敵に脅されて仕方なく〜風にした方が良いだろ」


「………何で私の事気にかけるのよ、アンタを地獄に送った張本人よ」


「俺は地獄と思ってないし罪悪感感じてくれてるだけで満足よ。それより疑問があるんだが?」


「………何よ」


 そう俺はずっと疑問に思っていた事があった。それは黒服達の目的である。最初、ただの嫉妬かと思っていたがテストやら合格やら、よく分からない基準があるのは確かだ。それと美月が何故俺に協力的なのかも知りたい。


「どうしてお前良い子ちゃんなのに俺を騙したんだ?」


「………私は別に良い子ちゃんじゃ無いわ。騙した理由も命令に従っただけよ」


「じゃあ、何で今命令違反してんだ?はっ!?ガチでお前俺に惚れて!」


「違うわ!」


「じゃあ、なんだよ」


「………廃人になるまで痛めつけると思わなかったのよ」


 廃人になるまで、やるつもりだったのかよ………


「………人間の嫉妬ってここまで来ると怖いな」


「嫉妬だけじゃないわ。西園寺家現当主、西園寺元様の意思よ」


「はぁ?当主?何で?」


「正確には分からないけど、古い考え方の人なのは分かるわ。穂乃果お嬢様を家を大きくする道具としか考えていないそうよ」


「マジかよ。愛無さすぎやろ。それで何で俺を廃人にすんだ?政略結婚の邪魔なのは分かるが」


「元々お嬢様が誰と付き合おうが興味無い人だったけど結婚となれば話は別だったらしいのよ。けど、穂乃果お嬢様もう婚姻届出してしまって、それで現当主がお怒りになって、夫のアンタにとばっちりが行ったと思うわ」


「なるほど、そう言う展開だったのか納得した…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………婚姻届がなんだって?」


「えぇ、もう受理されたわ。戸籍上は夫婦よ」


「いや、はぁ!?えっ、なんで!?俺まだ17歳なんだが?」


「大丈夫よ、1年留年して18歳って事に改ざんしてあるわ」


「なにしてくれとんねん!!」


「アンタの成績が悪すぎて特に怪しまれずに改ざんできたわ。お嬢様の場合はお家柄のおかげで17歳でも無理して行けたわ」


「俺だけ被害被ってんじゃねぇか!!おい、高校で留年とか不名誉すぎだろ!!いやそれ以外にもツッコミ所満載だけど!!とりあえず取り消せよ!!」


「無理よ。あ、そこ左に行ったら出口」


 俺は色々文句を言いたいが、今優先なのはこの屋敷から逃げること。出口にいる黒服二人にテーザー銃(名前教えてもらった)2丁を撃ち無力化に成功。最後にこのデカい扉を開けてデカい庭を抜ければ脱出だ!いざ、オープンザドア!


「あ!隼人くん何で家………何その女」


 俺は即座に扉を閉めた


「おい!しっかりしやがれ!!もっと時間稼いでこいよ!!一番今の状況で会いたく無いやつに会ってんだろが!!!」


「知らないわよ!本当は今パリで現当主がお見合いをさせてるはずよ!」


「お見合い成功させやがれ!」


 ドンドン「ねぇ、隼人くん?なんで閉めるの?やましい事でもあるの?その女とどうゆう関係なの?ねぇ、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて」


「「ひぃいいいい!!!」」


 マズイマズイマズイ!よりにもよって美月を抱えた状態で会ってしまった!いや、落ち着けクールに、クールに行くのだ。よし、まず初めに美月を降そう。


「美月、事情が変わった。お前はもう逃げろここまで来れば後は俺一人で大丈夫だ」


「いえ、穂乃果お嬢様を味方につければ形勢逆転出来るわ、説得しましょう」


「バカ!お前が男ならそうしたわ!けど女!説得の前に俺が死ぬ!」


「ねぇ、なんでその女と親しげに話してるの?」


 普通ならドアを押さえているので声がクリアで聞こえるはずの無いのだが………俺は恐る恐る声の方向を見た。いつの間にか俺の隣にきてるじゃ無いですかやだー。


「西園寺落ち着け、俺と美月はただの友達だ。やましい関係でもなんでも無い話せば分かる」


「へぇ、私のことは名字で呼ぶのに美月のことは名前で呼ぶんだーふーん」


 そう言って西園寺は俺の胸に包丁を当てた………終わった。この世に生を受けて17年、嫌な事は記憶から消され楽しい思い出しか無いが、まだまだ生きたかったな………


「待ってくださいお嬢様!その男は私の名字を忘れているのです!」


「は!そうだ西園寺!俺はそこまで呼び方を意識していない!」


「じゃあ呼んで?」


「へ?」


「穂乃果って呼んで」


「………穂乃果」


 そう言った瞬間、目に見えるほど目の前の西園寺の顔がとろけた。いつの間にか当てていた包丁も下げている………危機は乗り越えたようだ。


「もう〜♡どうしたの隼人くん。急に家にまで来て?理由によっては二週間一つも連絡返してくれなかった件許すよ」


 あっれ?まだ危機去ってなかった!?


「それは断じて俺は悪く無い!お前の部下共に誘拐されてたからな!ほら美月証言!」


「えっ!?あ、はい。橘指令により速水隼人を誘拐するよう命じられました」


「あー、そう言えばあの子お父さんの直属の部下だったね。うん、分かった。隼人くんのことは許すよ」


「しゃ、おらぁぁぁ!!!」


 だが西園寺は続けて「けど」と言い、美月の方を見た。ヤバい!?俺は咄嗟に美月を突き飛ばした。そして俺の腹ギリギリに包丁が止まった


「どうして隼人くん庇うの?やっぱその女と何かあるの?ねぇどうなの?答えてよ?なんで?

 なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?」


 考えろ考えろ!このヤンデレを止める言葉を!!はっ!?


「約束したろ!俺以外に迷惑かけるの禁止って!!」


 俺は咄嗟にそう言った。2週間前に言った鬼ごっこの約束の条件である。


「隼人くん………そんなボロボロになってるんだよ。しかもこれは約束とは関係ない家の問題」


「関係あるわ!コイツはお前の部下で行動は俺を捕まえる事!間接的にお前が俺を捕まえてるのと同じだ!つまり鬼ごっこの約束と同じ!!そして今の所は迷惑は俺以外かかっていない!」


 無茶苦茶な暴論である。自分で言っててよく意味が分かっていないが、それでも無理矢理でも納得させなければ美月が死ぬ!

 西園寺は理論は分からなかっただろうが、俺がなんとかして助けようとしてるのは伝わったのだろう。悲痛そうな顔で言った。


「隼人くん………その両手の血や身体の至る所にある傷、しかも、その右腕折れてるでしょ。そんな事した人達を許せるの?私なら復讐出来るよ」


 右腕折れてたのかよ。確かにちょっと痛いなって思ってたけど打撲だと思ってたわ。あのババァ強すぎやろ。


「そこまで気にして無いからいいよ。ってこれ許した事になるのかな?………許すの定義が分からんくなってきた。とりあえず恨みや憎しみは無いから注意くらいにしとけ」


「アンタその言い方だと私以外も助ける事になるわよ」


「ん、まぁそうなるな。ま、いいんじゃね?酷い扱いされたが気にしてねぇし。あっ、ババァはムカつくな………ゲロ被せたし別にいいか。やっぱ何も無いや、注意だけにしとけ」


 そんな俺の真意を話してたら、いつの間にか西園寺の表情が和らいでいた。



●あとがき

 最近書いてておもん無いなぁって思ってたけどヒロイン出てくると自分で、おもろいって思えた。やっぱ正ヒロイン大事なんだなぁって思ったよ。

 あ、ちなみに俺が好きなヒロインタイプは、ヤンデレじゃなく元気っ子です。

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