45話 同棲生活

 俺は現在、サウナに籠ってる。何故かって?一人になれるのはトイレかサウナ以外ないからだ!ちなみに風呂場だと奴は水着で入ってくる。

 サウナだと途中までいるが、10分を過ぎると流石にキツくて先に上がるのだ。まぁ俺は1時間くらい軽く入れるので問題ない。


「マジでどうしよう」


 脱出するのが相当難しい、適当に服をつないでロープにして登ろうと思ったが、西園寺に気付かれた瞬間、壁の上にいる監視員に邪魔される。壁を登ることも考えたが、本気でやって6メートルくらいが限界だった。

 頑張って鉄筋コンクリート壊すか?流石に無理だな諦めよう。もうこれはアレだな、誰かの手を借りるしかない!


 とは言っても連絡手段だ、ネット環境は全て西園寺によって管理されてる。俺が誰かに助けを呼んでもすぐにバレるだろう。まず俺を助ける奴いるか?………颯太がいるな!実力ないけど。


「マジでこれ詰んでね?」


 トイレのスッポンで壁登れるかな〜。まぁ、何をするにも西園寺の目を掻い潜らないと話にならねぇ。監視カメラもあるし。


「隼人く〜ん。そろそろ出ないと心配だよー」


 そんなこんなで1時間経つか、まぁ、とりあえず何でもしよう。何かやれば脱出の目処が立つだろ。



 ◆数日後〜



「ハァ、ハァ、ハァ、やるな西園寺」


「ハァ、ハァ、ハァ、隼人くんこそ」


 現在トレーニングルーム


「えい!」


「必殺、関節外し!フハハハハ!いくら合気道の技術があろうと関節を外してしまえばってアレ?」


 俺はそのまま倒れてしまった。えっ、マジでなんで?関節外したんだよ、技かけられないんだよ、どゆこと?


「やった!初めて成功した!」


「wats?」


「合気道は相手の力を利用する技術だよ。関節外した相手には技をかけにくかったけど、うん、コツを掴めた!」


「最悪や、出来ないと思って調子乗ってたら強くなりやがった」


 ええー、流石に女より弱くなるの嫌だよ。男の子だもん。


 えー、ま、見ての通り今、何故か俺は西園寺と手合わせしてます。はい、ずっと平和暮らしすると感覚が鈍るんです。修行です修行。


 ◇修行終わり


「そう言えば隼人くん。初めはあんなに抵抗してたのに大人しくなったね」


 西園寺がタオルで汗を拭きながらそんな事を聞いてきた。そろそろ、そんな質問が来ると思ってたぜ。


 俺は西園寺の質問に対して自然体で答える。そう、コイツに嘘は通じない。なら簡単な話、嘘を付かなければいい。


「流石にじゃ脱出は不可能だし、大人しくなるさ」


 そう、西園寺に攫われて最初の3日間、それはもうめっちゃ抵抗した。多分10箇所くらいコンクリの壁にヒビが入ってる。けどそれから俺は抵抗を一切やめた。


「それがどうしたんだ?」


 何か裏があると思うだろ。西園寺お前は俺の嘘が分かる。今の言葉が真実と言うのも分かる。そして俺の性格もある程度分かる。ならこう考えるはず。


(脱出の目処がたった?)、と


 普通に考えて、相手にその計画の存在を気付かれるのはハッキリ言って愚策。だが西園寺に関しては別だ、隠し事は通じない。なら逆にこちらから匂わせ、仕掛けた方がいい。


 だから俺は最初の3日で色々やった。


 ・コンクリをバールで殴る。(3㎤くらい削れた)

 ・コンクリの壁の四隅それぞれ登る。登りやすさは南がベスト。(ちょうど家の裏近くで視覚も多い)

 ・西園寺にデカい荷物をおねだり。ピアノとか。(鉄の扉が開くと思ったがヘリで届けやがった)

 ・家族や友達にメール。(もちろん内容は西園寺も確認済み)

 ・防犯カメラを養生テープで貼り付ける。(壊すのはビビった)

 ・掘れそうな地面を片っ端から掘る。(土で周りが汚れて怒られた……)

 ・服をつなげてロープにして登る。(西園寺に普通にバレ、妨害された)


 これが最初の3日間でやった事全てだ。この行動の中に脱出する目処がたった情報があると西園寺は考える。俺はその情報を悟らせない為全力を尽くすのが今回の目的だ。


「ふーん、『俺だけじゃ脱出不可能』ね。外部に協力者でもいるの?」


「………」


 ――かかった!


 一番初めに仕掛けた、伏線らしき俺の発言を見逃さないと信じてたぜ。


 西園寺、お前は俺が嘘をついてるかどうかだけ分かる。なら対策は簡単、不都合な時は黙ればいい。それで真実は見透せない。


 そして、このタイミングの黙り。図星を突かれて黙ったようにしか見えない。口で嘘が付かなければ行動で嘘を付けばいい!それだけだ!


 ◇――と、隼人くんは思ってるはず。


 隼人くん、図星を突かれたような演技をするけど甘いよ。私が隼人くんの嘘が分かるのは行動によって、つまり黙っていてもそれが演技が自然体か分かるの。


 一定のリズムでやる瞬きがひとときの間止まる。それが隼人くんが嘘をついてる時の合図。


 外部に協力者が居るのは真っ赤な嘘ね。恐らくは私の意識を外に向けさせる為のブラフ。ふふ、という事は私の意識が内あるのが不都合と言う事。


「そっかー、そっかー。外部との連絡はしばらく慎重にしないとね」


 ならあえて乗ったフリをして隼人くんの隙をつく。隼人くんは勘がいい、慎重に行動すればどの行動が本命か辿り着ける。


 隼人(フハハハハ) 西園寺(ふふふ)


 こうして恋愛心理戦では無く、脱出心理戦が始まったのであった。





あとがき


 よう実12.5巻最高だった。最近のマイブームは走る事です全力で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヤンデレお嬢様が離してくれないので全力で逃げる事にする。 渡辺 @kinzyouryuiti

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画