19話 予想外

 髪が濡れている理由は俺がゲロを吐いたからだろう。多分しばらく臭いは落ちない可哀想に誰がやったんだ?


「その男はダメですお嬢様!頭のネジが数本イカれてます!」


「なんてこったい、否定が出来ねぇ」


「何を言っているんですか?隼人くんは優しくて真面目で努力家ですよ」


「お前こそ何を言ってるんだ?」


 他でもない本人がそう思ってるんだぜ。こう見えて俺は自己分析出来る方だ。だから周りに自分がどう見られてるかだって分かるし、こうゆう行動したら引かれるな〜ってのも分かる。 

 最近、西園寺のせいで分からなくなってるけど………

 まぁ、それがある程度分からないと人や動物を騙せないからな。ご察しの通り、山で身につけたスキルだ。


「まず、この男はあのカリキュラムを2週間受けたのにも関わらず。自我を保っています!それはもはや狂気の域です」


「失礼な!漫画ではもっと狂気的な主人公はいっぱいいるぞ!シド・カ◯ノーだったりナツキ・ス◯ルだったり!アイツらに比べれば俺のメンタルも性格も可愛いもんだ!!」


「隼人くんも、それに近いと思うよ」


 西園寺、お前漫画とか読むんだな。て言うか俺があの人達に近いだって?なにを言う、メンタルだけで言えばス◯ルの足元にも及ばす、強さを求める執念狂気だってシ◯にも及ば無い。

 いつか俺も剣で胸を刺された時、心臓をずらして回避したり、どんな絶望的な状況でも笑顔を見せたりしたいぜ。あ、流石に核になるのは無理や。


「なぜこの男なのですか!不衛生で学もなく、まるで息を吐くかのように嘘をつき、あまつさえその男はお嬢様の事、好きでは無いですか!!!」


 すげぇ、ここだけ聞くと完全にダメ人間じゃねぇか。えっ、まごう事なきダメ人間だって?うん、作者一旦黙れ。


「そんな男がお嬢様を幸せに出来るわけじゃないですか!いえ、幸せにする気が無いじゃ無いですか!!!」


 なるほど、ちゃんと俺の事見てたんだな。


「せめて、その男が誰よりもお嬢様の事が好きで誰よりもお嬢様を大切に思ってるなら良かった。それならまだお嬢様を任せられました………」


 てっきり、西園寺の「お父さんの直属の部下」の発言から、西園寺のお父さんと同じ道具としか見てないと勝手に思っていたが、どうやら違うようだ。


「当主様を敵に回したのですよ。遅かれ早かれお嬢様は勘当されます………その時、隣にいるのがこの男なんて、私は納得いきません!」


 マジかよ西園寺、家をかなぐり捨てる覚悟で俺にアプローチしてんのか?そりゃ、止めるわ!つうかやめろ。


「結衣、貴方が親から愛されない私を娘同然に育ててくれた事も分かります。ましてはこの身勝手な行為、怒るのも無理ありませんね………」


「ドチラカトイエバイモウトデス」


「でも、ごめんなさい。私は隼人くんを殺したいほど愛してるの」


 ん?


「この気持ちを抑えるくらいなら隼人くんと一緒に死んだ方がマシなくらいには」


 おい


「お嬢様……私には理解できません………」


 安心しろ俺も理解出来ない。


「大丈夫、ちゃんと見たらわかるよ隼人くんの良いところ。見た目やちょっと変な言動には騙されないで、そのギャップが可愛いんだけど」


 一体全体なんのギャップなんだろう?意外にピュアって事か?確かに俺は初めては好きな人とっていう理想はあるけど………俺の見た目を見て可愛いと思うか?殆どおっさんやで、キモいの方が勝つやろ。

 

「それに勘当の件なら心配いらないよ」


「何故ですお嬢様?その男に甲斐性があるとは思えませんが」


 全くもってその通り。俺はわざわざバイトしてお金貯めて今より良い暮らしするよりホームレスになる事を選ぶ男だ。甲斐性のかの字もない


「だって、今の西園寺家の当主は私だから」


 なるほどな、当主になれば勘当以前にする側だしな…………………は?


「「えっ?」」




●あとがき

 早く自衛隊vs速水隼人ヲカキタイ………

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