不可抗力
俺が好きなのはノノ。俺が好きなのはノノ。
ルラは妹。ルラは妹。
俺が好きなのはノノ。俺が好きなのはノノ。
ルラは妹。ルラは妹。
何度も何度も何度も、そう頭の中で繰り返しているうちに、外は明るくなっていた。
つまり、一睡も出来なかった。
え、俺この状態でダンジョン行くの?
「んぅ……兄さん?」
……可愛い。
うん。こんな可愛い子と一緒のベッドに居られたんだ。
たかが一睡出来なかったくらいなんだ? なんの問題もないだろ。
「ルラ、起きたか?」
「えへへ、兄さんがいるぅ……」
ただでさえルラの柔らかいものが押し当てられていて、胸がドキドキしてるって言うのに、そんなに可愛い反応を見せられたらもうドキドキなんて通り越して、俺の胸が持ちそうにないんですけど?
「お、おう。お、おはよう、ルラ」
「……」
さっきの言葉と共に、ルラはまた眠ってしまったのか、返事が返ってくることは無かった。
チラッ、とルラのことを覗き見ると、案の定ルラは目を閉じて眠っていた。
……ノノ〜、頼むから早く起こしに来てくれ。俺にはこの天使を起こすことなんて出来ない。
そう祈っていると、俺の思いが通じたのか、扉がノックされて、ノノの声が聞こえてきた。
「ノヴァ様、起きてますか? 入りますよ?」
俺は何も答えない。
今扉越しのノノに聞こえるように返事なんてしたら、隣で眠っているルラのことを起こしてしまうからな。
「失礼しーーってノヴァ様! 起きてるじゃないですか!」
「……ノノ、俺の隣に天使が寝てる。分かるな?」
いくらノノであっても、そんな大声でルラを起こすのは許せない。……いや、ルラを起こして欲しくて、ノノに来てくれって祈ってたんだけどさ。
「こ、こんなところでシスコンを発揮させないでくださいよ! 朝なんですから、起こさないとダメなんですよ?」
俺の言葉を聞いたノノは器用にも、小声で声を張り上げるように言ってきた。
「分かってるよ。起こしてやってくれ」
「…………大きな胸を押し当てられて眠る気分はどうでしたか?」
最高です。……なんて、言える訳ないよな。
「別に、普通だよ」
「……そうですか」
俺がそう言うと、ノノは疑わしそうな視線を俺に向けながら頷くと、ルラを起こすために近づいてきた。
「ルラ様、起きてください。朝ですよ」
「の、ノノ、待て」
ノノはルラを起こすために、ルラ体をゆっくりとゆらゆらと揺らして、起こそうとしている。
ただ、今の状況でこんなことをされたら、胸が俺に押し付けられたり離れたりして、俺の心臓がもたないんだよ。
「……やっぱり、大きい胸がいいんじゃないですか」
「こ、れは、不可抗力、だろ。……そ、それに、俺が好きなのは──」
「んぅ……ノノ? 兄さん? あ、あれ、なんで、私兄さんと……えへへ」
可愛い。
後、ルラのおかげで助かった。
この気持ちは、まだ言っちゃダメなんだから。……あいつらに弱みを見せたって、俺は対処出来る自信くらいある。
でも、弱みなんてものは見せない方がいいに決まってるんだ。……だから、俺がクソイベントを回避するまでは、我慢、しないと。
「ルラ、改めておはよう」
ルラの様子を見るに、さっき一度起きた時のことは覚えてなさそうだったから、改めて、朝の挨拶をした。
「……おはようございます、兄さん。……ノノも、おはよう」
「は、はい。おはようございます、ルラ様」
ノノは俺が言おうとしていた言葉を察しているのか、嬉しそうな、恥ずかしそうな、二つの感情を混ぜ合わせたような感じで、ルラに返事をしていた。
「……何かあったの? ノノ」
「な、なんでもないですよ!」
「……兄さん?」
「い、いや、俺は知らないぞ?」
ルラに嘘をつくのは心苦しいけど、今はまだ、誰にもこの気持ちは言えないんだ。どこでバレるか分からないしな。……傍から見たら、バレバレかもしれないけど、特定の人物にさえバレていなければ、いいんだよ。
……それに、理由はそれだけじゃないんだ。何となく、そう、本当になんとなくだけど、今のままルラにこの気持ちを言ったら、何か、まずいことになりそうな気がするんだ。
ただの勘。ただの勘ではあるが、俺の、最強の俺の勘だ。
「そうですか」
「ち、朝食の準備は出来ていますよ」
「あ、あぁ、食べるか」
ルラを優しく俺から離して、ベッドから起き上がった俺は、直ぐにリビングに向かった。
すると、そのすぐ後をルラが着いてきていた。
ノノは他にやることがあるのか、別の場所に行ってしまった。
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