俺が全部終わらせるから

 結界を貼ったあと、何事も無かったかのようにリビングで適当に過ごしていると、ルラが戻ってきた。

 

「……兄さん、お風呂、上がったよ」


「あぁ、今はノノが入ってる頃か?」


「うん。そうだよ」


 まぁ、風呂を入るためにノノはリビングを出てったんだから、そりゃそうだよな。

 

「そういえばなんだけど、兄さん」


「ん? どうした?」


「ついさっきなんだけど、兄さん、何かした?」


「え」


 どっちのことだ? 結界か? それとも、カレンを消した時のことか? ……仮にどっちだったとしても、絶対にバレないように使った俺の魔法に気がついたのか?

 もしそうなんだとしたら、ルラには確実に魔法の才能があるぞ。

 ……本来ならあんまりこういうことは想像もしたくないんだけど、原作では多分ルラは死んでたんだよ。

 だから知らないだけで才能があった可能性は全然あるよな。


「兄さん? やっぱり、兄さんが何かしてたの?」


 ルラは別に何かを責めようとしてそう聞いてきている訳ではなく、単純に気になったから聞いている、と言った感じだった。

 ……まぁ、それくらいは答えてもいいか。答えなかったり、否定したりしたら無駄にルラを不安がらせるかもだしな。


「そうだよ。よく気がついたな、ルラ」

 

 そう言いつつ、俺はルラの頭を撫でた。

 ちょうどいいところに頭があったし、ノヴァの顔なら、許されるだろうと思って。


「う、うん。何か、違和感を感じたんだよ。魔力が動いてたような気がしたの」


「そうか、ルラは凄いな。魔法の才能があるのかもしれない。もしルラにその気があるのなら、魔法をもっと本格的に勉強してみないか?」


「……そうしたら、兄さんと同じくらい強くなれる?」


「俺と同じはちょっと難しいかな。でも、俺の次くらいには強くなれると思うよ」


 俺は最強だから俺と同じは無理としても、それくらいなら俺の魔法を感じ取れるルラなら出来ると思った俺は、そう言った。


「う、うん。じゃあ、私、頑張るよ」


「あぁ、もちろん俺も協力するよ」


「ありがとう、兄さん」


 これでまた闇堕ち兼弱体化イベントを回避する理由ができたな。

 まぁ、中にいた裏切り者はもう始末したんだし、油断するつもりは無いけど、簡単に回避出来そうだけどな。


「そういえばだけど、兄さん」


「ん?」


「さっき魔法を使ったんだよね? 何したの?」


 ……メイド長のカレンを消した、だったり、結界を張った、なんて馬鹿正直に言えるわけないよな。

 

「……ルラが気にするような事じゃないよ」


 ルラやノノにはなんの心配をすることなく今日を過ごして欲しいから、俺はそう言った。

 実際、俺が全部終わらせるから、ルラが気にするような事じゃないってのは事実だからな。


「ほんと? 兄さん」


「本当だよ。俺がルラに嘘をつくわけないだろ」


「上がりましたよ、ノヴァ様、ルラ様」


 そんな会話をしていると、そう言ってちょうどいいタイミングでノノが戻ってきてくれた。


「ノノも戻ってきたことだし、まだ寝ないにしろ、そろそろ俺の部屋に行くか」


 流石にルラの部屋に俺が入るのは不味いだろうからな。……一緒に寝ようとしてる時点で今更なのかもしれないけど。


「は、はい、分かりました。私は大丈夫です!」


「……私も大丈夫だよ」


 二人が頷いてくれたのを確認して、俺は二人と一緒にリビングを出て、部屋に向かった。

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