そういえば俺……

 ……いやいやいや、なんで突然主人公達がどこかに行ったと思ったら、その主人公の幼馴染だけ戻ってくるんだよ。

 あなた、常に主人公の傍にいるヒロインじゃありませんでしたか?


「兄さん? なんで、そんなにあの子のこと見てるの?」


 俺は訳が分からなくて、隣にいるルラにバレるくらいに主人公の幼馴染……ネアに視線を向けていてしまったみたいだ。

 心做しか、ルラとは反対側の隣に座っているノノが「やっぱり胸なんですか……」という冷ややかな視線を俺に向けてきているのは気のせいだろう。

 

 今更だけど、ネアの見た目はピンク髪のツインテールに綺麗な黒い瞳だ。そして胸はかなり大きい方だ。

 ……前世では俺が主人公だったし、嫌いとは言わないけど、今はもう主人公じゃないんだ。別に好きでもない。

 だから、そんな目で見ないでくれるかな、ノノ。

 俺が好きなのはお前だからさ。


 ……待った。そういえば俺、ちゃんとノノに好きだって伝えたか? 

 あの何をとち狂ったか俺がノノを一緒に風呂に入ろうと誘ってしまい、普通に風呂に入ったあの日、いつかちゃんと言うって言ったよな? 全部終わったら、気持ちをちゃんと伝えようとも思ったはずだ。

 それなのに、俺、まだちゃんと伝えてなくないか? ……だとしたら、ノノのこの視線に文句なんて言えるわけがねぇ。


「兄さん、私に言えないような理由で、見てたの?」


 内心でそんな焦りを生んでいると、ルラがなかなか何も答えない俺にそう聞いてきた。

 ……なんでかは分からないけど、答えを間違えたら、何か、とんでもないことが起こりそうな雰囲気がある。

 ……いやいや、可愛い妹のルラに対して何を思ってるんだ、俺は。


「ただ単純に疑問に思ってただけだよ。二人で出ていっていたのに、女の子の方だけ戻ってきたからさ」


「そうなの? なら、大丈夫だね」


「ん? うん。そうだな」


 よく分からないけど、我が天使が大丈夫だと言うんだ。大丈夫なんだろう。


「……ノノ、なんだその目は」


 そう思いながらも、俺はまだ疑いの目を向けてきているノノにそう聞いた。

 

「……別に、なんでもありませんよ」


「ノノ、後で少し二人で話そう」


 まぁいい、と思い、俺はそう言った。

 ちゃんと、あの時の約束を果たさないとな。

 少し遅くなってしまったけど、気持ちを伝えないと。


「二人で、ですか? ……私は別に構いませんけど」


 ノノはそう言いながら、何故かルラに視線を向ける。

 いや、何もこの後すぐに二人っきりになろうって言ってるわけじゃないぞ? いくらノノが好きで早く気持ちを伝えたいからって、俺がルラを放置してまでするはずがないだろう。

 帰ってからに決まってる。


「帰ってからの話だからな?」


 そう思った俺は、ノノにそう言った。


「私は部屋にいるから」


 すると、ルラがそう言ってくれた。

 

「は、はい、でしたら、分かりました」


 そして、ノノは頷いてくれた。

 それと同時に、俺は全然聞いていなかったけど、何か学園長が前で色々と話をしていたみたいで、ちょうどそれが終わった。

 もうそれぞれの教室に向かっても大丈夫みたいだ。


「教室、行くか」


「うん」


「はい」


 もう三人とも同じクラスなのは確認済みだし、特にクラスでぼっちになる心配なんてする必要も無いから、俺は何も気負う必要なくそう言って教室に向かったら。

 ……そういえば、主人公たちはどこのクラスになってるんだ? 物語では攻略するヒロインによって違ってたから、気にしてなかったけど、後で確認しとくか。

 ……同じクラスって可能性も無いわけではないけど、俺のクラスの攻略ヒロインは二周目以降じゃないと強さ的に正直無理だし、俺が関わりたくないって理由以外にもやめて欲しい。

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