せっかく離れて座ってたのに

「兄さん? またいきなり止まってどうしたの?」


「え? あー、いや、なんでもないよ」


 そう言いながらも、俺の内心はまた困惑でいっぱいになっていた。

 だって、主人公とその幼馴染が一緒のクラスに当たり前かのように居たからだ。

 ……しかも、更につけ加えて言うのなら、何故か主人公は俺の事をチラチラと見てきているし、その幼馴染……ネアは主人公と離れたところに一人で座っている。

 どう考えてもおかしくないか? 入学式の座っていた場所は主人公の気まぐれってことで辻褄は合うけど、ネアと主人公が離れて座っているのは本当に意味が分からなく無いか?


 と言うか、なんで主人公たちはこのクラスなんだよ。

 ……ダメだ。色々と言いたいことが多すぎて、頭が痛くなってきた。

 ……やっぱりお前はある意味主人公だよ。最強である俺に痛みを与えられる存在なんて、冗談抜きでお前くらいだと思うからさ。

 ……はぁ。ほんと、学園、三人でやめらんないかな。

 主人公がこのクラスで、しかも同じクラスって……嫌すぎるんだけど。

 せっかく弱体化兼闇堕ちイベントを回避して、学園に入学したばっかりだっていうのに、なんでこんなことになるかな。


「ノヴァ様、本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫だって。それより、さっさと適当な席に座るぞ」


 心配をしてくれているノノとルラにそう返して、主要キャラ達から離れたところに俺たちは座った。

 席は自由みたいだからな。

 相変わらず俺を真ん中にして二人が座っているけど、今に関しては特に何も言わないでいいかな。

 無いとは思うけど、このクラスの攻略キャラはまだ教室に来てないみたいだし、隣に座ってくる可能性も考えたら、なるべく関わりたくない俺からしたらちょうどいいことのはずだ。


 ……まぁ、関わりたくないと言っても、見た感じ絶対に今の主人公の強さじゃあの子のイベントを進めることなんて無理だし、このクラスにいる以上、巻き込まれることになるんだろうけどな。


 そう思いながらも、俺は少しだけ巻き込まれないことを期待している。

 ……ネアが主人公から離れて座っているところを見るに、何故か原作がおかしくなってるし、俺たちが巻き込まれない可能性だってあると思うから、そんな僅かな望みを抱いたって問題は無いだろう。

 

「…………」


 そう思って、三人で適当な雑談をしていると、何故か目の前に俺がさっきまで想像していたヒロインが座った。

 いや、なんで? なんで、わざわざ、まだいっぱい席が空いている中、わざわざ俺の目の前に来るんだよ。

 せっかく主要キャラ達から上手いこと離れて座ってたのに、こっちに来るなよ。


 ……いや、別に関わらなかったらいいだけだし、もういいや。

 せっかくの学園なんだし、主人公たちのことなんて気にせず、ルラとノノと楽しもう。


 そう思っていると、この教室の担任? であろう先生が入ってきた。

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