この教室の攻略キャラ
……いや、別に関わらなかったらいいだけだし、もういいや。
せっかくの学園なんだし、主人公たちのことなんて気にせず、ルラとノノと楽しもう。
そう思っていると、この教室の担任? であろう先生が入ってきた。
「あー、このクラスの担任になった、ギオマーだ。……ぶっちゃけると、色々めんどくさいから、適当に近くにいるやつにでも自己紹介をしておけ」
待ってくれ先生! 確かに、ついさっきまでの俺なら、その言葉にかなり喜んだことだろう。
ただ、今は違うんだよ。今はこのクラスの攻略キャラであるヒロインが近くに座ってるんだ。
そんなことを言われてしまっては、せっかく関わらなかったらいいと考えたばっかりなのに、早速ヒロインに関わることになってしまうだろうが。
「……」
教室にいるみんなが先生の物言いに唖然としながらも、何も言う様子が無いと思った俺は、席を立って先生に抗議をしようとしたのだが、その瞬間、前に座っていたヒロインが後ろを向いてきて、綺麗な水色の瞳と目が合ってしまった。
「私、リディアっていう。……よろしく?」
俺は直ぐに目を逸らしたのだが、瞳と同じ水色の髪の毛を揺らしながら、このクラスの攻略キャラ……ヒロインのリディアは首を傾げ、そう言ってきた。
「私はルラ。よろしくね」
俺と目が合ったからと言って、俺に言ってきている、という訳ではなく、俺たちに言ってきているからこそ、どうしようかと考えているうちに、ルラが返事をしてしまった。
……そうだよな。無視は良くないよな。分かってるよ。ルラは偉いよ。間違ってないよ。
「私は、ノノっていいます。こちらのお二人のメイドをしています。よろしくお願いします」
……ノノもそりゃ挨拶くらいするよな。
でも、俺、関わりたくないんだよ。
「……」
「……」
俺の左右にいる二人が挨拶をしたのに、肝心の俺が何も言わないからか、リディアは黙って俺の事を見つめてくる。
それに対して、俺は必死でリディアから目を逸らした。
「……兄さん?」
「……ノヴァ様?」
そうしていると、二人もそんな様子の俺に不審に思い始めたのか、不思議そうに俺の事を呼んできた。
……いくら関わりたくないとはいえ、これ以上無視するのは失礼だし、リディアも可哀想か。
……二人に変な誤解をされても困るし、俺も自己紹介だけ、さっさとしてしまおう。
極端な話、自己紹介さえしたら別に関わらなくたって問題ないだろうしな。
「ノヴァだ。……同じクラスの人間として、よろしく」
ルラが家名を名乗っていなかったし、俺も名前だけを伝えた。
「ん、よろしく」
「……ノヴァ様って、結構人見知りをするタイプなんですか?」
……抑えたつもりだったんだけど、身内には分かる程度に関わりたくないオーラが出てしまってたか?
「そうかもな」
そう思いながらも、俺は曖昧にそう答えておいた。
……まぁ、なんだかんだ言って、主人公とその幼馴染とは関わらなくて済みそうだし、良かったってことにしておこう。
……うん。そう考えると、ちょっと心の余裕がでてきたな。
どうせリディアも物語的に実力が足りてないとはいえ、主人公の方に言ってくれるだろうし、そんなに煙たがる必要も無かったのかもな。
「私も人見知りするタイプ。一緒」
そう考えて、少し気持ちがスッキリしたところで、リディアの謎のフォローが入ってしまった。
うん。なんか、ありがとな。
関わる気は無いけど、やっぱり悪い奴ではないってことは再確認出来たわ。
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