リディアの事が嫌いな訳では無いけど
「よし、そろそろ自己紹介も終わったな。なら、今日はもう帰っていいぞ。どうせ授業は明日からだからな」
先生……俺たちの担任になったギオマー先生は俺たちが全員自己紹介が終わったのを見計らって? そう言ってきた。
帰っていいっていうのなら、有難く帰らせてもらおう。本人には悪いとは思うけど、これ以上リディアの近くにいたくないし。
俺が関わらなくたって、どうせ主人公がどうにかしてくれるだろうしな。
「リディアはどの辺に住んでるの? もし良かったら、一緒に帰らない?」
そう思っていると、ルラがそんなことをリディアに聞いていた。
いや、待って。
兄として、ルラが誰かと仲良くしようとしているのは凄くいいことだと思うぞ? でも、リディアじゃなくてもいいんじゃないのかなぁ、って……。
……そもそもの話、俺たちは馬車だし、一緒に帰るとか難しいだろ? リディアも他人の馬車に乗るのなんて抵抗あるだろうしな?
「私は、街の方」
断ってくれ、と内心で思っていると、リディアのそんな声が聞こえてきた。
……大体みんな街の方に住んでいるとは思うぞ。
と言うか、俺はリディアの住んでるところくらい原作知識で知ってるんだよ。
だから、そんなことはどうでも良くて、もうシンプルに断って欲しい。
出来れば、ルラが傷つかないように用事があるとかそんな感じで。
「だったら、途中まで一緒に帰らない? 一緒にって言っても、馬車でだけど、ちゃんとリディアの家まで送っていくからね」
俺がそんなことを思っている間にも話は進んでいたみたいで、ルラがそう聞いていた。
俺が色々と思っているうちに、リディアの住んでる場所はちゃんと聞き出せたのか。
それは凄いと思うけど、リディア、断ってくれ。お前個人のことは嫌いじゃないんだが、面倒事にルラとノノが巻き込まれるのが嫌なんだよ。
「ん、いいよ。一緒に帰ろ」
俺の願いも虚しく、リディアは普通に頷いてきた。
……人見知りだって言ってたろ。……あれ、マジで俺を気遣うためだけの言葉だったのか? ……いや、ちょっと顔が赤くて、恥ずかしがっている気がするし、勇気を出したのか。
「兄さん、良かったよね?」
……そうなんだとしたら、否定できるはずがない。
「……あぁ、もちろん」
ノノはメイドだし、断ることなんて出来ないだろうから、もうリディアと一緒に帰ることは確定事項になってしまった。
……仮に断れる立場だったとしても、ノノは断らなかっただろうけどさ。ノノだって俺たち以外の友達くらい欲しいだろうし。
「一緒に帰るのなら、さっさと行こう」
「ん」
どうせリディアと一緒に帰ることが決定事項になってしまったのなら、無いとは思うけど、他のメインキャラ達と関わらないようにするために、俺はそう言った。
学校にいる限り、どれだけ関わりたくないと思っていても、関わってしまう可能性はあるからな。
……まさに今のリディアがそうだし。
「ノノももういいな?」
「はい。大丈夫です」
一応、ノノにも確認を取って、俺たちは教室を出た。
そしてそのまま、馬車を止めた場所まで移動した。
当然そこには御者と馬が俺たちを待っていた。
「あれだぞ」
今からでも馬車を見て遠慮してくれたりしないかな。
「ん、分かった」
……まぁ、しないよな。
別にいいか。ちょっと不本意だけど、俺は人見知りってことになってるし、リディアとの会話はルラとノノに任せたら大丈夫か。
……うん。それ、意味ないな。俺が嫌なのはリディアと仲良くなることじゃなくて、リディアと仲良くなることによって生まれるイベントにルラとノノが巻き込まれることだからな。
ルラとノノがリディアと仲良くなってしまったら意味が無い。
……だからって、リディアと仲良くなるのを邪魔するつもりは無いけどさ。……そんなこと、出来るわけないし。
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