心が痛い
俺は最強なんだよ。
そう、最強なんだよ。
なのに、めちゃくちゃ胸が痛い。
……もう手遅れかもしれないけど、俺はあんまりリディアと仲良くなりたくないし、二人……ノノとルラにも悪いけどリディアと仲良くなって欲しくないと思ってる。
でも、だからといって二人が友達を作ろうとしているのを邪魔をすることなんて俺に出来るわけが無いから、俺は学校に行く時と違って、すぐに馬車の中の端っこの方を確保して黙ってるつもりだったんだ。
俺だけがリディアと仲良くならなくたって意味が無いことくらい理解してるんだけど、ちょっとした抵抗ってやつだ。
ちょっとした抵抗と言っても、何も理由がない訳では無い。
だって、よく考えたら、俺たち三人が全員リディアと仲良くなってしまったら当然一緒にいる時間が増えるだろうけど、ルラとノノの二人だけなら、一緒にいる時間は普通に三人で仲良くなった時よりも減ると思うんだよ。
つまり、俺だけでもリディアと仲良くならなかったら、肝心のイベントが起きる時にルラとノノが巻き込まれない可能性が高くなるって話だ。
だから、話を戻すけど、俺は黙っていて空気に徹したかったんだ。
ちょっと不本意だけど、好都合なことに人見知りってことになってるからな。
「ノヴァはどう思う?」
なのに、さっきからリディアが俺に気を使ってか、こんな感じに話を振ってくれるんだよ。
もちろん、リディアだけじゃなく、ルラとノノもだ。
……痛いって。胸が、心が、痛い。
三人の優しさが心に染みてしまう。
俺はどうせ主人公が助けてくれるから、とルラとノノのことしか考えていないっていうのに、こんな俺にも気を使ってくれるリディアが優しすぎる。普通に良い奴すぎる。
「ごめん、ちょっと話を聞いてなかったわ」
「ん、ルラと私にメイド服が似合うかって話」
……嫌な顔ひとつせずに教えてくれるのは本当に良い奴だな、と改めて思うんだけど、なんの話ししてんだよ。
どういう経緯でそんな話になったんだよ。
というか、ルラに関してはどう考えても似合うに決まってるだろ。
なんの意味がある質問なんだよ。
「リディアは分からんけど、ルラは似合うに決まってるだろ。ルラは天使なんだから、何を着ても似合う」
「ッ、あ、ありがとう、兄さん」
「……ノヴァ様、初対面の人の前でシスコンを発揮しないでください。恥ずかしいです」
正直、今の発言は流石にシスコンだったかもな、って少しは思うぞ?
でも、これでリディアが引いてくれるのなら引いてくれるで別にいいんだよな。
もしそうなったら、俺から離れていってくれるだろうし、実際これは俺の本心なんだ。
これで引かれるのなら、友達になるのなんて最初から無理なことだったろうし、仕方ない。
「ん、ルラは可愛い。分からなくは無い。でも、私は?」
全然引かれなかったな。
ほんと、面倒なイベントさえなければ、是非ルラとノノと友達になって欲しい存在だったな。良い奴すぎる。
「リディアは分からんって言っただろ。会ったばっかりなんだしな」
「なら、また今度時間が経ったら聞く」
……もうリディアの中では時間が経っても一緒にいる前提なのかよ。
リディアじゃなかったら……というか、イベントが起きるキャラじゃなければ、素直に喜べたんだけどな。
リディアが美少女だから……とかじゃなく、俺、普通に友達少ないし。
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