もしかして……
ノノに改めて想いを伝えて、恋人になった後、俺は割と勇気を出して、キスをしてもいいか? 的なことを聞いたのだが、今はまだダメだと断られてしまった。
俺のことが嫌いなわけじゃなくて、今はダメなだけなんです、と念を押すように何度も言われたから、本当に嫌われてはいないんだと信じたい。
ノノにも色々あるんだろう。……多分。
実際、本当に嫌われてるわけじゃないと思うし、ちょっとずつでも、まぁ大丈夫だろう。
「兄さん、今、もういい?」
そう思っていると、ルラが俺の部屋の扉をノックしてきながら、そう言ってきた。
あれ? ノノがルラに絶対に言わないといけないことがあるから、と部屋を出ていっていたんだが、すれ違いになったのか?
「あぁ、大丈夫だけど、何か用か? ルラ」
ノノと付き合うことになったって話はした方がいいのか?
いや、変に気を使われて、三人で居られる時間を二人っきりにさせるためにルラだけどこかへ行く、みたいなことになって欲しくないから、言わない方がいいのか?
「取り敢えず、入るね? 兄さん」
「今開けるよ」
そんなことを考えながらも、後でノノと相談してからにしよう、と頭の中で結論づけて、俺は部屋の扉を開けた。
「どうしたんだ?」
ルラが俺の部屋に来るのは別に珍しいことでは無いし、特に驚くことも無く、俺はそう聞いた。
なんでかは分からないけど、あの時と同じように、何度かノノ含めて、ルラと三人で一緒に寝ることはあったしな。
……その度にルラは妹だと自分に言い聞かせるのに必死になってたのは、ノノには秘密だ。
まぁ、ルラと二人っきりで寝ることになってしまったあの時よりはノノが隣にいてくれた分マシだったんだけどな。
「……兄さんは、ノノと付き合うことになったんだよね?」
「えっ、あ、あぁ、そうだよ」
もうノノに共有されていたことに驚いたけど、もう既に言っているのなら言っているでいいか、と思って、俺は頷いた。
というか、入れ違いになったわけじゃなく、ノノが絶対に話さなくちゃならないことってこのことだったのか?
「……私は?」
「え?」
「私も一緒じゃ、ダメ?」
ルラは俺に抱きついてきて、上目遣いになりながら、そう聞いてきた。
可愛い、天使だ。……じゃなくて、今、ルラはなんて言った?
私も一緒じゃダメ? ……いやいやいや、ダメに決まってるだろ。妹だぞ? 何を言ってるんだ?
「ルラは妹だろ?」
「……一年くらい前、ノノに血は繋がってないって伝えられたはずだよ」
よく覚えてるよ。
その時から、俺はルラのことをちょっとだけただの妹じゃなく、女性としても見てしまっていたからな。
……まぁ、頑張って妹だと何度も言い聞かせてるし、その辺は大丈夫だけどさ。
「少しだけかもだけど、私のことも、意識、してくれてるよね?」
「……そんなわけないだろ?」
めちゃくちゃバレていることに内心で動揺しながらも、表情に出すことはなく、俺はそう言った。
「絶対嘘だよ。……私は、兄さんのことが好き。……兄妹としてとかじゃなくて、一人の男性として好き。……だから、あの時、ノノが兄さんと一緒にお風呂に入ったことを許す代わりに、ノノに兄さんは私と血が繋がっていない妹だって嘘をつかせたの」
「……嘘? つまり、俺たちは本当は血が繋がっているってことか?」
「……うん。幻滅した? そんな嘘をつかせるような妹……女で」
びっくりしたかと聞かれれば、びっくりした。
ただ、幻滅なんてするはずがない。
だって、ルラは天使なんだから、それだけで充分だ。
「幻滅なんて、するわけないだろ。……でも、ルラの気持ちには答えられない」
いくら大切で、天使な妹でも、俺にはノノがいるんだ。
だから、俺は胸が引き裂かれそうな思いをしながらも、そう言った。
その直後、そういえばノノに告白をした時、なにか様子がおかしかったことを思い出した。
恋愛的に好きな人がノノ以外に身近に居ないか? とか聞いてきてたよな。……もしかして、ルラのことを言ってたのか?
「……ちょっと、ノノも交えて、話さないか?」
「……うん。分かった」
俺の考えが全部勘違いで、もしノノが嫌だと言ったら、改めてルラとは付き合うことは出来ない、と言うつもりだし、こんなことはしない方がいいかとも思ったけど、今のルラを見てると、こうしないといけないような気がして、抱きついてきているルラの頭を撫でながら、俺はそう言った。
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