衝撃の真実?
「ノヴァ様? どういうこと、ですか?」
「どういうって……そのままの意味だよ。ルラに対する言い訳を一緒に考えて欲しいんだ」
ノノは一体何を言ってるんだ? 早くしないと、ルラが風呂から上がって、俺の部屋に来てしまうだろ。
「……いです」
「なんて?」
「知らないです! もうノヴァ様なんて知らないです!」
は? なんでノノは怒って……いや、拗ねてるんだよ。
早くしないと、ルラが風呂から上がって来るんだって。早く少しでもいい言い訳を考えないと、不味いだろ。
「の、ノノ? 何を拗ねてるんだ? 早く言い訳を考えないと、ルラが来ちゃうから、な?」
「拗ねてないですし、知らないです! ルラ様が来たら、ノヴァ様に誘われたって正直に言ってやります!」
いやいやいやいや、何そんな嘘を……いや、嘘じゃないけど! 嘘じゃないけど、あれは事故なんだよ!
「の、ノノ? お、落ち着くんだ。なんでそんなに拗ねてるのかは知らないが、そんなことをしたら、ノノもルラに怒られるかもしれないんだぞ?」
「の、ノヴァ様が悪いんですよ! 私はもう知らないです!」
俺が悪いって……確かに、頭がおかしくなって、事故とはいえ俺がノノのことを風呂に誘いはしたぞ? でも、ノノだって了承したんだから、今更そこまで怒らなくてもいいじゃないか。
「……ノヴァ様が、お風呂で言ったんじゃないですか。……ちゃんと言うって。……言葉が足りなすぎて、今、言われるのかと思うじゃないですか」
ノノが小声で何かを呟くように言っていたけど、俺の耳にはそんな言葉は入ってきていなかった。
何故なら、その瞬間、俺の部屋の扉がノックも無しに開いて、お風呂上がりだと思われるルラがいきなり入ってきたからだ。
「……兄さん? なんで、ノノとベッドで一緒にいるの? しかも、ノノは顔が赤いみたいだし、ナニ、しようとしてたの?」
「い、いや、別に何かをしようとしてた訳じゃないぞ? る、ルラが来るまで、ちょっと話をしてたんだよ」
別に嘘をついてる訳じゃない。
俺は一緒に言い訳を考えるためにノノに来てもらったけど、ノノは全然言い訳を考えてくれなかったし、なんなら話してる途中から何故か拗ねてしまったし。
「ノノ、そうなの?」
よし、ノノ、首を縦に振るだけでいいぞ。
首を縦に振るだけ、たったそれだけの事でいいのに、無慈悲なことに、ノノは首を横に振って言う。
「の、ノヴァ様に、言い訳を一緒に考えて欲しいって言われました。……私を、期待させておいて」
最後の部分も聞き取ろうと思えば聞き取れたが、俺はノノに全部バラされたことが衝撃すぎて、最後の部分は聞き取れていなかった。
いや、確かにノノは正直に言ってやります! みたいなことを言ってたぞ? でも、まさかほんとに言うとは思ってなかったんだよ。
「……ノノ、兄さんとお風呂に入ったのは、なんで?」
「の、ノノ? ……あ、後で甘味でも買ってきてやるぞ?」
「ノヴァ様に、一緒にお風呂に入らないかと誘われました」
俺の食べ物で釣る作戦を無視しながら、ノノはそう言っていた。
いや、確かにそうなんだけどさ!? 違うんだよ。何度も言うけど、あの時は頭がこんがらがってて、咄嗟に出た言葉がそれだったんだよ。
「……兄さん?」
「ち、違うぞ? 別に無理やりノノと一緒に入った訳じゃないからな? ノノも了承してくれてたんだからな?」
もはや言い訳なんて無駄だと悟った俺は、せめて少しでもルラの俺に対する印象を下げないように、そう言った。
もうかなり手遅れかもしれないけど、言わないよりはマシだと思って。
「ノノ、ほんと?」
「は、はい。わ、私も、嫌な訳じゃ無かったので……」
「…………ノノ、少し、来て」
「え? あ、は、はい」
ルラはノノを連れて、部屋の隅まで移動して行った。……何か暴力的なことをするつもり、なんてことは微塵も考えてない。
うちの可愛い妹がそんなことをするはずないからな。……雰囲気は最強の俺でさえ少しビビるくらいには怖かったけど。
「兄さんは少し耳を塞いでいてください」
「あ、はい」
可愛い妹の言うことは基本的には絶対。これ、常識。
俺が言われた通りに耳を塞ぐと、何やらルラがノノの耳元で何かを喋っているようだった。
正直、聞こうと思えば聞けないこともないだろうけど、わざわざ耳を塞げって言うってことは、聞かれたくないことなんだろうし、めちゃくちゃ気になるけど、聞くことはしなかった。
「兄さん、もういいですよ」
そうやって耳を塞いでいると、内緒話も終わったみたいで、ルラがそう言ってくれた。
「兄さん、ノノとお風呂に入った件はもう許します。その代わり、今日は私と一緒に寝てください」
「一緒に、寝る? ……いや、それは流石に、不味くないか? もちろん、嫌な訳じゃないぞ? むしろ可愛い妹と寝れるなんて、嬉しいと思うけど、俺たちはもう14歳だろ?」
許してもらえるのはありがたい。
でも、一緒に寝るっていうのは、いくら兄妹とはいえ、不味いのではないか?
「か、可愛っ……も、もう、それは置いといて兄さん、私たちは兄妹なんだよ? だから、大丈夫だよ。全然普通のことだから」
「そ、う、なのか?」
最初以外はあまりにも表情を変えることなく、ルラがそう言ってくるから、ほんとに普通のこと、なのか?
「うん。だから、いいよね? 兄さん」
「……わ、分かった」
可愛い妹の頼みなんだし、別にいいか。
兄妹なんだし、間違いが起こることもありえないからな。
「やったぁ。それじゃあ兄さん、私は飲み物を飲んでくるねっ。すぐ戻ってくるから」
ルラは嬉しそうにそう言って、部屋を出ていった。
そして、部屋には俺とノノだけが残された。
「……ノヴァ様、ヨカッタンデスカ?」
「いや、なんだよその喋り方」
「…………ノヴァ様とルラ様は血が繋がってない兄妹、なんですよ? ワカッテマスヨネ?」
……はい?
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