入学式
学園に対しての憂鬱な思いを内心で積もらせていると、あっという間に馬車は学園に着いてしまった。
ルラとノノから離れられると喜ぶべきか、もう学園に着いてしまったんだと悲しむべきか。……流石に後者かな。
なんだかんだ言って、緊張はするけど、二人にくっつかれるのは嬉しかったし。
「二人とも、降りるぞ」
そんなことを内心で思いながらも、学園に着いてしまった以上、馬車を降りない訳にはいかないから、俺はそう言って馬車を降りながら二人に手を出した。
流石にそういう知識くらいあるからな。
「兄さん、ありがとう」
「……私も、いいんですか?」
「ノノは今更俺に手を引っ込めて欲しいのか? そっちの方が、恥をかくことになるんだがな」
「い、いえ、そんなわけないです! ……失礼、します」
ルラは普通に嬉しそうに、ノノはなんだかんだ言っても、ルラ同様嬉しそうに俺の手を掴んでくれたから、俺なりにではあるけど、頑張ってエスコートをした。
そうして、二人が馬車から降りたのを確認した俺は、改めて学園を見た。
……来たくは無かったけど、なんだかんだ言って感傷深いものがあるな。
「兄さん? 行かないの?」
「いや、行くよ」
不思議そうにそう聞いてくるルラに返事をして、俺たちは三人で入学式がある場所に向かっていると、俺たちと同じく学園に入学するであろう生徒たちから物凄く視線を感じた。
……これは、どっちなんだ? ルラやノノが可愛いから視線を向けられているのか、俺が……ノヴァが最強だから、思わずといった感じに怯えてしまい、視線を向けられているのか。
……原作知識には頼れない。
そもそもの話、俺が学園に入学している時点で、もうおかしいんだからな。
闇堕ちしたノヴァがわざわざ学園になんて入学するわけなんてないし、それは当然だ。
まぁ、怯えるような視線っていうのは、家族たちのおかげでどんな感じなのかは理解しているし、怯えられてる訳では無いってことは分かるんだけど……だったら、この視線はなんなんだ?
……あ、待って。分かった。
これ、そういう事か。
みんな、レフィーゼ・ノヴァという人物が最強だということは知っているけど、俺の顔は知らないんだ。
だから、この視線を向けられている理由は単純に俺が最初に考えた通り、ルラやノノが可愛いからって理由と、俺が……ノヴァがイケメンだからだ。
……前者はともかく、後者は違ったらかなり恥ずかしいんだけど、多分、合ってると思う。
記憶通りなら、俺、社交界とかにも顔を出したことなんて無いし、みんな俺の名前は知ってても顔は知らないんだ。
だから、怯えられていないんだ。
「ノヴァ様、大丈夫ですか?」
そんなことを考えながらも、足を止めずに歩いていると、ルラとは反対側の隣を歩いてくれているノノがそう聞いてきた。
心做しか、ルラも心配そうに俺に視線を向けてきている気がする。
「なんの事かは分からんが、大丈夫だよ」
嘘じゃない。
少しだけ気持ちが下がっていたことは間違いないけど、俺はルラとノノにさえ怯えられたりしなければ、どうでもいいからな。
「なら、いいですけど、何かがあるのなら、ちゃんと言ってくださいね?」
「分かってるよ」
「……に、兄さん、私も、話くらいなら聞けるからね」
「あぁ、ルラもありがとな」
二人の心遣いに嬉しい気持ちになりながらも、俺はそう言って、入学式がある場所までやってきた。
「ルラ、ノノ、席はここで問題ないか?」
「私はどこでもいいよ」
「私も大丈夫です」
別に抵抗されるとは思ってなかったけど、素直に頷いてくれたことに安堵しつつ、俺はそこに座った。
相変わらずルラとノノの真ん中に俺が座ることになったけど、置いてある椅子は隣の椅子とちょうどいい感じの間が開いているから、馬車の時みたいに密着することは無い。
……俺がこの席に座った理由は、この席の場所が主人公たちが座る場所とは真逆の場所にあるはずだからだ。
そう、そのはずなんだ。
なのに、なんで俺の目の前には主人公とその幼馴染が居るんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます