一年後
俺が弱体化イベントを回避したあの日から約一年が経った。
「ノヴァ様、準備は出来ましたか?」
「出来てるよ」
今日は学園の入学式だ。
……正直、俺が今更学園で学べることなんて無いだろうし、行きたくなんてないんだけど、行かなくちゃならないらしいから、かなり仕方なくではあるけど、行くことを決めた。
……俺が行きたくない理由は、学べる事が無いこと以外にも、単純に主人公がそこにはいるからだ。
主人公が居るところとか、馬鹿みたいに問題が起きるに決まってる。……俺だけが巻き込まれるのならまだしも、ルラとノノが巻き込まれる可能性があるのが、本当に嫌だ。
「ルラの方は……」
「ルラ様はもうとっくの前に準備を終えていますよ」
「あ、はい」
まぁ、そうだよな。ルラは俺よりずっとしっかりしてるんだし、当たり前か。
「兄さん、準備できたの?」
そう思っていると、制服姿のルラが声をかけてきた。
……もう弱体化イベントは回避したんだし、学園なんて行かずに家でみんなでゆっくり過ごしていたかったけど、こんなルラの姿が見れるのなら、悪くはないかもな。
欲を言えば、ノノの制服姿も見たかったけど、残念ながらノノはいつも通りメイド服だ。
ノノも同じ学園に生徒として入学するんだから、制服、着たらいいのにな。
「あぁ、出来たよ。それと、制服、似合ってるぞ」
「あ、ありがとう、兄さん。……兄さんも、似合ってると思うよ」
俺の言葉を聞いたルラは、顔を赤らめて、恥ずかしそうにそう返してくれた。
「二人とも、早く行かないと、遅刻しちゃいますよ」
「ん、あぁ、そうだな。さっさと行くか」
どうせ行かなくちゃならないことに変わりはないんだし、俺は頷いて、三人で外に出た。
俺はともかくとして、二人からしたら歩いていくのは少し遠いから、馬車は当然用意してある。
親に用意してもらったものだ。
俺が少し脅し……じゃなく、お願いしたら、快く用意してくれた。
もちろん、御者も含めて、だ。
「……二人はあっちに座れよ」
そうして、馬車の中に入ったのだが、何故かルラとノノが二人とも俺の隣に座ってきたから、俺はそう言った。
別に嬉しくないと言ったら嘘になるんだけど、前が空いてるし、色々意識してしまって緊張するから、普通に前に座って欲しい。
「べ、別にいいじゃん。もう座ったんだから、わざわざ移動するのなんて、めんどくさいよ」
「……なら、仕方ないな。ノノ、移動してくれ」
基本的に普段はわがままなんて言わないルラがそう言うんだ。しょうがないに決まってる。
「ノノ、あっちに移動してくれ」
「……私だって、もう座ったんです。面倒なので、嫌です」
「立ち上がって少し移動するだけだろ。早く向こうに移動しろ」
「な、なんで私の時はそんなことを言うんですか!? ルラ様の時は何も言わなかったのに! このシスコン! ノヴァ様なんてもう知りません!」
……とか言いながら、俺の隣から移動する気が無いのはなんなんだよ。
……まぁ、一緒に眠ったりするよりはマシか。
別に二人とも好きなんだし、嫌な訳じゃないんだからな。
それより、俺たち、一緒のクラスになれるかなぁ。……最高は主人公と違うクラスで、俺たち三人が同じクラスになることなんだけど、俺がいる以上、原作通り主人公とは同じクラスになりそうなんだよなぁ。
……まぁ、ノヴァが弱体化や闇堕ちをするっていうイベントは回避してるんだし、原作は壊れてるっちゃ壊れてるから、主人公と違うクラスになるって可能性もあるにはあるか。
「兄さん、楽しみだね」
「……そうだな」
笑顔でそう言ってくるルラに返事をし、俺は馬車が学園に着くのを待った。
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