もう終わったんだし
部屋に戻ると、ルラは眠っていて、ノノは眠たそうに首をこっくりこっくりさせながらも、俺を待っていてくれていたみたいで。
「……ノヴァさまぁ、長いですよぉ」
……別に本当にトイレに行っていた訳じゃないし、全然いいんだけど、失礼とは思わないのか? ……いや、いくらノノでも、普通の状態だったらそんなこと言ってこないか。
今は眠気が凄いからこその言葉なんだろう。
「悪いな」
「……いいですけど、早く入ってきてください」
ご丁寧にノノはベッドの真ん中に俺に寝転がるように言ってきた。
……さっきまでは弱体化イベントがこの後にあるってことで、ノノとルラと寝るという緊張が和らげられてたんだけど、今はもうあのクソみたいなイベントは終わったし、普通に無理なんだけど。
俺の心臓が持たないぞ。いくら最強でも、心臓は最強では無いぞ? ……多分。
「……ノノが詰めるのじゃダメか?」
「だ、ダメですよ! 朝になった時、私がルラ様に怒られちゃいますよ!」
俺の言葉を聞いたノノは、器用にもルラを起こさないように小さく、そんな叫びを上げていた。
……無駄に器用なことをするなよ。
それに、ルラはそんなことで怒ったりなんかしないだろ。
「馬鹿なこと言ってないで、詰めてくれよ」
「絶対に嫌です」
「…………はぁ、分かったよ」
何故かノノは絶対にルラの方に詰めてくれないと気がついた俺は、そう言って頷き、ベッドに寝転んだ。
ノノにルラの方に詰めて欲しい理由はルラが嫌いだから、なんて理由では無く、好きだからこそだ。これ以上奥に詰めてくれと言って、ノノに変な勘違いをされても嫌だしな。
「……最初からそうしてくださいよ」
すると、ノノは俺の隣に寝転んできながら、小さくそう言ってきた。
……本当に俺が悪いのか? 妹とはいえ、こんなに可愛くて、しかも血が繋がってないんだぞ? 緊張くらいするだろ。
もちろんノノだって可愛いし、緊張するんだけど、ノノだけなら、まだ大丈夫だし。
「文句言ってないで、さっさと寝るぞ」
まぁ、色々と考えたけど、ベッドに入ったら案外眠れそうだと思い、俺はノノに向かってそう言ってから、目を閉じた。
やっぱり、精神的にだけど、疲れてたんだな。
「……おやすみなさい。ノヴァ様」
「……おやすみ、ノノ」
──────────────
目が覚めると、そこにはもうノノは居なかった。
反対側を見ると、ルラはまだ眠っていた。
……まぁ、ノノはメイドとしての仕事があるからな。
……と言うか、カレンが居ない言い訳を後でしとかないとな。
正直にあいつは俺の命を狙っていた裏切り者だ、なんてあんまり言いたくないしな。
「……兄さん、まだぁ」
そう思いながらも、俺もルラを起こさないように布団から出ようとしたところで、ルラのそんな甘えたような声が聞こえると同時に、俺はルラに抱きつかれた。
待て、落ち着け。……まずは、まだって何がだ? まだ寝てたいってことか? いや、目が覚めてる様子は無いし、ただの寝言か?
……まぁ、いいか。
俺も今日から暇だし、もう一度くらい眠っておくか。
弱体化イベントは回避したんだし、どうせルラに抱きつかれていて起きることは出来ないんだと思い、俺は目を閉じた。
たまには二度寝も悪くは無いだろう。
隣に天使がいるのなら尚更な。
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