今は俺が──
先に風呂場に行って、さっさと体を洗っておこう。湯は俺が直ぐに沸かせられるし、さっさと洗って先に入っておこう。
そうすれば、少しはお互いの羞恥心を紛らわすことが出来るはずだ。……俺が湯に浸かってれば、ノノの方を見ないようにすることも出来るしな。
そう考えて、ノノが来る前に着替えを持って風呂場に来たんだが、タオルが無いことを思い出した。
……そういえばさっき、タオルを準備しておくって言ってたな。……腰に巻く用のタオルも無いのかよ。
これじゃあ、ノノがタオルを持ってきてくれるのを待つしかないじゃないかよ。……いくら最強の俺でも、羞恥心が無いわけじゃないんだ。
流石に、タオルも巻かずに完全な全裸で同い年……いや、同い年じゃなくても、可愛い女の子と一緒のお風呂なんて入れるわけないだろ。
「あ、の、ノヴァ様……ま、待っててくれてたんですか」
「ま、まぁ、そうだな」
そう思っていると、ノノが自分の着替えとタオルを持って、風呂場にやってきた。来てしまった。
「の、ノヴァ様、そ、そんなに、見ないでください……し、下着も、ありますから」
「わ、悪い」
俺はただ、ノノのメイド服じゃない服が気になって見てただけなんだが、そう思われても仕方ないだろうから、素直に謝った。
「た、タオル、貰っていいか?」
「は、はい。これ、どうぞ」
そう言って、ノノはでかいバスタオルと、小さい、腰に巻くようのタオルを俺に渡してくれた。
タオルを渡してくれたノノにお礼を言って、俺はノノの視線から外れるように、着替えようとしたんだけど、妙にノノがこっちを見てくる。
「……ノノ、恥ずかしいから、お互い脱ぐ時は見ないようにしような?」
「あ、は、はい。ご、ごめんなさい」
脱ぐ時はどう頑張っても、見られてしまうからな。
まぁ、好き嫌いは置いといて、異性のそういうのが気になるっていうのは、分からなくもないから、別にノノのことを責めたりはしないけど。
そうして、お互いに背を向けて、俺が緊張していると、後ろから布の擦れるような音、ノノの服を脱ぐ音が聞こえてきた。
思わず息を飲んでしまう。
ダメだ。後ろが気になって仕方ない。……俺も、服を脱ごう。このまま何もせずにいたら、後ろを振り向いてしまいそうだ。
「ッ」
そして、俺が服を脱ぎ出すと、今度はノノの息を飲む音が聞こえてきた。
俺はそんな音を聞こえなかったことにして、さっさと服を脱いで、腰にタオルを巻いた。
「の、ノノ、先、入ってるからな」
「は、はい」
ノノの方を見ないようにそう言って、俺は風呂場の中に入った。
風呂場に入った俺は、真っ先に風呂の水を適当な魔法で溜めて、暖かいお湯にした。
よし、風呂はこれでいいとして、まずはさっさと頭を洗おう。
「の、ノヴァ様、入りますね」
ノノが来る前に頭くらいは洗っておきたいと思ってたんだが、そう言って、ノノが入ってきてしまった。
まぁ、当たり前っちゃ当たり前か。ノノと俺はほぼ一緒に服を脱いでたんだから、そんなに遅いわけないか。
「の、ノヴァ様、あんまり、見ないでください」
「ッ、わ、悪い」
見ないように意識してたはずなのに、俺の視線はバスタオルを巻いたノノに釘付けにされていた。
……仕方ないだろ。ノノには言っちゃ悪いが、胸は小さいとはいえ美少女だし、恥ずかしそうにバスタオルを巻いてる姿はいくら見ないと意識してても、見てしまう魅力があった。
「あ、頭、洗うか」
「は、はい。私も、自分の頭を洗いますね」
俺はノノから視線を逸らしながらそう言って、お互い緊張感を抱えながら自分たちの頭を洗った。
「の、ノヴァ様、背中、洗いますよ」
そして、お互い頭を洗い終えて、少し経った頃、ノノは突然そう言ってきた。
……そういえば、背中を洗うくらいならいいって話、だったな。……ん? 頭がこんがらがってたとはいえ、俺が一緒に入ろうって言ったんだから、てっきりノノも服を脱ぐのを普通だと思ってたけど、背中洗うだけだったら、ノノは服を脱がなくても良かったんじゃないのか?
そう思ってしまい、思わず俺は見ないようにしていたノノの方を見てしまった。
すると、俺の視線に気がついたノノは恥ずかしそうに、体に巻いているバスタオルをギュッ、としていた。
ダメだ。さっきまでノノのことを犬みたいに思ってたのに、今は俺が狼になりそうだ。
「せ、背中、頼む」
自分がやばいことを理解した俺は、直ぐにノノに背中を向けて、椅子に座りながらそう言った。
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